2019年07月20日

「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」(第3回)

 今日の資料は、A4版で12枚です。
 まず、配布したプリントの確認から。
 前回、6月29日の勉強会の内容を、当日のブログの記事を元にして確認しました。
 架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』の粉本の絵と、この「紫風庵」の襖絵がよく似ていたことに始まり、人丸・貫之・躬恒の和歌の「変体仮名翻字版」の確認です。
 そして、今日の歌人とその和歌が襖のどこに配置されているかから。

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 今日は、向かって左から二領目の襖の真ん中と右側に配された、兼輔・朝忠・敦忠の3名です。
■兼輔
 (人の親の心は闇にあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな)
                 (後撰和歌集 一一〇二)
■朝忠
 (逢ふことのたえてしなくは中々に人をも身をも恨みざらまし)
                   (拾遺和歌集 六七八)
■敦忠
 (逢ひ見ての後の心にくらぶれば昔は物も思はざりけり)
                 (拾遺和歌集 七一〇)
 上から順に、以下の表記で書かれています。今回は、チラシ書きはありません。


   左 中納言兼輔
  【人】のおやのこゝろ
   は屋三尓阿ら年とも
   【子】越【思】ふ【道】尓
    まと飛ぬる可な


    右 中納言朝忠
  【逢事】能【絶】てし
    なく盤な可/\尓
  【人】をも【身】越も
     うらみさら満し


   左 権中納言敦忠
  あ飛【見】帝の
   【後】農古ゝろ尓
       くらふ連盤
   むかしは【物】も
      おも盤佐り
          介梨


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 目の前の歌仙絵を架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』と比べると、兼輔と朝忠はほとんど図様はよく似ています。しかし、敦忠は大きく異なります。
 まず、「紫風庵」の敦忠。

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 そして、架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』の敦忠。

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 表情は、全体的に架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』の方がリアルで厳しいものが多いようです。そのこと以外に、左手の扱いが、まったく異なるのです。「紫風庵」の敦忠のように左手をかざしている図像は、和泉市久保惣記念美術館画帖、斎宮歴史博物館/情報データベース/三十六歌仙図画帖、狩野尚信『三十六歌仙額』、医王寺蔵三十六歌仙図(狩野派)などで確認できます。しかし、笏を立てて持っている図が大半のようです。もし、「紫風庵」と架蔵の三十六歌仙絵が共に狩野派と関係があるものであれば、この違いは何に由来するものなのでしょうか。
 また、架蔵『探幽筆 三拾六哥仙』の敦忠の袖には、「くろ」と色の指定が書き込まれています。つまり、ここは黒で塗りつぶせということです。しかし、「紫風庵」の敦忠の着衣は白が基調のものであり、柄も花鳥を織り込んだ派手なものです。
 さらには、ほとんどが肌色で顔が描かれているのに、ここでは下の2人の顔は白いことに意味を見いだす意見が、参加者から出されました。しかも、頬に赤く朱が入っているので、恋の歌と関係があるのではないか、という楽しい説明です。後方の襖に貼られた業平では、そのような傾向が見られないので、これも今後の課題となりました。
 これらの問題は、専門家の意見を仰がなくてはならないようです。

 なお、参考資料として、7月9日の京都新聞に掲載された「二条城・重文障壁画 松鷹図 探幽でなく山楽筆」という記事を配布しました。これは、これまでの説が最近の研究によって、同じ狩野派でも探幽から山楽の絵だと修正がなされたのです。これだけ有名な所が所蔵する著名な作品でも、京狩野と江戸狩野の違いがあらためて再確認されたことになります。さて、この「紫風庵」の襖絵は、狩野派が描いたものでいいのか、もしそうであれば誰が想定できるのか、興味と関心をお持ちの方の参加をお待ちしています。

 後半は部屋を移り、手前の座敷でハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」巻を読みました。12丁裏4行目の「ゆゝしや」からです。
 今日は、書写の道具としての糸罫が、この丁の6行目以降では使われていないのではないか、ズレているのではないか、という意見が出されました。9行目の「人」などは、両端の線が左右の行に割り込むように伸びているので、ありうることです。これでは、糸罫に張られた糸が邪魔になって、この横に広がる大きな「人」は書けません。

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 後半の30分で、13丁表1行目の「な可尓ても」まで進みました。8行分の変体仮名を確認したことになります。こんなのんびりとした調子で進んでいます。

 今日は、先日の京都新聞に掲載された記事をご覧になったお二人が、体験的に参加なさいました。今回も10人が寄り集まり、頭をフル回転の2時間でした。
 前回は、説明が少し早かったとのことなので、ペースを落として確認しながら進めました。

 最後に、昨夜がんばって作成した、この勉強会のことを紹介する三つ折りのチラシを見てもらいました。
 少し時間を置いて再度確認してから、いろいろな所に配布しようと思っています。

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 次の第4回「源氏物語と三十六歌仙の写本を変体仮名で読む会」は、8月24日(土)午後2時からです。多くの方々の参加をお待ちしています。
 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎NPO活動