2018年07月31日

立命館大学の戦争展で視覚障害者の資料を見る

 今日から始まった「第38回 平和のための京都の戦争展」(於:立命館大学国際平和ミュージアム、中野記念ホール)に行ってきました。8月5日(日)までの短期間なので、興味と関心をお持ちの方はお急ぎください。入場は無料です。

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 中に入ると、関連書籍の販売コーナーがあります。街中の書店には並んでいない本が多数あった中から、視覚障害者の本、アンデス文化の解説書、ミャンマーのガイドブックなど数冊をいただきました。
 こうしたイベント会場に入手困難な本が並ぶのは、情報収集においてもありがたいことです。

 本を買い終わった頃、そこで、日本盲教育史研究会の事務局長をなさっている岸博実先生と出会いました。先月、岡山であった日本盲教育史研究会には、ちょうど同じ日に池田亀鑑賞の授賞式がすぐ隣の日南町であったために参加できませんでした。そのお詫びを申し上げた時でした。今回のメインテーマである「障害者と戦争」のコーナーが入口正面のパネルの裏なので、と言いながらそのコーナーに連れて行ってくださいました。そして、いろいろな説明を伺うことができました。

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 このコーナーは、すべて岸先生がお持ちの品々で構成されています。人の顔さえ写っていなければ大丈夫だとのことなので、ありがたく貴重な資料をカメラに収めさせていただきました。見られる機会に撮影しておかないと、この次いつ出合えるかわからないのです。特に興味をもったものを、いくつか紹介します。

 まずは、パネルをみながら全体の構成を確認します。
 大きく「障害者と戦争 −戦争は戦力にならざる者の排除−」と書いてあります。
 障害者は戦力にならないとして差別された反面、さまざまな形で駆り出されていたことがわかる展示です。

 ゼロ戦の翼下に「日本盲人号」とあります。

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 次の左下の写真は、「防空監視哨員」として動員された近江谷勤さんです。障害者が敵機の音を聞き分ける練習をした後、その聴覚で敵の戦闘機の来襲を察知するという仕事に当たったのです(練習用の飛行機の音を吹き込んだレコード盤は後出)。もっとも、実際にはあまり成果はあがらなかったようですが。
 岸先生の話では、この近江谷さんを探すのに使用した資料(写真左上の赤丸部分)に「おおみや」とあったので、「大宮」さんとばかり思い込んでいたとのことでした。実際には「近江谷」なので、点字で書くと「おうみ」となるはずなのです。点字は実際の発音に近い表記をします。仮名遣いの問題は、こんな形で時々問題点を見せます。こうしたこともあって、岸先生は近江谷さんと出会うまでに、10年もかかったのだそうです。
 右下のマッサージをしている写真には、「按摩さんたちが奉仕に乗出す」とあります。

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 次の左下には、戦傷によって失明した人に渡された「失明軍人杖」の記事があります。

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 こうしたパネルの前のガラスケースには、パネルに関連した品物が展示されています。
 次の写真の左下には、「徴兵検査手引書」として以下の説明文が記されています。

検査を担当する医師用につくられた手引き書
この中に”失明詐称者””難聴詐称者”看破法
がかなりの頁をさいて書かれている。
 徴兵のがれを図る国民がいたことを示している。
      資料:岸 博実氏


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 同じケースの右側にはレコード盤があり、次の説明文があります。すでに説明したものです。

敵機爆音集 レコードと副読本
アメリカ軍の飛行機の音を聞きわけることを目的に
ニッチク(レコード会社)が制作したレコード。副読本には
「ボーイングB−17」「カーチスP−40」などの説明もある。
      資料:岸 博実氏


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 次の杖は「失明軍人杖」です。すでに上で説明したものです。
 ここの説明文は次の通りです。
 
「失明軍人杖」
 戦争で失明した軍人に、陸軍大臣 海軍大臣
から支給された「軍人杖」陸軍は星と鷲、海軍は
桜と錨がデザインされている。
      資料:岸 博実氏


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 こうした展示品について、岸先生からはその収集にあたっての驚くべき裏話を伺いました。これについては、また先生ご自身がお書きになることでしょうから、ここでは差し控えておきます。実は、今日も見つけたとのことでした。探せばまだ見つかる、ということのようです。そして、どうしても真っ直ぐな、装飾としての把っ手のない杖が、なかなか見つからないとのことです。ご存知の方がいらっしゃいましたら、お知らせください。

 この他には、「沖縄戦発掘資料」などなど、興味深い展示コーナーがホールいっぱいに展開しています。
 書けば際限がないので、じっと我慢をします。
 ぜひとも、実際にご覧になることをお勧めします。

 なお、会場でいただいたパンフレットに掲載されていないもので、「故 中野信夫さんスケッチ画 & 戦後の平和友好活動紹介」というコーナーがありました。
 これは、ミャンマーにおけるインパール作戦に参戦して、奇跡的に帰還した中野信夫軍医の手になる絵だそうです。これもお見逃しなく。

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 DVDの上映や体験談や講演などが、連日盛りだくさんです。しかし、私は来週のペルー行きを控え、会議や前期試験などなど、8月5日までに再度行く余裕はありません。残念ながら、また来年の楽しみとします。
 
 
 
posted by genjiito at 21:12| Comment(0) | ■視覚障害

2018年07月30日

「コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録」がリニューアル(その3)

 大量の調査カードを、コーニツキー先生が「ファイルメーカー」に入力なさっていた作業を引き継いですぐに、インターネットで公開するデータベースの設計に入りました。そして、無事に公開に漕ぎつけたのは、2001年11月でした。大内英範氏の協力を得て、検索システムも実装しての稼働です。予想外にハイペースです。

 ただし、まだこのデータベースは、国文学研究資料館で正式に認められたものではありませんでした。安永尚志先生のご理解が得られ、そして原正一郎先生のご支援とご協力が得られたことにより、データベースの公開実験ということで運用が始まったものなのです。具体的には、情報発信に使用するパソコンを国文学研究資料館のネットワークシステムの外の回線につなげての、あくまでも研究としての実験でした。ファイアーウォールの外なので、セキュリティに守られていないエリアからの公開だったのです。どのようなアタックがあり、いつダウンするかもわからないという、非常に危うい環境下でのものでした。それでも、安永先生と原先生が親身になってデータベースのことを配慮していただいたお陰で、何もトラブルもなく運用しつづけることができました。ありがたいことでした。
 実際の公開に当たっては、野本忠司先生も直接マシンを操作してくださったおかげで、スムースな運用ができました。みなさんの叡知が集結したデータベースだったのです。

 そうこうする内に、次第に海外からの反応もあり、このデータベースの有用性が館内にも示せるようになりました。公開件数も増えてきた段階で、ちょうど国文学研究資料館内のシステムの入れ替えの話が耳に入りました。基幹サーバーで運用するデータベースシステムの大幅な再検討が始まったのです。しかし、まだしばらくは「コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録」は館内で認められないままに、館外に置かれた、ファイアーウォールの外の回線から情報発信をするしかありませんでした。
 晴れてセキュリティに守られた館内のサーバー上からの公開となったのは、まだ数年後のこととなります。

 今、手元に詳細な資料がないので、手控えで回想記をつづります。正確なことは、後日しかるべき時に補訂するつもりです。
 今、手元の資料でこの時期の活動を確認できるものは、次のメモが一番詳しいものです。これは、館内の電子情報事業部に提出した予算配分に関する私見を記した書類の下書きです。日付は、2004年2月です。

欧州所在日本古書総合目録データベース(担当者・伊藤鉄也)

