2018年07月24日

清張全集復読(19)「秀頼走路」「明治金沢事件」「喪失」

■「秀頼走路」
 大坂城の落城とともに、秀頼は脱出したという説がありました。話は、その秀頼が逃亡すると思われる様子を活写します。いかにもありそうな、貴種流離譚となっています。【2】
 
初出誌:『別冊 小説新潮』(昭和56年1月)

※『松本清張全集 36』(文藝春秋社、1973.2.20)の巻末に収載されている著者自身による「あとがき」には、出典として俗書の「塵塚物語」をあげています(542頁)。また、「この筋は大仏次郎氏も二度長編に書いておられる。」とあります。
 
 
■「明治金沢事件」
 文章に気迫を感じます。気持ちの籠もった、力強い響きが伝わって来ました。
 主君の仇討ちは、赤穂浪士の忠臣蔵に通じます。最後の言葉が清張の視点を示しています。
 「人間は演技の模本がなければ、思い切ったことが出来ぬものである。」(『松本清張全集 36』32頁)【3】
 
初出誌:『サンデー毎日臨時増刊』(昭和56年1月)
原 題:「明治忠臣蔵譚」

※『松本清張全集 36』(文藝春秋社、1973.2.20)の巻末に収載されている著者自身による「あとがき」には、この改題について「原題のほうがよかったかもしれぬ。『新聞集成明治編年史』からとったように思う。」(542頁)ともあります。
 
  
■「喪失」
 妻子持ちの二郎に尽くすあさ子。そのあさ子の生活を支援する須田の出現。須田に嫉妬する二郎。お決まりの入り組んだ人間関係。やがて二郎はあさ子を折檻します。クライマックスでは、人間の微妙な心のバランスがつぶさに描かれ、女の心情が見事に捉えられています。【5】
 
初出誌:『新潮』(昭和56年3月)
 
 
 
posted by genjiito at 20:25| Comment(0) | □清張復読