2019年09月14日

日比谷で源氏の橋本本を読む(15)[新規講座の紹介]

 今日は日比谷で『源氏物語』の写本を読む講座がある日です。昨夜は、明け方まで今日の資料作りをしていたので、新幹線の中ではずっと寝ていました。
 会場の日比谷図書文化館へは、新橋駅から行きます。着くとすぐに、地下のダイニングで昼食を摂ります。受講生の方がホールにいらっしゃったので、写本の翻字作業の中で疑問の箇所について、問われるままにお答えしました。しばらくすると、待ち合わせをしていた、科研とNPOの活動を一緒にやっている淺川さんが来てくれました。私が手広く活動しているので、打ち合わせることはたくさんあります。

 今日の「古文書塾 てらこや」の講座では、今朝方までかかって作成した、15枚1セットのプリントを配りました。その中身は、以下の通りです。
・今日の問題点に関する異文資料
・橋本本「若紫」で漢字にすべき「覧」のリスト
・来月10月26日に実施する「時代祭」と『百人一首』のイベントのお誘い
・「視覚リハ大会in盛岡」の発表ポスター(「点字付百人一首」)
・道路標識のひらがなの書体の違いの京都新聞の記事
・平安京の羅城・九条大路初出土に関する京都新聞の記事
・発掘で明らかになった鳥辺野の広がりの京都新聞の記事


 これらのプリントの説明で、1時間もかかりました。
 休憩を挟んで、後半は橋本本「若紫」の45丁ウラ5行目から、変体仮名を確認しながら進みました。
 今日も、お詫びからです。実は、これまでの翻字で、「御覧」の時には【御覧】と、漢字には亀甲記号で挟んでいました。しかし、今日の箇所で出てくるように、「おそろし可覧と」や「あ覧」などの「覧」は、漢字と明示していなかったことに、昨夜気づきました。そこで、大急ぎで「若紫」でのこうした不備のある箇所を一覧できるように整理して、みなさまに説明しました。それは、以下の箇所です。

■橋本本「若紫」で漢字にすべき「覧」のリスト(190914)
 (○は訂正ナシ。×は訂正アリ。→は訂正後の表記)

○【御覧】せさ(4ウL3)
○【御覧】せよと・(15ウL)
○【御覧】し可多くや・(19ウL5)
○【御覧】しゆるさるゝ・(24オL5)
○【御覧】せよと・(24オL10)
○【御覧】しゝらは・(34オL7)
○【御覧】しいれぬ・(38オL1)

×なれ$覧・(7ウL5)
   →なれ$【覧】・
×ものおそろし可覧と・(46オL9)
   →ものおそろし可【覧】と・
×堂てま徒覧と・(46ウL3)
   →堂てま徒【覧】と・
×免さ満し可覧と・(47ウL)
   →免さ満し可【覧】と・
×あ覧(54ウL4)
   →あ【覧】
×あ覧・(55ウL8)
   →あ【覧】・
×きこゑや覧・(59オL5)
   →きこゑや【覧】お・
×ゆ里なる覧/ゆ±可・(63ウL8)
   →ゆ里なる【覧】・


 【覧】とせずに「覧」のままでは、「覧」という変体仮名があることになります。「覧」は一字一音の仮名文字ではないので、ここはどうしても亀甲カッコで括っておく必要があります。なぜ、今までこの文字に限って、漢字にしていなかったのか、我ながら不思議です。この「覧」については、注意力がスッポリと抜けていたようです。

 今日は、48丁オモテの4行目まで見ました。その最後のところに、次のような異文があります。

※【橋本本校訂本文】テキスト P113(48丁オ)
「なぞ恋ひざらん」とうち誦(ず)じたまへるを、若き人々は身にしみて めでたしと思ひきこへたり。

※【大島本校訂本文】『新編全集』(小学館)P242
「なぞ恋ひざらん」とうち誦(ず)じたまへるを、身にしみて若き人々思へり。


 ここで、本講座で用いている橋本本グループが「わかき人々は・みにしみて・めでたしと」とするところを、一般に読まれている大島本グループでは「身にしみて・わかき人々」となっています。この違いについて、「人々は」の箇所で傍記されていた「身にしみて」が、前に混入するか後ろに混入するかによって、2種類の異文が発生したことを説明しました。さらには、橋本本が「めでたし」という語句を引き連れて後ろに傍記が潜り込んでいることから、傍記されていた字句は「人々は」ではなく、ここにこの写本の特異性が見られることも確認しました。
 後半は、大急ぎで48丁オモテの4行目まで行きました。

 これで、今期は終わりです。来月は体験講座があり、再来月から次期の本講座が始まります。
 講座の終了後は、受講生からの翻字に関する質問にお答えした後、いつものように有楽町の高架下で課外講座です。今日は、『源氏物語』は男性が書いた作品であるという視点で読むとどうなるか、ということで議論が盛り上がりました。
 来月からは、午前11時から90分が、新設される『源氏物語』の異文を読む講座です。午後2時からの120分が、これまで通り変体仮名を読む講座となります。
 現在、受講生を募集中です。特に、午前の部は、これまでにその内容を詳しくは誰も読んでこなかった橋本本「若紫」を、参会者と一緒に語り合う内容を予定しています。大島本で『源氏物語』を読むことに飽きた方や、異文の実態を知りたい方は、この午前の部にどうぞお越しください。中身はいいので、とにかく変体仮名が読めるようになりたい方は、午後の部へどうぞ。
 こうしたことに興味のある方の参加を、お待ちしています。

※次の画像をクリックすると精彩画像としてご覧いただけます。

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posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | ■講座学習