今回の配分額に関する意見

【現状】
・本事業は、ケンブリッジ大学Peter Kornicki教授の調査・収集になる、欧州諸国に散在する和古書の書誌カード(手書き)のデータベース化である。
・Kornicki教授の手許に存在する約2万枚のカードのコピーを入力し、同教授に返送。
・同教授により再び送付されて来た、赤字校正が入ったカード(コピー)を校正入力する。
・入力の済んだものについて、ある程度量がまとまった時点でデータベースに追加、公開する。
・現在は、約3800件を公開している。23カ国以上から、年間約2500件のアクセスがある。
・データはXML形式で構造化されている。
・検索エンジンは、現在はYggdrasillを使用。PerlAPIによって取り出されたXMLデータをXSLTによりHTML化している。しかし、表示について利用者環境に左右されないよう、Sablotronによりサーバーサイドで処理をしている。
・必要なプログラム、スクリプト等は開発済みである。しかし、データのXML形式化およびXSLTの微調整等の作業が日常的に発生している。
・また、データベースに関連して、「所蔵機関」等のデータ収集作業(URLや蔵書目録ほか)なども行なっている。
・2年目に現行データベースシステムを見直し、新しいシステムを開発したい。
・今後とも国文学研究資料館における海外向けの情報発信として重要な意義がある。

【配分予算の42万円でもできること】
・昨年を基準にすると、校正作業も含めて、2ヶ月分のデータ作成用アルバイト謝金となる。(年間作成予定2000件のうち、300件を公開することになる。)

【配分予算が42万円ではできないこと】
・6年で完成するデータベースが、30年もかかることになる。
・調査旅費を活用して、海外の研究者との打ち合わせと参考文献・参考資料などの付加情報を充実させてきた。予算が足りないとそれが不可能となり、緊密な連携によるデータベース育成ができなくなる。
・作業用パソコンは伊藤の研究用マシンを転用している。この小額予算では、本事業のためのパソコンが購入できない。
・調査カードのコピーと校正資料を、国際メール便で頻繁にやりとりしている。それができなくなる。
・補佐員が必要。ケンブリッジ大学との頻繁な資料のやりとりや、データベースのメンテナンス、および所蔵機関に関するデータ収集・整理などの膨大な作業が安定してできなくなる。
・現在は独自システムで稼働しているため、2年目にシステム開発をして館内システムでのデータベースサービスを予定している。このままでは、それができなくなる。

 以上が、要求額である●●●万円に近い配分を要望する理由である。

 なお、Kornicki教授からは、本データベース作成に関する権利のすべてを委譲されている。


 何とも、台所事情の苦しい中で、懸命にデータベース構築のための運用に邁進して行こうとしていたことが伺われる内容となっています。
 42万円の予算でスタートしたものの、年末に追加要求をした形跡があります。しかし、それは認められませんでした。

 2005年1月には、こんなメモもあります。

・ケンブリッジから来た新規カード      1,276件
・ケンブリッジからの校正済みカード     2,177件
・ケンブリッジから来た新規データ      150件
・ケンブリッジに送付したカード       743件
・現在入力中のカード            879件
・HPアップ用(担当者に手渡し済み)    2,794件
・ケンブリッジから送付されたて来た回数   約7回
・ケンブリッジへ資料を送付した回数      2回


 以上は、「コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録」がデータベースとして出来上がっていく過程の概要等を、2005年までの分として整理したものです。

(以下、続く)
 
 
 
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2018年07月29日

京洛逍遥(505)京都駅で見かけた羅城門と性別不問のトイレと回転寿司

 駅前の京都タワーがある東端、タクシー乗り場の近くに、羅城門の模型を見つけました。

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 確認したところ、2016年11月にはここに設置されていたようです。それまでは、メルパルク京都の地階に保管されていたとのこと。メルパルク京都は、昨春までの毎年2月下旬に、総合研究大学院大学文化科学研究科教授会が開催されていた会場だったため、何度も来ています。その地下に、平安京にあった羅城門の10分の1の模型が設置されていたとは、迂闊にも知りませんでした。それが、2016年の冬に地上の駅前北東広場に移設されたのです。
 この模型は、1994年の平安建都1200年記念事業として「甦る平安京」展に出品された復元模型だそうです。宮大工をはじめ、京都の職人さんたちが自慢の技術を結集し、半年がかりで製作したものだとあります。
 羅城門については、「源氏のゆかり(33)説明板27-羅城門跡」(2008年12月23日)に取り上げています。その記事の中で、「京都でも、ぜひこの羅城門を復元してほしいものです。」と書きました。それが、上記の経緯のもとに復元が進み、展示となっていたのです。原寸ではなくて10分の1であっても、イメージを膨らませるのにはこれで充分です。後は、現在は「調整中」となっている表示パネルを、文字列や写真が流れるだけのものにはしてほしくありません。プレゼンテーションの腕の見せ所です。

 その前のJR京都駅に直結するホテルグランヴィア京都には、昨年6月に注目すべきトイレの表示が登場しました(京都新聞、2017年6月10日)。ずっと気になっていたことなので、この際と思い確認してきました。
 通路側からトイレに入ろうとすると、男女のアイコンのデザインが頭上に見えます。一般的なものとは多少違うものの、特に違和感のない表示です。

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 さらに奥に入ると、右側に、こんな性別不問のパネルが取り付けられていました。

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 これは、欧米で定着している性的少数者を対象とした「LGBTツーリズム」の観点から設置されたものだそうです。このホテルは、2006年にLGBTを支える国際団体に加盟し、2014年には妙心寺と連携して同性同士の仏前結婚式を企画、すでに5組が利用したということです。
 また、このホテルでは、同性愛者やトランスジェンダーの接客に携わる社員は、レインボーカラーのバッジを付けておられるようです。そのバッチを付けた方に、この日は出会えませんでした。

 トイレ情報に関連する話題を、もう一つ。
 今日の京都新聞によると、市営地下鉄京都駅のトイレに、二条城の国宝二の丸御殿大広間に見立てた個室がお目見えしたそうです。トイレの壁に、大広間の写真が貼られていて、徳川慶喜が大政奉還を発表した、まさにその場にいるような演出がなされているのだとか。

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(京都新聞電子版より)

 京都駅のホームの南側にあるそうなので、いつか入ってみます。来月8月16日までなので、興味のある方はお急ぎください。

 さらに、もう一つ追加。
 京都駅前の地下街ポルタにフードコートがあります。その東エリアに「回転寿司 金沢まいもん寿司」が出来たことは知りながら、なかなか行く機会がありませんでした。やっと、行くことができました。世界の回転寿司マップを作成中なので、ここも追加しておきます。

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posted by genjiito at 20:18| Comment(0) | ◎京洛逍遥

2018年07月28日

[町家 de 源氏](第11回)(石田版新糸罫と中国版糸罫)

 昨日まで、京都では35度以上の猛暑日が14日も続いていました。
 賀茂川畔の植物は、その暑さにやられて焼けて黄色に変色しています。
 一日も早い雨が待たれます。

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 今夜から、台風が意外なコースで関西に向かって来ます。そんな中を、天候が激変しないお昼に、いつも通り「be京都」で『源氏物語』を読み進めました。
 今日は34度。連日の38度に身体が慣れたこともあってか、御所周辺では少し涼しさを感じさせる風が通っています。

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 今月も中国から庄婕淳さんが参加です。アメリカのシカゴで勉強している知り合いの学生さんと一緒に来てくれました。楽しいメンバー7人で、さまざまな話題に盛り上がりました。
 前回、庄さんにお願いした、中国版の糸罫らしいものを入手して来てもらいました。これは、プラスチック製ながらも、日本の糸罫とまったく同じ機能を持った書写の道具になるものです。
 長方形で中が刳り貫かれた枠が、特大級のものから小型のものまで、全部で5種類がワンセットとなっています。周囲のギザギザにポリエステルの紐をかけて直線を張り、その隙間の間に文字などを描くのです。扱い易く、多用途に使える優れものです。

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 また今日は、石田さんの新作の糸罫も持参してくださいました。
 前作が右、今回の改良版が左です。糸も魚釣りのテグスに変わりました。

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 裏面を見ると、大きな違いがわかります。糸が紙面に接するかどうかと、その糸の木枠への留め方に注目してください。

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 これについてのご意見を、書家の方などからいただけると幸いです。

