2019年07月14日

朴光華編著『源氏物語−韓国語訳注−(須磨巻)』の紹介

 韓国の朴光華先生が、『源氏物語』の「桐壺」「夕顔」「若紫」に続く「須磨」巻の訳注本を刊行なさいました。

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 朴先生については、「朴光華先生のハングル訳『源氏物語』」(2010年07月05日)で詳しく書きました。
 これまでに刊行されているものの紹介記事は、次の通りです。

(1)「朴光華著『源氏物語─韓国語訳注─(桐壺巻)』」(2015年09月06日)

(2)「朴光華訳の第2弾『源氏物語−韓国語訳注−(夕顔巻)』刊行」(2016年08月26日)

(3)「朴光華編著『源氏物語−韓国語訳注−(若紫巻)』の紹介」(2018年09月06日)

 この韓国語訳注は、19年という長い歳月をかけて、さらに巻を次いで刊行されることになっています。次は、来年5月に「須磨」巻が刊行される予定です。
 韓国語がわからない私には、このようにして紹介することでしかお手伝いができません。『源氏物語』の韓国語訳に関しては、原文を確認してハングルで翻訳されたものが一つもないのが実状です。日本の文化を韓国語訳で広く正確に理解していただくためにも、一日も早い完結を待ち望んでいるところです。

 本書の書誌情報を、いただいたお手紙から転記します。

1) 著者;朴光華(Park KwangHwa)
2) 初版発行日;2019年6月1日
3) 出版社;図書出版DNP
 〒31166韓国忠南天安巿西北区双龍4GIL 8、1F
 電話;041-572-7887
 Email;tdxl000@naver.com
4) 総頁;510頁
5) 定価;W 60,000
6)ISBN;979-11-964307-1-9 (03830)
7) 本書の構成;写真4枚
 序、凡例、須磨巻の概要、登場人物系図、参考文献など;1〜26頁
 若紫巻(日本語本文、韓国語訳、韓国語注);27〜493頁
 論考「なぜ須磨なのか」(今西祐一郎)494〜503頁
 後記(日本語);504〜502頁
 図録1~5 ; 506〜510頁


 さらに、本書の性格と朴光華先生のお人柄がわかる「後記」を、参考までに引用します。文中に「韓国の読者や研究者らにもっと分かりやすく説明するために、ついにこのような形になったのである。」とあるように、この翻訳に朴光華先生が真摯に取り組んでおられることが伝わってくる、一大事業の公開です。

後記
『源氏物語−韓国語訳注−』(須磨巻)は、「文華」(第十一号。2012年1月1日)雑誌に発表されたものである。当時は『源氏物語韓釈一須磨一』(日本文学研究会)という題でこの世に出た。それから約七年後、今日、ようやくしてこれに相当な注釈を施して発刊することになった。当時の須磨巻をいまになって見ると、情けなく間違った個所も多く目立つ。その後「文華」は十二号(2013年1月1日)まで続刊された。
 既刊の桐壺巻・夕顔巻、若紫巻と同じように、須磨巻においても助動詞「む・べし」、丁寧語「はべり」、「にて」などで苦労した。『源氏物語−韓国語訳注−』を企画した最初は、韓国語訳の充実、登場人物の紹介・モノガタリの意味、注釈書の紹介等々を試みたが、いつのまに文法・語法のほうへ傾いてしまって、いまは完全に『源氏物語』についての「韓国語語法書」に転落してしまった。情けないが、しかたない。韓国の読者や研究者らにもっと分かりやすく説明するために、ついにこのような形になったのである。
 私の古典文法にっいての知識は、たかが高校の受験生の程度の実力であろう。このみすぼらしい実力で、いままで『源氏物語』に注をつけてきた。後世になって再読すると、きっと誤りはあるだろう。では、須磨巻の本文につぎのような文がある。

  @「…まばゆきまでしつらひ、かしづきけり。」

 後半部・明石の入道がむすめを大切に育てる場面である。「かしづきけり」は「かしづき(四段連用形)+けり(過去助動詞終止形)」である。が、『大系』は本文を「…かしづけり。」としながら、「「けり」は継続過去の現在状態である。」のように注をつけている。「かしづけ(四段命令形又は巳然形)+り(完了助動詞終止形)」にしてほしいところであるが…。念のため『大系』の底本をみだ(ママ)が、やはり「…かしづけり」であるから、おそらく他本文との校異からきた勘違いであろう。
 もう一つ巻頭のところ、『全集』の本文では6行目にっぎのような文がある。

  A「人しげく、ひたたけたらむ住まひは、…」

 「ひたたけたらむ」を「ひたたけ(力行下二連用形)+たら(完了助動詞たり未然形)+む(推量助動詞連体形で婉曲(〜ような)の意味)」と処理した。が、『評釈』は「「らむ」は婉曲」のように注をつけている。私のほうが正しいと思うが…。
 『源氏物語−韓国語訳注−』は前期、後期に分けて発刊する予定で、所要期間は当初は十四年であったが、大幅に変更された。まず前期30巻は2015年8月〜2033年(19年)となっている。前期の第1期発刊は、桐壺巻(既刊)、夕顔巻(既刊)、若紫巻(既刊)、須磨巻、明石巻、総角巻・浮舟巻などが順次的で発刊される予定である。そして、各巻ごとに諸先生方の論考が掲載されることになっている。桐壺巻(「桐壺院の購罪」伊井春樹先生)、夕顔巻(「夕顔の宿」糸井通浩先生)、若紫巻(「(不掲載。延期)」中野幸一先生)、須磨巻(「なぜ「須磨」なのか」今西裕一郎先生先生(ママ))。
 次は明石巻であるが、予定されていた小町谷照彦先生が2014年10月31日に突然お亡くなりましたので、どうしようかなと考えている。先生についての思い出をすこし述べようかとも思っている。ちなみに『源氏物語−韓国語訳注−』の訳注の原則、方法、内容、発刊計画などについては、日本言語文化研究21号(2017年1月30日)で「『源氏物語−韓国語訳注−』について」という題で発表したことがある。ご参照まで。
 目下『源氏物語−韓国語訳注−』は後世に残すために執筆している。この須磨巻はSにさしあげる。

               2019年6月1日 朴光華

 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎国際交流