2018年07月12日

読書雑記(233)望月麻衣『京都寺町三条のホームズ・6 新緑のサスペンス』

 『京都寺町三条のホームズ・6 新緑のサスペンス』(望月麻衣、双葉文庫、2016年12月18日)を読みました。

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 ホームズこと家頭清貴と晴れて交際することになった真城葵は、アルバイト先の骨董品店『蔵』でホームズから鑑定の指南を受けます。その中で、こんなシーンがありました。

「掛け軸や他の古美術品の鑑定には、基本的に手袋を着用しますが、茶碗などの『焼き物』の鑑定をする時には、手袋を外すものなんです」
「−え、でも、今まで手袋をしてましたよね?」
「ええ、触感を用いてまでじっくりと鑑定する必要がないものは、手袋をはめたままにしてきました。というのも、お客様の中には直に触れることを嫌がられる方も多いんですよ。『焼き物の鑑定の際には手袋を外す必要がある』ということを知らない方も多いようで、『どうして手袋をしない!』と怒鳴られたことが何度もあります。時に人から預かった物などを扱う時も手袋をするよう指示されることがありまして、そうしたことから、気分を害されないように基本的につけたままにしてきました」
 その言葉には、少し納得した。
 大切な茶碗の鑑定をお願いしようと持ち込んで、素手で触れられたら、『手袋しないの?』と思ってしまうのかもしれない。
「焼き物の鑑定に手袋を外す理由の一つとして、『手袋は滑りやすいから危険』というのがありまして、それで僕は滑り止め付きの手袋をしているわけです。(後略)」(10〜11頁)


 陶器は経験がないとして、写本など和紙に書かれた物を見る時に、私は手袋をしません。手袋が紙を痛めるし、捲りにくいからです。

 また、こんなことも。これはどうでしょうか。

「彼が史郎さんのことを話すとき、一瞬目線が右上を向き、その後に瞬きが多くなりました。人が過去を思い出す時の目は、左上を向きがちで、事実ではない架空の出来事を思い浮かべる時は右上を向きがちです。そして、動揺を隠せない時は瞬きが多くなる。おそらく、厄介な息子がいるのでしょうね」とホームズさんは、腕を組む。(123頁)


 とにかくこの作品は、私が日々行動している範囲が舞台なので、非常に具体的に場面が迫って来ます。出町などは、日常的に行き来している所なので、我が事のように物語の中に入り込めました。

 木屋町での二人の初々しい会話や行動は、微笑ましいくらいに若者の心を掴んだ表現です。作者が理想とする恋する二人を活写することに成功しています。それは、巻末でも見られました。

 本作は、作者にとって初めての長編です。恋愛を軸にして、鑑定、推理、アクション、観光と、欲張った内容です。そして、それらが成功しています。作者の構成力に感心しながら読みました。【5】
 
 
 
posted by genjiito at 19:04| Comment(0) | ■読書雑記