 『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』の写本は、8丁表の6行目から、字母を確認しながら読みました。
 「あ者れ尓」の「者」「尓」や、「堂ち」の「堂」、「徒まと」の「徒」について、庄さんから中国語での発音などを教えてもらいながら、いろいろな角度で意見交換をしました。
 その中で、「経済」や「政治」などは日本で明治時代頃に作られた単語であり、それが今は中国語に取り込まれているという話になりました。これは意外でした。日中の文化をもっと知りたいと思います。

 次の第12回は9月22日(土)14時から16時までです。
 また、第13回は10月21日(日)14時から16時となっています。
 ご自由に参加していただけますので、この記事のコメント欄を利用して連絡をいただけると、詳しい説明を差し上げます。
 
 
 
posted by genjiito at 23:13| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年07月27日

読書雑記(235)望月麻衣『京都寺町三条のホームズ 8 』

 『京都寺町三条のホームズ8 〜見習い鑑定士の奮闘〜』(望月麻衣、双葉文庫、2017年9月)を読みました。

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 真城葵は、念願の京都府立大学文学部歴史学科に入学し、学芸員の資格を取りたいと思って勉強をします。
 一方、恋人で京都大学大学院を修了した家頭清貴は、成長のための修行に出ます。新しい環境で、2人はスタートします。

■第一章『一生に一度は』
 葵にゾッコンのホームズの姿は、あまりスマートではありません。なぜこのように下品なホームズの様子を、わざわざ描くのでしょうか。作者には、恋愛状態にある男について、勘違いをしているのではないかと思われます。
 ホームズが葵たちに、「お二人はどうぞゆっくりされてくださいね。」(91頁)と言う場面があります。私は使わない表現なので、今の若い方は使うのかな? と思いました。
 石清水八幡宮での推理は腰砕けです。せっかくの舞台と題材が精彩を欠き、もったいないと思いました。【1】

■第二章『小さなホームズ』
 ホームズは、二つ目の修行先として社長秘書をします。その社長の回想がくどくて馴染めませんでした。また、展開される恋愛観もおざなりで、若さを感じません。読者は若者たちだと思っていました。しかし、欲張って、中高年の読者にも届くようなメッセージを伝えようとしたと思われます。読み手の拡大を意識したためか、型通りの男と女のあるべき姿で話をまとめています。
 また、この章でも泣き虫のホームズを描きます。ホームズのイメージに、理知ではなくて感傷に包まれた姿がまといつきます。なよなよとした、いわば光源氏のようなホームズを、読者は求めているのでしょうか。その中性的な要素は、最後まで封印しておいてほしかったところです。登場人物を男性、女性、中性の3つに区分けした時、このままでは男性がいない物語になってしまいます。その中性の存在を、作者はまだ摑み切れていないと思っています。読者に若者を取り込もうとした時に、この性別に対する意識は大事な要素となるはずです。そうした意味からも、私はこの作者と物語に興味をもっています。【1】

■第三章『聖母の涙』
 修行中のホームズは、メトロポリタン美術館のキュレーターの秘書をします。
 ホームズの家にある青磁に関しては、美術館ではなくて別のことを考えているとあり、それはまだ口に出せる段階ではないと言います(190頁)。これがどうなるのかが、今後の物語で明らかにされることでしょう。
 葵の家が、バス停「下鴨神社前」を降り、小さな教会と「聖母幼稚園」の近くにあることが語られています。これまではここまで具体的に語られていなかったことなので、この地域住民としてはどこなのだろうという興味が湧いてきます。中庭に真っ白いマリア像があったり、バザーが開催されるとのことなので、我が家の近くに思い当たる所があります。実際にはどうなのか、いつか確認してみましょう。
 その教会のマリア像が血の涙を流すというのです。その謎解きが展開します。ただし、おもしろくありません。【1】

■掌編『宮下香織の困惑』
 香織の新しい恋愛話が、次巻以降に展開するのでしょうか。前振りのような話です。

※第8冊目になっても、まだ話が安定しません。10巻までは引っ張っていこうとしている意図が、この第8巻で垣間見えます。
 さて、作者がここから立て直す奇策に期待しましょう。
 
 
 
posted by genjiito at 20:11| Comment(0) | ■読書雑記

2018年07月26日

アレッ!と思う時〈その5〉少し認知症?

(1)エレベータやバスで、降りるボタンを押し忘れていたため、そのまま通過して降り損なった時。エレベータならそのまま乗っていて折り返します。しかし、バスでは、ため息混じりに歩いて引き返すことになり、その足取りの重たいこと。

(2)小銭入れから硬貨を取り出し、チャックを閉めようとしていたら、掌に握り込んでいた硬貨をバラバラと落とした時。拾おうとして屈んだら、さらに財布から小銭が落ちて情けないことになります。

(3)冷蔵庫を勢いよく開けたものの、ハテ何を取り出すのだったのかが思い出せなくて、しばらく庫内を物色する時。これが、けっこう冷蔵庫の整理になります。もっとも、後で妻に、いつもの所になくて困るとしかられますが。

(4)2階の勉強部屋から大急ぎで1階に降りたまではよかったものの、さて何をしに降りて来たのかがわからなくて必死に思い出そうとする時。そんな時は、そのままもう一度2階に戻ることにしています。ただし、ついに思い出せないことが多いのはなぜでしょうか。

(5)仕事で高校に行くはずが、間違って大学へ行く経路の電車に乗っている自分に気付いた時。今日が何曜日で、何をする予定だったのかを思い出そうと、頭の中はフル回転となります。



posted by genjiito at 21:53| Comment(0) | *身辺雑記

2018年07月25日

第11回[町家 de 源氏物語の写本を読む]開催のご案内

 今週末の7月28日(土)午後2時から4時まで、「be京都」(http://www.be-kyoto.jp/)で11回目となる[町家 de 源氏物語の写本を読む]を開催します。
 テキストは、『ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」』(伊藤編、新典社、2013年)です。

 本日25日(水)の京都新聞(朝刊)「まちかど」欄に、呼びかけの記事が掲載されましたので、あらためてこのブログでも紹介します。

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 今回は、「8丁表6行目行頭」の「の【夜】能」から読みます。
 前回は、地震があったために内容については進みませんでした。「地震の後に第10回[町家 de 源氏物語の写本を読む]」(2018年06月19日)をご覧ください。
 とにかく、のんびりと進めていますので、お気軽にご参加ください。

 700年前に書写された『源氏物語』を、変体仮名に注目して読み進めることに興味と関心をお持ちの方は、このブログのコメント欄より、参加希望の連絡をお願いします。折り返し、詳細な案内をお送りします。
 参加費は、初回だけは体験ということで千円です。2回目以降は二千円です。
 NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の会員は割り引き特典があります。

 なお、今後の勉強会の日程は、以下のようになります。

●8月の勉強会はお休みで、当初はイベントを予定していました。
 しかし、私が海外出張が2つも入ったために、秋に延期します。

第12回 9月22日(土)14時から16時 「be京都」
第13回 10月21日(日)14時から16時 「be京都」

 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎NPO活動

2018年07月24日

清張全集復読(19)「秀頼走路」「明治金沢事件」「喪失」

■「秀頼走路」
 大坂城の落城とともに、秀頼は脱出したという説がありました。話は、その秀頼が逃亡すると思われる様子を活写します。いかにもありそうな、貴種流離譚となっています。【2】
 
初出誌:『別冊 小説新潮』(昭和56年1月)

※『松本清張全集 36』(文藝春秋社、1973.2.20)の巻末に収載されている著者自身による「あとがき」には、出典として俗書の「塵塚物語」をあげています(542頁)。また、「この筋は大仏次郎氏も二度長編に書いておられる。」とあります。
 
 
■「明治金沢事件」
 文章に気迫を感じます。気持ちの籠もった、力強い響きが伝わって来ました。
 主君の仇討ちは、赤穂浪士の忠臣蔵に通じます。最後の言葉が清張の視点を示しています。
 「人間は演技の模本がなければ、思い切ったことが出来ぬものである。」(『松本清張全集 36』32頁)【3】
 
