2020年01月27日

「紫風庵」での触読に関する報告(その2)

 一昨日、1月25日(土)の「紫風庵で三十六歌仙と源氏物語の変体仮名を読む(第8回)」で、全盲のHさんがどのような様子だったのかを、直接横でサポートをした吉村君から報告を受けました。前回の報告、「目が見えなくても変体仮名は触読できる」(2019年12月10日)に続いて、2回目の報告を整理しました。

■Hさんへの触読支援に関する報告■



「第8回 源氏物語と三十六歌仙を変体仮名で読む会」(1920.01.25_)

 今回は、前回(昨年末12月10日)よりも格段に文字を読むことができるようになっておられました。
 まず三十六歌仙では、藤原清正の「藤」を触った時に「これは藤原ですか?」と尋ねられました。「なぜわかったのですか?」と訊いてみると、「草冠の所でわかった」との事でした。
 また源順の「源」を触った時には、「源ですよ」と伝えると右の部分(旁)はわからなかったものの、「(三水の部分が)繋がっているんですね」とおっしゃいました。
 脈絡なしに漢字が出てきた時には、「藤原」や「源」であるとわかるのは難しいかもしれません。しかし、漢字の場合は、部首が理解に繋がることは多いかもしれません。
 他の漢字について、「月」については「言われてみればわかる」との事でした。また「風」は右側の跳ねる部分が特徴的だったようで、後にご自分で確認した際に「ああこれが風ですね」とおっしゃっていました。
 その他、漢字の「川」の形に近い「つ」を、ご自身で読むことができていました。
 「の」は、漢字に近いものも平仮名に近いものも、ご自分で読む事ができていました。
 また、藤原興風の書風が他のものと明らかに異なる、という説明がありました。これについては、触読でも文字の太さから理解されていたようです。また源順の左下の模様がそのまま印刷されていたので、普段は字を読むために消している地の模様が、今回はこのような形で線が浮き出ている、ということもお伝えしました。

 『源氏物語』の写本の「須磨」では、最初の「み」をご自分で読む事ができていました。
 変体仮名は、「可」もご自分で読むことができています。「可」は前回は読めていなかったかと思います。ただ、「る」を踊り字「ゝ」と、似た形であることもあって混同してしまうことがありました。このあたりは、文脈も含めた慣れが必要かもしれません。
 全休的には、やはり変体仮名が難しいようでした。「堂」のような画数が多いものは立体コピーの限界もあって、文字が潰れてしまいやすいのです。「尓」のような小さいものも、文字が潰れてしまうために、認識しづらい原因となっているかと思われます。
 今回頻出した「多」は、画数も少なく、字も小さくないため、変体仮名の中では読みやすいのではないかと思います。逆に、平仮名ではご自分でわかるものと、答えを伝えれば理解できるものが半々くらいだったように思います。答えを伝えたもとしては、「き」のように一文字が大きいものや、「て」と「く」などのように、似ているものが多かったように思います。
 和歌が一字下がって書かれている、という説明がありました。これは、実際に触ることで理解できていました。16丁ウラの左上部分にある三角形の装飾(砂子でしょうか?)が立体コピーでも出ていたので、そこが装飾されている部分だということをお伝えしました。(科研運用補助員・吉村仁志)


 前回からの格段の進展がうかがえる報告です。変体仮名が読め出したというご自身の感触が、着実にこちらにも伝わってきます。
 今回、漢字に反応されたことは驚きでした。2回目でこうした感触を得られたことを好機として、さらに前進することをご本人に伝えました。そして、快諾をいただきました。
 今は、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」の写本に書かれている漢字の文字列を活用して、『漢字触読字典』の用意をし出しています。3年前に、『変体仮名触読字典』と『触読例文集』を手作業で作りました。その第3弾が、これから着手する『漢字触読字典』になりそうです。今週中に、その報告ができると思います。
 また、アルファベットにも挑戦していただこうかと思います。
 こうした挑戦については、インドで試みました。「デリーの盲学校で立体コピーに挑戦してもらう」(2016年02月18日)
 あれから4年。さらにいい環境と関係ができているので、この試みがどのように進展していくのか、今から楽しみです。
 このチャレンジは、図書館の「触読ライブラリ」の実現にもつながっていきます。さらなる高みを目標に置き、試行錯誤を続けていきます。

 「読みたい」というHさんの気持ちを汲み取り、より快適な学習環境や触読用の教材を作り、変体仮名を通して、文字を読むことの楽しさを一緒に追体験したいと思います。そして、文字を読むことの意義も、こうした実習を通して共に語り合いたいと思います。
 
 
 
posted by genjiito at 21:33| Comment(0) | ■視覚障害