2018年07月16日

読書雑記(234)望月麻衣『京都寺町三条のホームズ 7』

 『京都寺町三条のホームズ 7 〜贋作師と声なき依頼〜』(望月麻衣、双葉文庫、2017年4月)を読みました。

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 作者は、ゴールデンウィーク明けから語り出しながら、なぜか5月の葵祭のことを失念して書き始めています。どうしたのでしょうか。
 物語は、若者たちの愛情を見守る気持ちで始まります。そして、本巻が高校生編のとじめとなるものです。
 
■「その心は」
 お茶会の話で、抹茶の泡だて方で表千家か裏千家がわかる、という話題は、ちょうどお茶のお稽古帰りに読んでいたこともあり、おもしろく読みました。
 また、着物に関する話題と描写も、よくわかります。
 お菓子の松風を口にした場面で「芳ばしさ」(108頁)という語が出てきます。「かぐわしい」が変化した「こうばしさ」という言葉で、平安時代から使われています。ふりがながほしいところだと思っていたら、次の頁ではふりがなが付いています。どうして最初の出現例につけなかったのでしょうか。
 お茶室を競う話では、利休の一輪の朝顔譚をなぞった茶室と、和泉式部の「ありとても」の歌を飾った手作りの茶室。そして、「気は遣うものやない。配るものや」という締めの言葉。初めてのお茶会に出た葵の、爽やかな話に仕上がっています。【5】
 
■「砂上の楼閣」
展開が不自然です。【1】
 
■「言霊という呪」
呪文という言葉が物語を陳腐なものにしています。【1】
 
■「望月のころ」
 相手の心の中を読み合う場面はいいと思います。ただし、話を作り過ぎです。言葉がストーリーの上を滑っています。もっと丁寧にホームズ、葵、円生を描いたら、語らせたら、心温まる話としてまとまったことでしょう。読者に想像を任せる部分が、早めに投げ出されたように思います。そして、情の世界に収めたことに物足りなさを感じました。【2】
 
 
 
posted by genjiito at 18:14| Comment(0) | ■読書雑記