2018年07月27日

読書雑記(235)望月麻衣『京都寺町三条のホームズ 8 』

 『京都寺町三条のホームズ8 〜見習い鑑定士の奮闘〜』(望月麻衣、双葉文庫、2017年9月)を読みました。

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 真城葵は、念願の京都府立大学文学部歴史学科に入学し、学芸員の資格を取りたいと思って勉強をします。
 一方、恋人で京都大学大学院を修了した家頭清貴は、成長のための修行に出ます。新しい環境で、2人はスタートします。

■第一章『一生に一度は』
 葵にゾッコンのホームズの姿は、あまりスマートではありません。なぜこのように下品なホームズの様子を、わざわざ描くのでしょうか。作者には、恋愛状態にある男について、勘違いをしているのではないかと思われます。
 ホームズが葵たちに、「お二人はどうぞゆっくりされてくださいね。」(91頁)と言う場面があります。私は使わない表現なので、今の若い方は使うのかな? と思いました。
 石清水八幡宮での推理は腰砕けです。せっかくの舞台と題材が精彩を欠き、もったいないと思いました。【1】

■第二章『小さなホームズ』
 ホームズは、二つ目の修行先として社長秘書をします。その社長の回想がくどくて馴染めませんでした。また、展開される恋愛観もおざなりで、若さを感じません。読者は若者たちだと思っていました。しかし、欲張って、中高年の読者にも届くようなメッセージを伝えようとしたと思われます。読み手の拡大を意識したためか、型通りの男と女のあるべき姿で話をまとめています。
 また、この章でも泣き虫のホームズを描きます。ホームズのイメージに、理知ではなくて感傷に包まれた姿がまといつきます。なよなよとした、いわば光源氏のようなホームズを、読者は求めているのでしょうか。その中性的な要素は、最後まで封印しておいてほしかったところです。登場人物を男性、女性、中性の3つに区分けした時、このままでは男性がいない物語になってしまいます。その中性の存在を、作者はまだ摑み切れていないと思っています。読者に若者を取り込もうとした時に、この性別に対する意識は大事な要素となるはずです。そうした意味からも、私はこの作者と物語に興味をもっています。【1】

■第三章『聖母の涙』
 修行中のホームズは、メトロポリタン美術館のキュレーターの秘書をします。
 ホームズの家にある青磁に関しては、美術館ではなくて別のことを考えているとあり、それはまだ口に出せる段階ではないと言います(190頁)。これがどうなるのかが、今後の物語で明らかにされることでしょう。
 葵の家が、バス停「下鴨神社前」を降り、小さな教会と「聖母幼稚園」の近くにあることが語られています。これまではここまで具体的に語られていなかったことなので、この地域住民としてはどこなのだろうという興味が湧いてきます。中庭に真っ白いマリア像があったり、バザーが開催されるとのことなので、我が家の近くに思い当たる所があります。実際にはどうなのか、いつか確認してみましょう。
 その教会のマリア像が血の涙を流すというのです。その謎解きが展開します。ただし、おもしろくありません。【1】

■掌編『宮下香織の困惑』
 香織の新しい恋愛話が、次巻以降に展開するのでしょうか。前振りのような話です。

※第8冊目になっても、まだ話が安定しません。10巻までは引っ張っていこうとしている意図が、この第8巻で垣間見えます。
 さて、作者がここから立て直す奇策に期待しましょう。
 
 
 
posted by genjiito at 20:11| Comment(0) | ■読書雑記