初出誌:『サンデー毎日臨時増刊』(昭和56年1月)
原 題:「明治忠臣蔵譚」

※『松本清張全集 36』(文藝春秋社、1973.2.20)の巻末に収載されている著者自身による「あとがき」には、この改題について「原題のほうがよかったかもしれぬ。『新聞集成明治編年史』からとったように思う。」(542頁)ともあります。
 
  
■「喪失」
 妻子持ちの二郎に尽くすあさ子。そのあさ子の生活を支援する須田の出現。須田に嫉妬する二郎。お決まりの入り組んだ人間関係。やがて二郎はあさ子を折檻します。クライマックスでは、人間の微妙な心のバランスがつぶさに描かれ、女の心情が見事に捉えられています。【5】
 
初出誌:『新潮』(昭和56年3月)
 
 
 
posted by genjiito at 20:25| Comment(0) | □清張復読

2018年07月23日

歯の治療は出張前のために様子見となる

 今日で気温が38度超えも10日目となりました。
 インドで40度、モンゴルでマイナス34度の世界に身を置いたことがあります。
 その体験もあってか、このグニャグニャした針金のような、一見ひ弱な身体の私であっても、過酷な状況には適応できる改造人間になっていると、自分勝手に信じています。何があっても、生き抜けるのだと。

 しかし、それにしても、連日の高温で疲れも溜まりに溜まってきました。
 とにかく、これまでに経験したことのない、異常気象の中にいることが、日々に実感として納得できるようになりました。異常と思っていたことが、日常の出来事になってきているのです。

 そんな折も折、海外へ行くことになると、どうしたことか、いつも身体のどこかが不協和音を奏でます。今回は歯です。

 私は小さい時に、家の2階のハシゴから落ちて前歯を折りました。

「わが母の記(2)階段から落ちる」(2008年05月26日)

 それからというもの、歯とは悪しき因縁の闘いが続いています。

「意を決して受けた「セカンドオピニオン」の衝撃」(2016年03月18日)

「わが父の記(6)弁当箱で父の歯が折れたこと」(2015年01月14日)

「歯医者さんに歯を噛みしめないでと言われて」(2013年03月09日)

 先月あたりから、治療していた前歯がグラグラし出したので、最近行くようになった駅前の歯医者へ行きました。
 電話をすると、今日は予約がいっぱいで、週末なら空いているとのことです。2週間後には海外へ行くので、今日は何時まででも待つことを条件に予約をしました。

 どうせ長時間待つことになるのならと開き直り、その前に駅の上にあるスポーツクラブで一泳ぎしました。
 このクラブは施設が古くなったこともあり、高齢者がほとんどです。若い人たちは、もっときれいで効率的に運動ができる所に行っているようです。
 かつては、妻も私と一緒にこのクラブに通っていました。しかし、今はもっとおしゃれなクラブに行っています。私も、そろそろ別のところに変わろうかと思っています。施設の老朽化が気になり出しました。
 今日のプールの水温は異常に高く、水も白濁していて、浮遊物も気になりました。頻繁に水質検査をしておられるので、科学的には問題はないにしても、感覚的には違和感を感じます。

 そうこうする内に、歯医者でいつになるかわからない順番を待つ時間になりました。ところが意外に早く、一時間も待たない内に名前を呼ばれました。

 結果は、今あわてて治療を始めると、歯に無理な負担をかけて付け替えることになる上に、出張でペルー・リマに行くまでに間に合わない可能性もあるそうです。そこで、このまま海外に行くことにし、帰国してからゆっくりと治療をすることになりました。そのためにも、出かける前日にもういちど状態を診てもらうことになりました。

 月末からはアメリカ・ハーバードへ行くので、その間の中旬か、さらには帰国後の9月から治療を始めることになるかもしれません。

 短時間に最適な治療方法と、そのタイミングを見計らった治療の時期を判断してもらいました。
 とにかく、歯を食いしばらない生活を実践する以外に、今の対処策はありません。
 いろいろと請け負っている仕事があります。これを理由とすることに引け目を感じながらも、とにかくお許しをと思って穏やかに暮らすことに専念します。
 いつものことながら、お詫びするしかありません。ご理解を……
 
 
 
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | *健康雑記

2018年07月22日

「コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録」がリニューアル(その2)

 今回リニューアルした「コーニツキー版 欧州所在日本古書総合目録データベース」の冒頭に、そのプロジェクトの経緯が記されています。
 その後半には、次のように書いてあります。

入力は、2001年までは、コーニツキーが担当しました。その後のデータ入力は国文学研究資料館が引き継ぎ、伊藤鉄也が担当しました。2001年11月にweb公開を行い、検索システム等は大内英範が構築し、順次データの追加・更新を行なっている。


 この経緯について、思い出せる限り書き残しておきます。

 ケンブリッジ大学のピーター・コーニツキー先生が調査収集された資料に関して、国文学研究資料館がその整理に協力しだしたのは、私が着任してちょうど1年が経った2000年春頃だと思います。一昨日の本ブログ「「コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録」がリニューアル(その1)」(2018年07月20日)に記したように、ロバート・キャンベル先生と北村啓子先生が、その窓口となっておられました。コーニツキー先生からは、カードに記されたデータがサンプルとして送られて来ていたようです。

 私が最初にそのデータを拝見したのは、コーニツキー先生ご自身が「わ」の部を入力された、『和合長久の伝受』に始まるデータのリストでした。「ファイルメーカー」からCSV形式に書き出したものです。ただし、それらのデータをどのようにしてデータベース化するのか、というところで中断していたのです。そうした中で、当時の松野館長の命によって、私がコーニツキー先生の調査カードをデータベース化することになりました。その背景には、国文学研究資料館の公式ホームページの立ち上げと運用を担当するホームページ委員会の委員長を、着任早々の私が担当していたことがありました。この時点では、これは国文学研究資料館の業務ではなく、あくまでもコーニツキー先生のお手伝いをする、というものでした。

 コーニツキー先生からのサンプルデータを通覧しながら、データベース化に関する私案を組み立てました。
 私が最初にコーニツキー先生に連絡を差し上げたのは、2001年1月30日でした。

はじめまして。
私は、国文学研究資料館・研究情報部・助教授の伊藤鉄也と申します。
私は、源氏物語の研究をしています。
さて、私は単身で、2月15日から25日までイギリスへ調査に行きます。
現在、私は国文学研究資料館のホームページを担当している関係で、先生がお作りになっている『古典籍目録 Union Catalogue of Early Japanese Books in Europe』の公開について、ご相談したいと思います。
(下略)


 この第一報を発信してから昨年3月まで、実に16年にわたるピーター・コーニツキー先生とのお付き合いが始まったのです。そして、それからというもの、毎年のように私がケンブリッジへ、コーニツキー先生が東京へと、さまざまな仕事を抱えて往き来し、データのやりとりやデータベース化に伴う問題点の検討などを続けてきました。

 このプロジェクトの始発となる、2001年2月に話を戻します。
 電子情報事業部長の安永尚志先生のご理解とご協力を得て、英国各地で調査をする一つの中に、コーニツキー先生との具体的なデータベース構築の打ち合わせを組み込むことが実現したのです。
 その時の旅行記の一部が、「トイレ表示 なぜ男は青、女は赤?」(2007年10月23日)に書いてありましたので、当該箇所を引きます。

 今から6年前に、初めてイギリスへ行きました。ケンブリッジ大学のピーター・コーニツキー先生のもとへ、データベース作成の打ち合わせで訪問したのです。これは、今も続いています。次のアドレスで公開していますので、興味のある方はご覧ください。
http://base1.nijl.ac.jp/~oushu/

 さて、、地図を片手に、キャスター付きのバッグを引きずって、ヒースロー空港から地下鉄と列車を乗り継いでケンブリッジに直行しました。ロンドンもケンブリッジも単色の街だというのが、第1印象でした。

