2020年01月11日

藤田宜永通読(35)『ボディ・ピアスの少女』

『長編ハード・ボイルド 探偵・竹花 ボディ・ピアスの少女』(藤田宜永、光文社文庫、1996年4月)を読みました。

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 ある夜、竹花は家出少女を助けることから始まります。テンポのいい始まりです。
 話は、かつて私が住んでいた江東区の門前仲町辺りが主な舞台となっています。東京に住んでいた頃はこの町に9年間いました。物語に自分が知っている場所が出てくると、何となくその舞台の中にのめり込みます。話が具体的な場所を背景にして、イメージできるからでしょう。
 文部大臣や代議士が犯罪の匂いの中で出てきます。作者はこれをどう料理するのか、興味を持って読み進みました。しかし、これはネタの1つに過ぎず、何も関係ないままに収束したのは残念でした。
 鼻と唇にピアスをした夏子は、その魅力が描き出されないままに終わります。これも、残念でした。
 殺人事件、秘密、謎、それぞれが投げ出されたままで展開していきます。読んでいて、インパクト以前に話のつながりがつかめません。盛り上がりにも欠けます。最後に、つじつま合わせで、成り行きの解説が長々とあるものの、それまでの長い時間は読者をほったらかしにしていたので、冷ややかに読むしかありません。最後にまとめてある事件の推察は、それまでの物語の中に散らし、全体的にもっと根拠のある推理を展開すべきでした。想像に推測を加えた推理では、根拠が薄弱で嘘話が拡散するだけで、読後に落胆します。藤田の作品は、後半の3分の1は読み飛ばしても大丈夫です。このあたりは、構想の段階で詰めておくべきです。【1】

 書誌:本書は1992年12月に双葉社より刊行されたものを文庫化したものです。
 
 
 
posted by genjiito at 00:50| Comment(0) | □藤田通読