2019年10月07日

【復元】胃カメラを鼻から入れる

 これまでに、情報発信の母体としていたプロバイダのサーバーがクラッシュしたり廃業するなどによって、公開していたブログの記事が消滅したものが数多くあります。その内、探し出せた文章などを整理し、再建してこのように復元して残しています。
 今回は、10年以上も前の次の2つの記事で「胃カメラを鼻から入れる」と題して紹介し、リンクを張りながらも、共にそれぞれのサーバーがクラッシュや廃止となったために、以来ずっと読めなくなっていたものです。

「心身(7)鼻からの胃カメラは良好です」(2007年08月22日)

「心身(17)帝国ホテルで人間ドック(1)」(2008年07月02日)


(※以下の記事は、平成19年3月に消失したブログの復元です。)
 
 
********************** 以下、復元掲載 **********************
 
2006年5月23日公開分
 
主題「胃カメラを鼻から入れる」

副題「口よりずっと楽でした」
 
 
 人間ドックに行ってきました。いつものことながら、病院へいくのは1日仕事です。

 私は胃などの内蔵のいくつかを切除しています。
 ちょうど18歳の時に、高校を卒業してすぐに大阪から上京しました。大田区の大森で住み込みの新聞配達をしながら予備校に通い出して2週間ほど経った頃、突然十二指腸が破れたのです。すぐに意識を失いましたが、多くの方々のお陰で一命を取り留めました。その時に、胃の3分の2と十二指腸などを切除しました。
 私の臓器は、今も手術をした病院に保管してあるとか。ピンク色できれいな胃だそうです。両親は見たようですが、まだ自分の目では確認していません。以来、毎年の行事として、人間ドックに入って胃の精密検査をしています。

 この胃カメラについては、吉村昭氏の小説『光る壁画』が思い起こされます。世界で最初に胃カメラを開発した日本の技術者たちの話です。オリンパスだったと思います。その後、「プロジェクトX」でも取り上げられたようですが、あれはあまりにも演出が度を越している酷い番組だとのことなので見ていません。
 私は、初めて胃カメラを飲むことになった時、この吉村氏の本を読んで自分を納得させた覚えがあります。吉村氏は、私が好きな作家の一人です。丁寧に、しっかりと語られる文章がいいですね。自分の胃の中にカメラが入ることは、とにかく恐怖でした。それを、吉村氏の冷静な文章が和らげてくれました。胃カメラを理解することで、それを使った検査というものと親しくなろうとしたのです。この小説の初版は昭和56年ですが、私は昭和59年刊行の新潮文庫で読みました。20年も前のことです。

 私はこれまでに20回ほど胃カメラを「飲んだ」と思います。体調が思わしくないときには、1年に3回も飲んだこともあります。
 オリンパス社のホームページ「内視鏡の歴史」より画像をお借りします。

191007_olympus.gif

 初めて胃カメラを飲んだのは、大阪の天王寺にある大阪市立大学付属病院でした。『光る壁画』にも、実験の犬の胃を、カメラが突き破ったことが書かれていました。とにかく、怖いという印象しかありません。しかし、自分の体の異常を早く見つけ、体調不良の原因を突き止めたいという思いも強くありました。数年後、また胃カメラに対する不安に駆られたときがあり、『光る壁画』を検査の前の晩に読んだ記憶があります。

 あのタバコの太さのカメラ付きの長い管は、本当に不気味です。それが、ブルーのポリバケツに入れてある姿は、複雑な気持ちになります。そばでは、前の人が使ったゴムホースのような胃カメラを、ゴム手袋をした看護婦さんらしき方が流し台でゴシゴシと洗っておられるのです。なぜそうして洗うかは理解できます。しかし、それが次に誰かの口の中に入るのかと思うと、何となく違和感があります。青いポリバケツがいけないのです。青いゴム手袋が不気味なのです。タライらしきものや、洗面器など、洗面所や台所やお風呂場のそばに横たわっている錯覚に陥ります。

 胃カメラは、私にとっては苦痛なものです。口から入るときに、舌の付け根を通るときに、かならずオエッとなります。吐きそうになります。眼からは、ツツツーッと涙が流れ落ちます。ノドを通るときには、気分が悪くなります。胃カメラの太さは10ミリほどです。ものすごい技術の結晶を駆使して、私の体のために検査をしているのです。しかし、胃カメラを飲んでいる間中、心の中で葛藤を繰り返します。自分のためなんだから、と。それでも、苦痛です。
 空気を入れて胃を膨らませるときが、これまた苦手です。ゲップをすると、横で介添えをしてくださっている看護婦さんたちが、耳元で「伊藤さんガマンしましょうね。何度も空気をいれることになり、余計大変になりますからね。」と、やさしく激励してくださいます。涙が右目から左目へ、そして枕元へと伝わっていくのを感じながら、「ガンバロウ」と自分を元気づけることとなります。
 そして、かならず、胃壁の一部をむしり取られます。細胞組織を検査するためです。長い導線を伝って差し入れられたピンセットが、私の内臓の一部をプチッと摘み取る瞬間がわかります。二三ヶ所切り取られます。一瞬、息が止まります。

 「ハイ、終わりましたよ」と、カメラを操作していた先生とそばにいた看護婦さんが労いのことばをかけてくださるのは、本当にホッと気の緩む瞬間です。しかし、それからカメラが引き抜かれる時の、何とも言えないくすぐったさとヌルヌル感が嫌いです。人を安心させておいて、それでいて気持ち悪くさせるのですから。カメラの先端が口から出た瞬間に、大粒の涙がボタリと落ちて終了です。

 私にとってそんな恐怖の儀式が、今日は不思議なことに、不快でもなんでもなかったのです。それは、鼻から胃カメラを入れる「経鼻内視鏡」というものだったからです。

191007_icamera.jpg

 今回の人間ドックでのスケジュールの説明で、胃カメラは口からか鼻からかを選択できるというのです。昨秋より、鼻から挿入する方法が可能となり、好評だとのことでした。それは、胃カメラの直径が、従来の口から入れていた10ミリの太さのものが、技術の進歩で6ミリ以内まで細くなったから実施できることになったのだそうです。これまでの苦痛が身にしみていたので、鼻からに即決です。

 鼻からの場合は、準備などに時間がかかります。私は、鼻中隔湾曲症の手術をしており、今回の説明書にも、その場合はできない可能性も書かれていました。しかし、それは問題なくクリアーできました。
 私は、いろいろな手術をしているので、何かと面倒な身体です。ヘソが曲がっているのではなくて、鼻が曲がっていたために、何かと日常生活に不都合がありました。説明すると不気味なのですが、簡単に言うと、顔の皮膚を頭蓋骨から剥がして・・・・・・・・・・
 止めておきましょう。上本町駅と鶴橋駅の間にある、大阪赤十字病院でした。とにかく、大変な手術でした。そこに入院している間に、『四本対照 和泉式部日記 校異と語彙索引』(和泉書院、1991年)の校正を終えて刊行しました。

 今回、初めて鼻から胃カメラを入れ、まったく不快な思いをせずに検査を終えることができました。あっけないほどに、スムーズにいきました。ただし、胃壁をピンセットでつまみ取られるときと、カメラを引き抜かれるときの違和感は、これはどうしようもないものだと言うしかありません。

 とにかく、この方法ならば、内視鏡検査に対する嫌悪感はありません。技術の進歩に感謝しています。
 
********************** 以上、復元掲載 **********************
 
 
 
posted by genjiito at 20:44| Comment(0) | *健康雑記