 その日は、ピーター先生のご自宅にお世話になることとなり、先生とご一緒に夕食の買い物に出かけました。先生お手製のカレーを作ってくださるとのこと。初対面なのに買い物に一緒に連れて行ってくださり、カレーの材料やワインなどを物色するという、楽しい一時でした。
 買い物をしながら、いろいろな話をした中に、服装のことがありました。
 その日の先生は、赤いパンツを穿いておられたのです。ワインを選びながら、先生は私に、伊藤さんは赤い服は着ないの?、と訊かれたのです。
 私は、ネクタイでさえ赤は滅多にしないんですよ、と答えたら、赤い色は元気が出ますよ、という趣旨のことをおっしゃいました。赤が流行だとも。

 その夜、奥様を交えて先生の通訳を介して、インドの話で盛り上がりました。奥さんは、インドの文学・文化・美術の専門家で、ケンブリッジ大学の先生です。
 その奥様も、真っ赤なセーターでした。対する私は、焦げ茶のタートルネックのセーターに黒いズボンという、いかにも日本風の地味な格好でした。
 浮世絵やインド美術の実物や写真を見ながら、カラフルな話題になりました。色彩に関する感覚の違いに、日本文化を考えるきっかけをもらいました。

 以来、赤いモノを身につけるように心がけることが多いのですが、私にとっては、それでもささやかな冒険ではあります。


 先生のご自宅に泊めていただいた翌朝、裏庭での写真が残っています。今、先生はロンドンにお住まいなので、何度か拝見したこの庭も私にとっては懐かしいものです。

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 そしてそのすぐ後、6月に再訪した時には、コーニツキー先生のお手元にあった調査カードの大半を、先生と2人で大学内の複写機を使ってコピーする作業に汗を流しました。

(以下、つづく)
 
 
 
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | ◎国際交流

2018年07月21日

映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』

 今日もカンカン照りで、京都は8日間連続の38度超えです。明日も下がらないようなので、新記録はまだまだ更新されそうです。
 そんな中を、気温が1度だけ低い(?)大阪に出かけました。久しぶりに映画を観るためです。

 梅田スカイビルタワー イーストにある「シネ・リーブル梅田」は、阪急梅田駅から意外と遠いところにありました。これまで、大阪駅北側の一帯は、しかも西地区はまったく縁がありませんでした。まだ建設中で、これからさらに大きく変わるようです。

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 今日から大阪・梅田で公開の『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(監督・湯浅弘章)は、言葉がなかなか出てこない女子高生が主人公です。いい映画でした。暑い中を出かけて来て観て良かった、と大いに満足しています。
 近畿圏での公開は、以下の通りです。

シネ・リーブル梅田 →7/21(土)〜
 
京都シネマ →8/18(土)〜
 
シネ・リーブル神戸 →7/28(土)〜


 この映画については、公式ホームページに任せしましょう。

「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」

 一番印象に残ったのは、主人公が鼻水を垂らしながら熱演していた場面。2回ありました。このシーンは必見です。

 映画を観ながら、昔の自分の姿が思い起こされました。中学から高校にかけて、私は赤面症(あがり症)でした。授業中に指名されると、みんなの視線が自分に向けられていると思うが早いか、顔が真っ赤になるのです。
 先生の質問の意味も、答えもわかります。しかし、どうしても言葉が出なくなるのです。そして、「わかりません」と言って、そそくさと椅子に座って逃げていました。

 中学の頃には生徒会の代表をしたり、高校では学生運動の会場で演説をしたりと、大勢の前では話せました。それが、教室ではまったくダメだったのです。

 18歳で高校を卒業してすぐ、東京で新聞配達をしていて配り終えた直後に、突然に十二指腸が破れて意識を失いました。神経を擦り減らす日々の中で、自分の胃液が自分の内臓を溶かしていたのです。
 主治医から「無責任に生きなさい」という助言をいただきました。以来、喋りすぎだと言われるほどに、よく喋って生きて来ました。負い目というか、引け目というか、コンプレックスの一種には、若い時によく悩まされたものです。そんな自分がかつていたことを、今は誰も信じてくれそうにありませんが。

 映画の中でギターを弾いて歌うシーンを観て、自分もかつてはそうだったと思い、自宅に帰ってすぐに未整理の段ボール箱からこんな写真を探し出しました。17歳の春のワンショットです。テニスとギターと写真に明け暮れた日々の思い出です。この写真も、二十歳の時に住み込みの新聞配達店が火事になり、持ち物のすべてを無くした私にとって、数枚しかない貴重な写真です。

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 監督の湯浅氏には失礼ながら、予想外にいい映画だったので、原作の漫画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(押見修造、太田出版、2013年1月、2017年12月 第12刷)を買いました。

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 帰りの電車の中で一気に読みました。鼻水の場面はありませんでした。漫画の軽さが、映画ではしっかりと物語に仕上がっていました。

 この映画は、風景がきれいです。光を巧みに取り込んだ映像は、若者たちの爽やかさを引き立てています。背景が過去に引き込むのではなく、明日へと向かう若者を後押しする明るさがあります。主人公が抱え込むコンプレックスから産み出される暗さや深刻さを、風景が、背景がうまく相対化して前へと照らし出しています。

 この映画はお薦めです。

 チラシを紹介します。

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posted by genjiito at 18:38| Comment(0) | *回想追憶

2018年07月20日

「コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録」がリニューアル(その1)

 「コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録」のトップページがリニューアルしました。

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 このデータベースは、ケンブリッジ大学のピーター・コーニツキー先生と私が、コツコツと16年を費やして構築して来たものです。昨春の私の退職に伴い手元を離れてから、その後の運用が気になっていました。それが、このたび爽やかに模様替えをしたのです。後を継いでくださった、国文学研究資料館の海野圭介先生のご高配によるものです。

 久しぶりにこのデータベースを拝見し、成長した我が子に再会した思いでいます。その存在意義が変わらずに認められ、こうして手をかけていただき、よりよいものに成長していることは、長年運用に関わった者としては嬉しい限りです。
 このデータベースについて、その構築の経緯が不明になる前に、私が語れる範囲ではあるものの、思いつくままに記し残しておきます。

 このプロジェクトのスタートは、私が1999年4月に、大阪明浄女子短期大学から国文学研究資料館に転任して早々に遡ります。昨春2017年4月より国文学研究資料館の館長になられたロバート・キャンベル先生が、当初の始発期に、このプロジェクトに関わっておられました。当時、情報処理担当だった北村啓子先生の協力を得て、ケンブリッジ大学のピーター・コーニツキー先生が収集なさっていた欧州に散在する国書のデータをどう整理するかを検討なさっていたのです。それは、手書きのカードをどのようにしてコンピュータに入力し、データベース化するか、というテーマでした。

 コーニツキー先生は、アップルのマッキントッシュのコンピュータをお使いでした。日本語を扱う場合に、この選択肢しかなかったのです。そして、データを蓄積するために、「ファイルメーカー」というデータベースソフトを利用して、ご自分で1枚1枚のカードを入力なさっていたのです。その過程でさまざまな問題が出来し、その解決に時間がかかったために、共同作業が途切れがちだったようです。
 そんな時、当時の国文学研究資料館の館長だった松野陽一先生が、コンピュータを活用した『源氏物語』のデータベース化に取り組む中で『源氏物語別本集成』などの顕著な成果をあげていた私に、この問題に当たるようにという館長命令が下りました。
 私は早速、コーニツキー先生にサンプルデータを送っていただき、課題実現に向けて検討を始めました。幸いなことに、私もマッキントッシュと「ファイルメーカー」を使っていました。

 そして、2001年2月に、安永尚志先生の下で取り組んでいた科研費による研究「国文学デジタル資料館システムの国際共同構築と利用に関する研究」のテーマのもと、ロンドン大学・大英博物館・大英図書館・オックスフォード大学・デモントフォート大学へ2週間の調査研究に行くことになりました。その途次、ケンブリッジ大学にも足を留め、コーニツキー先生と懸案のデータベースについて打ち合わせをする機会が得られました。「コーニツキー版欧州所在日本古書総合目録」が今の姿になるにあたっては、国文学研究資料館の安永尚志先生のご理解があって実現したものであることを明記しておきます。

