2020年01月25日

紫風庵で三十六歌仙と源氏物語の変体仮名を読む(第8回)

 大徳寺に近い「紫風庵」で、「源氏物語と三十六歌仙を変体仮名で読む会」の第8回となる学習会を開催しました。主催は、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉です。
 今日の参加者は、日比谷の講座に長くいらっしゃっている方、京都新聞の記事を見て体験としてお越しになったお2人を加えて、いつもより多い14名でした。
 今回も、まずは、襖に貼られた三十六歌仙の絵と和歌を印刷したプリント資料を使い、実見する前に予習です。今日は、南側左第2領の襖に書かれた「藤原清正」「源順」「藤原興風」の三名です

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 上から順に、「藤原清正」からプリントで確認します。

 ■藤原清正 天津風ふけゐの浦にゐるたづの などか雲居にかへらざるべき(新古今和歌集一七二三)

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  左     藤原清正
【天津風】布気ゐの
  うらにゐる堂つの
閑へら  なと可
  佐る  雲井
   遍き   に


 今回の襖絵の写真は鮮明ではなかったせいもあり、文字が読み取りにくい印刷になってしまいました。いつか、あらためて撮影し直します。
 この清正の歌の最初、「天津風」の「天」は、実際の文字ははっきりと読めました。写真がよくなかったのです。
 続く「布気ゐ」の「布(fu)」は、写真を見つめて判読しました。実際に今日みなさんと確認したところ、この文字は表面が縦に剥落していて、欠字というべき状態です。しかし、「布」と読むことに問題はありません。
 歌仙絵については、架蔵の歌仙絵の粉本とは、その図様が大きく異なります。

 続いて、「源順」です。

 ■源順 水のおもに照る月なみをかぞふれば 今宵ぞ秋のも中なりけり(拾遺集 一七一)

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 右   源順
みつの【面】尓【照】る
 【月】那三越可所ふれ
           八
もな    こよひ
  可      そ
 那里     あ支濃
   介り


 最初の文字が、写真では読みにくいものとなっています。実際には、文字に掛かる金泥が剥落しており、読みにくいながらも「み」とはっきりと読めます。
 ここでは、「所(so)」と「支(ki)」の字形とかなの読みに注意してもらいました。
 歌仙絵の図様は、架蔵のものとよく似ています。

 最後に、藤原興風。

 ■藤原興風 契りけん心ぞつらき七夕の 年に一たびあふはあふかは(古今集 一七八)

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     藤原興風
【契】里介ん こゝろ
  所つらき 七夕の
 東しに【一】堂ひ
  あふ八阿ふ【川】


 これは、他の筆写とは手が違うことが明らかです。なかなか力強い筆致で、見る人の心を摑む文字です。
 「【契】里介ん」の「介(ke)」は、字母はこれだと考えるしかありません。ここでも「所(so)」と「東(to)」、そして漢字の「川」を訓で「かは」と読ませていることに注意してもらいました。
 歌仙絵の図様は、架蔵のものとよく似ています。

 目の見えない方には、次の立体コピーを触読していただく資料としてお渡ししています。

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 これは、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語 須磨』に関しても、毎回作成して触読の資料としています。

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 以上の確認を座学で予習してから、襖絵の部屋へと移動しました。文字のポイントを確認しながら、時間をかけて見てもらいました。

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 続いて、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」巻を読む前に、江戸時代の版本を見てもらいました。
 これまでに、明治時代に刊行された本に書かれている仮名文字を見てきました。前回は『たけくらべ』、その前は『学問のすゝめ』、その前が『春琴抄』でした。そして今日は、嘉永3-5年[1850-1852]に刊行された、江戸時代後期の「合巻」である『田舎織糸線狭衣』(いなかおりまがいのさごろも)です。

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 これを回覧しながら、江戸時代の人たちが実際に読んでいた本を触ってもらい、文字や絵を見てもらいました。実際に手に取って触る、という体験は大事なことです。みなさん、興味深く手に取って見ておられました。少し中を読むと、まさに江戸時代の読者になることができるのです。この追体験は、本や読書の理解を深めます。

 ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」巻を読む時間が少なくなりました。こちらの方を大いに楽しみにしておられる、目が見えない方には本当に申し訳ないことです。お渡しした立体コピーを使って、16丁表の1行目から、16丁裏の3行目の和歌「【月】可けの〜」まで進みました。
 糸罫や和歌を書く道具の話で終わったので、次回は実際に道具を持参してきて見てもらうことから始めます。

 今日、初めて参加なさったお2人から、「おもしろかった」との感想をいただき、少し安堵しました。
 次回の第9回は、2月29日(土)の午後2時から、「紫風庵」で開催します。
 
 
 
posted by genjiito at 21:57| Comment(0) | ■講座学習