2019年09月19日

読書雑記(269)さそうあきら『花に問ひたまへ』

 『花に問ひたまへ』(さそうあきら、双葉社、WEB コミックアクション、2015年8月)は、電子版として Kindle に連載されました。今回は、それが紙書籍版として単行本となったもので読みました。電子書籍は目が疲れるので、紙媒体の本を読むようにしています。こうして電子版が書籍版として再生するのは大歓迎です。

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 本作品について、ネット上での商品説明には、次のように記されています。

「僕が触れるところ、すべてそこが世界になる」。生まれつき目の見えない青年、一太郎はそのハンデにめげることなく、明るく穏やかに生きる。人生何をやってもうまくいかない、少々厭世気味の女の子、ちはやはある日、駅のエスカレーターで一太郎の白杖をあやまって蹴り落としてしまう。ふたりはやがて心のすき間を埋め合うような仲に…。見つめあえなくても確かな繋がりがそこにある。漫画界の名匠、さそうあきらが描く切ない恋愛物語。


 音のしない漫画の中から、不思議と言葉が聞こえてきます。描かれている絵に、言葉の意味が塗りつけられていきます。奇妙な味の作品です。少し教訓じみたセリフが挟まれるのが気になりました。しかし、それは猥雑な表現が、俗に脱しないための手法と見ました。
 第四話で、駅のホームから落ちた話に、作者の姿を垣間見ました。心優しい方なのでしょう
 人間社会の底に渦巻く、ドロドロとした地層の上に咲く、清らかな花の話を聞く思いで読み進みました。自分の居場所を探し求める人たちの姿が、語られています。
 12番目の最終話に、この本で一番の魅力を感じました。それまでの泥臭さとは違って、これからの大きな展開を約束するパワーがあります。この最終話をベースにした、さらなる一太郎の話が紡ぎ出されていくことを期待しています。
 巻末の「取材協力」の項に「京都府立盲学校の先生方」とあります。本作が生まれる背景が知りたくなりました。
 また、最近、双葉社は海外の本の翻訳出版を始めたとのことです。出版社の社会的な役割について思う所があることもあり、この展開に興味を持っています。出版社のさまざまなチャレンジに期待しています。【4】


■初出情報■
 第一話 2014年5月15日配信
 第二話 6月19日配信
 第三話 7月17日配信
 第四話 8月21日配信
 第五話 9月18日配信
 第六話 10月16日配信
 第七話 11月20日配信
 第八話 12月18日配信
 第九話 2015年1月15日配信
 第十話 2月19日配信
 第十一話 3月19日配信
 最終話 4月16日配信
 
 
 
posted by genjiito at 21:13| Comment(0) | ■読書雑記