 帰国後、以下の報告書を松野館長に提出しました。

Kornicki氏の『欧州所在日本古書総合目録』について メモ(01.5.10/伊藤)
(Union Catalogue of Early Japanese Books in Europe)

1)ネットワーク対応のデータベースとして、国文研のサイトから公開する。
2)当面は、国文研のホームページから、インターネットを活用した利用に供する。
3)サンプルデータしか受け取っていないので、可能な限りのデータを揃える。
4)そのために、現在Kornicki氏のもとにあるデータの現状を調査確認する必要がある。
5)データの書式を、Kornicki氏と検討し確定する。
  A)項目は「日本古典資料調査データベース」と整合性を保つ。
  B)未記入項目は、今後の共同調査研究で補完していく。
6)コンピュータに未入力のデータに関する作業について、Kornicki氏と細目を話し合う。
7)上記4)5)6)を踏まえて、データ入力を国文研が支援するにあたっての作業手順案。
  A)Kornicki氏の調査カードのコピーを受け取り、可能な限り国文研で入力する。
   (但し、入力資料作成と入力作業に関わる謝金の問題がある。)
  B)判読不明箇所を含めて、Kornicki氏に校正をしていただく。
  C)双方で検証ずみのデータを、順次インターネット上に公開していく。
8)ネットワーク対応の検索表示システムのデザイン等について、Kornicki氏と検討し確定する。
  A)暫定版ではあるが、表示検索システムは完成している(01.5.10現在Ver1.0−別紙参照)。
  B)これをもとにして、今後は正式版に仕上げていく(但し、システム開発経費の問題がある)。
9)上記4)5)6)7)8)のステップを、近日中にKornicki氏と打ち合わせる必要がある。
10)公開にあたっては、情報システム委員会による承認を得る。


 この後、すぐに本件をさらに詰めるようにとの松野館長からの指示を受け、コーニツキー先生に次のFAXを送りました。まだ、海外との電子メールは一般的ではなかった時代のことです。

Kornicki 先生

                         2001.5.15

To: Cambridge Univ.
 Dr. Peter Kornicki

                      国文学研究資料館
                         伊藤 鉄也



ご無沙汰しています。
お変わりなく、ご活躍のことと拝察いたします。
先般の訪英の折には、ご多忙中のところを、いろいろとお世話になりました。
スーパーでの買い物や、おいしかった手作りカレーが忘れられません。
スパイスを控えてくださったので、私にはちょうどよい味付けでした。

さて、Kornicki先生の『欧州所在日本古書総合目録』について、国文学研究資料館として正式に公開することを原則にして、館内の各部署との打ち合わせを重ねてきました。国立の機関ということに加え、直前に控えた独立行政法人化や従来の調査カードのデータベース化(「日本古典資料調査データベース」)などのからみで、とりまとめに少し手間取り、連絡が遅くなりました。申し訳ありません。
以下は、館長に提示して了解を得た範囲での私案です。
ご検討の程を、お願いいたします。

(上記、館長への報告書の部分は省略)

 今月22日に、国文研内部で上記内容に関連してのミーティングがあります。その結果によって、5−A)について方向が見えてきます。
 そうしたことを踏まえて、再度私が先生の研究室へ伺い、詳細な打ち合わせをしたいと考えています。その際、私自身もデータ入力を実際に行い、日本で担当する入力上の要点や注意点を、先生から直接お教えいただきたいと思っています。
先生のもとへお伺いできるのは、具体的には、6月の中旬以降になるかと思います。
その頃の先生のご予定などをお知らせいただければ幸いです。
ようやく、本格的に先生のデータベースが動き出す段取りとなりました。
すばらしいものに仕上げていくために、可能な限りお手伝いいたします。
今後とも、よろしくお願いいたします。


 これに対するコーニツキー先生からの返信FAXを踏まえて、以下のFAXを送りました。

Kornicki 先生

                         2001.5.24

To: Cambridge Univ.
 Dr. Peter Kornicki

                      国文学研究資料館
                         伊藤 鉄也

拝啓 お返事を拝読いたしました。
松野館長とも相談し、打ち合わせはできるだけ早い方がいいだろうということで、6月11日から20日までの期間、私がケンブリッジへ行く方向で話を進めています。
この機会に、別件の調査もする予定です。
先生の研究室へは、私が数日通えば、目的は達するのではと考えています。
Kornicki先生のご都合はいかがでしょうか。
実際には、以下の細かな打ち合わせがあります。
 ・国文学研究資料館で入力することについて。
 ・国文研の「日本古典資料調査データベース」と整合性を考えた書誌項目について。
  (6月5日に、国文学研究資料館が収集した調査カードのデータベース化の会議があり、その結果を踏まえてのご相談となります。)
 ・その他、もろもろのこと。
すばらしいお仕事である『欧州所在日本古書総合目録』の公開について、できる限りの協力をしたいと思っています。
取り急ぎ、先生の日程について、お伺いいたします。 敬具


 さらに、次のように具体的な展開となりました。ここには、その後、私のもとで大きく展開する、海外の日本文学研究の情報整理というテーマも動き出したことがわかります。

Kornicki 先生

                                   2001.5.30

To: Cambridge Univ.
 Dr. Peter Kornicki

                                国文学研究資料館
                                   伊藤 鉄也

冠省 お返事をありがとうございました。
早速、訪問予定を作ってみました。

2001.6.10 Sunday 東京〜大阪大学 大阪(泊)
※大阪大学伊井春樹先生と別件海外調査の打ち合わせ
2001.6.11 Monday 関空(11:55)〜London(16:15)London(泊)
2001.6.12 Tuesday London〜Cambridge大学 Cambridge(泊)
2001.6.13 Wednesday Cambridge大学 Cambridge(泊)
2001.6.14 Thursday Cambridge大学 Cambridge(泊)
2001.6.15 Friday London大学 London(泊)
2001.6.16 Saturday London大学 London(泊)
2001.6.17 Sunday 大英博物館 London(21:10)〜
2001.6.18 Monday 〜成田(16:50)

一応、ロンドン3泊、ケンブリッジ3泊で考えています。
飛行機の手配は終えました。
ただし、一つだけ困った問題が発生しました。
ケンブリッジでのホテルが、日本円払いのクーポン利用の予約が取れないのです。国文学研究資料館出入りのツーリストにいつもお願いしているのですが、この日はかなり混んでいるそうです。何か行事があるのでしょうか、そのような時期なのでしょうか。
そこで、まことに申し訳ございませんが、Kornicki先生がご存じの範囲で結構です。先生の研究室に近いところで、適当な宿泊施設をご存知でしたら、お教えいただけませんでしょうか。日本でいえば、大学のゲストハウスとかB&Bでもあれば、と思っています。
お手数をおかけすることになり恐縮ですが、よろしくお願いします。
なお、6月5日に、これまで国文学研究資料館が収集した調査カードのデータベース化の会議があります。その結果は、出発日までにFAXにてご報告できると思います。
また、上記日程の大阪大学云々の件は、今年度から科学研究費補助金で始める「外国語による日本文学研究文献のデータベース化に関する予備調査」をロンドン大学から始めるものです。ケンブリッジ大学も対象としていますので、今回はKornicki先生にこの件でいろいろとお尋ねすることになるかと思います。
研究代表者が私で、私の恩師である大阪大学の伊井春樹先生と国文学研究資料館の鈴木淳先生(大学時代の先輩)が研究協力者となっています。
英語が苦手な私のすることですが、よき協力者を得て実りあるものに育てていきたいと思います。
ご参考までに、その目的と計画の一部を認めておきます。

