2019年09月06日

読書雑記(267)垣谷美雨『老後の資金がありません』

 『老後の資金がありません』(垣谷美雨、中公文庫、2018年3月)を読みました。

190829_rougo.jpg

 前半で語られる、労働に関して契約満了で更新はしないという話は、自分自身がちょうど1年前に申し渡された出来事に直ちに結びつきました。どこかで聞いたような、と、成り行きに興味津々。しかし、取り立ててそのことが展開するわけでもありません。残念な思いのままに読み進めました。また、夫のリストラに関しても、夫婦共に素直に受け入れています。善良すぎる市民感覚に、拍子抜けです。平和ボケした日本人女性の駄弁が、ダラダラと続きます。
 娘の結婚式についても、些細な問題を指摘しながら、流されるがままに大金が出て行くことが語られていきます。それは、お葬式の場合もそうです。ともに、いわば無駄遣いの権化だと指摘しながらも、なぜかそこまでです。理不尽さを感じながら、いかにして納得したのかという展開です。その先がないのです。
 年金・解雇・ハローワーク・解約に加えて、子供の先行きの心配や家庭内暴力などなど、身につまされる話が続きます。しかし、具体的な対処策のないままで、直面する事態に対する切迫感はありません。何となく他人事です。作者自身はもとより、他人に対しても温かみのある情は伝わっては来ませんでした。
 初めて読む作家なので、これが作風なのでしょうか?
 後半の年金詐欺の話は顰蹙ものでした。読者をバカにした話で、サッサと読み終えました。読んでいて、不愉快になったからです。
 本書は、タイトルと内容があまりにもズレているとしか思えず、私にはよくわからない読み物でした。書店でこの本を手にした時の期待感と、あまりにも貧困で貧相な読後感のギャップが大きいのです。私向けの本ではなかったようです。
 このような選書の失敗は、本ブログではほとんど取り上げて来ませんでした。
 私は、だいたい同時に5、6冊の本を同時進行で読みます。そして、ブログに書こうと思った本を、時の話題の流れに合いそうなものから取り上げて記事にしています。ということで、読んでも取り上げない本の方が圧倒的に多いのです。また、長編小説を読むことが多いのは、同時に多読している関係で、いくら長い小説でも苦にならないのです。
 本書は、テーマが定年後の我が身に添うものだろうとの思いから、とにかく読み通しました。本来なら取り上げないはずのものではあっても、昨日の保険の記事と連動させ、この時点でこの本を読んだという意味から、一連の読書雑記の中に入れておきます。【1】

※本書は、2015年9月に中央公論新社から刊行された単行本を文庫化したものです。
 
 
 
posted by genjiito at 19:55| Comment(0) | ■読書雑記