(研究の目的)
 国文学研究は、日本語による成果の発表のみならず、多言語による理解がなされる時代となった。外国語で発表された日本文学関連の研究成果を収集・整理することは、緊急を要する課題である。ところが、基礎情報であるはずの日本文学研究文献リストが、現状では海外分が大きく欠落している。そこで、世界各国において日本語以外で公表される日本文学研究論文の実態調査を行うこととなった。
 まず、関連情報をデータベースとして蓄積する。ただし、コンピュータが扱える字体の問題から、今回は英語による研究論文に限定した。
 本課題で収集する情報群は、世界各国のさまざまな分野における日本文学の本質理解への一助となり、国内の研究にも多面的な刺激を与えるものとなるはずである。
(本年度の研究実施計画)
 本課題の対象は、英語によって公表された日本文学に関する研究論文に限定している。初年度は、配分経費から、その調査範囲と対象情報の所在を勘案して、イギリスのオックスフォード大学・ケンブリッジ大学・ロンドン大学を中心とした調査・収集を行う。
 その収集対象は、1)学位論文 2)大学等紀要 3)学会・学術誌 4)インターネット などである。
 これらを、現地踏査および照会によって情報収集し、データベースの対象となる情報取得物および情報提供先のリストを作成する。
 また、データシートの事項となる下記の各項目に、実際にサンプル取得した情報を入力する。
 【通番号】【種類】【単共著】【発行年】【著書名・論文名】【著者・編者】【発行所・誌名・巻・号】【キーワード 日本語・英語】【日本語訳の有無】【概要】【備考】
 これによって、完成度の高い情報収集のためのマニュアル作りと、公開に当たっての必須情報の確定を行う。
 この予備調査は、積年型のデータベースの基本設計となるものである。収集した情報は、リアルタイムにインターネットで公開し、多方面からの情報提供を促進する。また、データ集積にあたっては、「コラボレーションによる更新」にもチャレンジしていきたい。

このテーマについては、6月から私の方で集めてみた海外の研究論文について、アルバイトで来てもらう米国コロンピア大学大学院生に、データーシート作りを手伝ってもらうことになっています。あくまでも、これから2年間の予備調査です。Kornicki先生のご意見も伺いながら、先生の『欧州所在日本古書総合目録』のようなすばらしいものを目指してスタートしたいと思っています。
取り急ぎ、まとめました。ご判読のほどを、そしてご高配をお願いいたします。 早々


 この件はその後も順調に推移し、再度渡英することで、コーニツキー先生と話を詰めることが決まりました。

Kornicki 先生

                                  2001.6.5

To: Cambridge Univ.
 Dr. Peter Kornicki

                                国文学研究資料館
                                   伊藤 鉄也

冠省 お返事を拝受いたしました。
B&Bの予約の件、ありがとうございます。助かりました。
6月12日(火)の午後1時に、前回同様の経路で先生の研究室に伺うことにします。
それでよろしいでしょうか。
私の方は、ノートパソコンを一台持参いたします。
データの入力などに使おうと思っています。
本日の会議で、「日本古書籍台帳」を構築し、その電子情報の公開に関して話し合いました。
Kornicki先生のデータベースについても、考慮されたものとなりました。
私としては、まずは先生のものを発信する件のお手伝いに専念したいと思います。
詳細は、来週お目にかかってからお話しいたします。
よろしくお願いいたします。 草々


 無事にケンブリッジでコーニツキー先生と打ち合わせを終えました。そして、帰国後にデータベースの骨格を整理したデータシートが、以下のものです。

180720_data1.jpg

 また、ケンブリッジ大学でコーニツキー先生が見せてくださった「欧州所在日本古書総合目録」の概要文と所蔵機関一覧は、以下のものでした。草創期の記録として、以下に引用しておきます。

本プロジェクトは1988年(昭和63)にイギリス北部のダラム市で行われたヨーロッパ日本研究協会の会議で、林望及びピーター・コーニツキーにより発足されたものです。それ以来、リーバーヒューム基金、故反町茂雄氏、ケンブリッジ大学などの援助を受けてきましたので、ここで記して、感謝の意を表わしたい。

欧州所在日本古書総合目録プロジェクトは林・コーニツキーに企画された。助手としては、山口謡治君が四年間、主にパリ、ベルギーの各コレクションを調査し、またコーニツキーと一緒にストックホルム、ベルリン、ナポリ、ローマのそれぞれのコレクションも調査した。大英図書館およびオックスフォード大学付属ボドレアン図書館のコレクションは林が担当した。その他のコレクションはコーニツキーが調査に当たった。オランダ、ドイツの場合、ベルリンおよびハレのコレクション以外、既に刊行されているケーレン氏およびクラフト氏が作成した目録を頼りにした。入力は2001年までは、コーニツキーが担当した。

末尾ながら、プラハの故リブセ・ボハチコヴァ氏、ロンドンの故ケネス・ガードナー氏、故反町茂雄氏、アレクサンドル・カバノフ氏、ヴァル・ハミルトン氏、ヒロコ・マックダーモット氏、小山謄氏をはじめ、数多くの司書の方々などに色々とお世話になったので、心からおれいを申し上げる次第です。

UNION CATALOGUE OF EARLY JAPANESE BOOKS IN EUROPE

This project was launched by Peter Kornicki and Hayashi Nozomu in 1988 following the triennial conference of the European Association for Japanese Studies held at Durham in the north of England. It has received the generous support of the Leverhulme Trust, the late Mr Sorimachi Shigeo, the Japan Foundation Endowment Committee, the Faculty of Oriental Studies at the University of Cambridge and Robinson College, Cambridge.

The project was formulated by Kornicki and Hayashi. Mr Yamaguchi Yoji was employed as a research assistant for four years and worked mainly on the collections in Paris and Belgium, although he also assisted Kornicki with the collections in Stockholm, Berlin, Naples and Rome. Hayashi covered the collections in the British Library and the Bodleian Library, Oxford, and all the remaining collections were covered by Kornicki. Some collections have not been examined personally, mainly the collections in Germany (except Berlin and Halle) and the Netherlands; in these cases users of the Union Catalogue should refer to the published catalogues for further information. The inputting has been done by Kornicki in Cambridge.

Many individuals have lent their assistance and support including the late Dr Libuse Bohackova, the late Ken Gardner, the late Mr Sorimachi, Aleksandr Kabanov, Val Hamilton, Hiroko McDermott, Noboru Koyama and countless librarians all over Europe. To them all I express here my hearfelt thanks.


凡例 EXPLANATION

書名
原則として内題を取る。内題がない場合、書名の根拠を明記する。
(例)古今画薮 (封面題)

平仮名書名
上記の書名を平仮名で表記する。

Title
The title (usually internal title). Macrons have been omitted owing to internet intolerance of non-standard diacritics. This applies also to authors` names, below.

見よ See
外題等が内題と違う場合、別な項目を作り、書名を外題等にして、この欄に内題をあげる。
In cases where a book is known by several different titles, here there is a cross-reference to the main title used in this catalogue, to which users should refer.

所蔵機関・登録番号
所蔵機関および国の略号は「所蔵機関名覧」を見よ。

巻数

大きさ・冊数

著者・編者・画者

Author, editor, illustrator

種類
写本・整版・古活字版・近世木活字版の別

刊修印写年
『内閣文庫国書分類目録』の方式に従う。

蔵版者

版元・発行者

外題等
外題・目録題・版心題・序題等が内題と違う場合、この欄にあげる。

奥附
(奥附書肆)は裏表紙見返しのこと。(刊記書肆)はその他のこと。

蔵版目録等

蔵書印

識語

参考
『国書総目録』・『古典籍総合目録』・『和刻本漢籍分類目録』・『内閣文庫国書分類目録』および該当コレクションの目録(略号は「参考文献」を見よ。)。
『国書総目録』4.562.3とは第4巻、562頁、3欄を差す。

注記
刊年・版元等の根拠。
(例)刊年は『黄表紙総覧』による。

分類
『国書総目録』による分類。和刻本漢籍・韓籍の場合、ただ「漢籍」「韓籍」とする。

その他
(例)墨朱書入(主として本書に就て批評を加う)。
(例)元禄14年刊記の書肆名「茨城多左衛門」刪去。
所蔵機関名一覧



LIST OF LIBRARIES AND OTHER INSTITUTIONS COVERED BY THE UNION CATALOGUE

A Austria Osterreich オーストリア
B Belgium Belgie/Belgique ベルギー
CH Switzerland Suisse/Schweiz スイス
CS Czech Republic Ceskoslovensko チェコスロバキア
D Germany Deutschland ドイツ
DK Denmark Danmark デンマーク
E Spain Espana スペイン
F France France フランス
GR Greece Hellas ギリシャ
GB Great Britain Great Britain イギリス
H Hungary Magyarorszag ハンガリー
I Italy Italia イタリア
IL Israel Israel イスラエル
IRL Ireland Eire アイルランド
N Norway Norge ノルウェー
NL Netherlands Nederlanden オランダ
P Portugal Portugal ポルトガル
PL Poland Polska ポーランド
R Russia Rossiia ロシア
S Sweden Sverige スウェーデン
V Vatican Citta del Vaticano バチカン


AUSTRIA , OSTERREICH, オーストリア
A/IJ Institut fur Japanologie, Universitat Wien
Institute for Japanology, University of Vienna
ウィーン大学日本学研究所(ウィーン)
A/OM Osterreichisches Museum fur angewandte Kunst
Austrian Museum for Applied Art
オーストリア国立工芸美術館(ウィーン)
A/ON Osterreichische Nationalbibliothek
National Library of Austria
オーストリア国立図書館(ウィーン)
BELGIUM, BELGIE , BELGIQUE, ベルギー
B/BRA Bibliotheque Royale Albert Ier
Royal Library of Albert I
アルベル一世王立図書館(ブリュッセル)
B/MAH Musees Royaux dユArt et dユHistoire
Royal Museum of Art and History
王立美術歴史博物館(ブリュッセル)
B/PC Private Collections 個人蔵
B/UCL Universite Catholique de Louvain, Bibliotheque
Catholic University of Louvain Library
ルーヴァン・カトリック大学付属図書館(ルーヴァン)
SWITZERLAND, SCHWEIZER, SUISSE, SVIZZERA
スイス
CH/CB Collections Baur
Baur Collection
バール・コレクション(ジュネーブ)
CH/UZ Ostasiatisches Seminar der Universitat Zurich
East Asian Department, University of Zurich
チューリヒ大学東洋学部(チューリヒ)
CZECH REPUBLIC
チェッコ共和国
CS/NM Naprstkovo Muzeum, Praha
Naprstek Museum
ナールプステック博物館(プラハ)
CS/NG Narodni galerie v Praze
National Gallery
国立美術館(プラハ)
GERMANY, DEUTSCHLAND, ドイツ
D/BSB Bayerische Staatsbibliothek, Munchen
Bavarian State Library, Munich
バイエルン州立図書館(ミュンヘン)
D/DMG Bibliothek der Deutscher Morgenlandischen Gesellschaft
Library of the German Oriental Society
ドイツ東洋学会(ハレ)
D/DMM Deutsches Museum Munchen
German Museum Munich
ミュンヘン・ドイツ博物館(ミュンヘン)
D/FMK Museum fur Kunsthandwerk, Frankfurt
Handicrafts Museum, Frankfurt
工芸美術館(フランクフルト)
D/FUJ Japanisches Seminar der Universitat Frankfurt
Japanese department, University of Frankfurt
フランクフルト大学日本学科(フランクフルト)
D/GMM Gutenberg-Museum, Mainz
Gutenberg Museum, Mainz
グーテンベルヒ博物館(マインツ)
D/HMV Hamburgisches Museum fur Volkerkunde
Ethnological Museum, Hamburg
民族博物館(ハンブルク)
D/JUB Japanisches Seminar der Universitat Bonn
Japanese department, University of Bonn
ボン大学日本学科(ボン)
D/KBB Kunstbibliothek, Berlin
Art Library, Berlin
芸術図書館(ベルリン)
D/KHB Kunsthalle Bremen
Art Gallery, Bremen
美術館(ブレーメン)
D/KK Kupferstichkabinett, Dresden
Cabinet of Prints, Dresden
版画美術館(ドレスデン)
D/LKB Lipperheidesche Kostumbibliothek
Library of ethnography and the history of costume
民族衣装図書館(ベルリン)
D/LMS Linden-Museum Stuttgart
Linden Museum, Stuttgart
リンデン博物館(シュツットガルト)
D/MKB Museum fur Ostasiatische Kunst, Berlin
Museum of East Asian Art, Berlin
国立東洋美術館(ベルリン)
D/MKH Museum fur Kunst und Gewerbe, Hamburg
Museum for Arts and Crafts, Hamburg
工芸美術館(ハンブルク)
D/MKK Museum fur Ostasiatische Kunst Koln
Museum for East Asian Art, Cologne
東洋美術館(ケルン)
D/MVB Museum fur Volkerkunde Berlin
Museum of Ethnology, Berlin
民族博物館(ベルリン)
D/PC Private Collections 個人蔵
D/PTM Puppentheatermuseum (Munchner Stadtmuseum)
Theatre Museum, Munich
人形芝居博物館(ミュンヘン)
D/RMM Reiss-Museum, Mannheim
Reiss Museum, Mannheim
ライス博物館(マンハイム)
D/RUB Ruhr-Universitat Bochum
University of the Ruhr, Bochum
ルウル大学(ボッフム)
D/SBB Staatsbibliothek Preussischer Kulturbesitz Berlin
State Library, Prussian Cultural Foundation
国立図書館(ベルリン)
D/SCB Schloss Charlottenburg
Charlottenburg Castle
シャーロッテンブルグ城(ベルリン)
D/SMV Staatliches Museum fur Volkerkunde, Munchen
State Ethnological Museum, Munich
州立民族博物館(ミュンヘン)
D/UBH Universitatsbibliothek Halle
Halle University Library
ハレ大学付属図書館(ハレ)
D/UBM Universitatsbibliothek Munchen
Munich University Library
ミュンヘン大学付属図書館(ミュンヘン)
D/UMB Ubersee-Museum Bremen
Ethnographic Museum, Bremen
民族博物館(ブレーメン)
DENMARK, DANMARK, デンマーク
DK/KB Det kongelige Bibliothek
The Royal Library
王立図書館(コペンハーゲン)
DK/KI Kunstindustrimuseet
Museum of Decorative Art
産業技術博物館(コペンハーゲン)
DK/NM Nationalmuseet
The National Museum of Denmark
国立博物館(コペンハーゲン)
FRANCE, フランス
F/BAA Bibliotheque dユArt et dユArcheologie
Library of Art and Archeaology
美術考古学図書館(パリ)
F/BAM Bibliotheque Asiatique des Missions Etrangeres
Asiatic Library of the Foreign Missions
海外宣教団東洋図書館(パリ)
F/BMJ Bibliotheque de la Maison du Japon, Cite Universitaire
Library of the ヤMaison du Japonユ, City University
パリ大学都市日本館図書室(パリ)
F/BML Bibliotheque Municipale de Lille
Lille Municipal Library
リル市立図書館(リル)
F/BN Bibliotheque Nationale, Paris
National Library
国立図書館(パリ)
F/ELO Bibliotheque de lユEcole Des Langues Orientales
Library of the School of Oriental Languages
東洋語学学校付属図書館(パリ)
F/MAD Musee des Arts Decoratifs
Museum of Decorative Arts
工芸美術館(パリ)
F/MBA Musee des Beaux-Arts, Arras
Museum of Fine Arts
アラ市美術博物館(アラ)
F/MC Musee Cernuschi
Cernuschi Museum
チェルヌーシ博物館(パリ)
F/MCM Musee Claude Monet, Giverny
Monet Museum, Giverny
モネ博物館(ジュベルニ)
F/MG Musee Guimet (Musee National des Arts Asiatiques)
Guimet Museum of Asiatic Art, Paris
ギメ東洋博物館(パリ)
F/MGM Musee Gustave-Moreau
Gustave Moreau Museum, Paris
グスタフ・モロ博物館(パリ)
F/ML Musee Lansyer
Lansyer Museum, Loches (Indre-et-Loire)
ランシエ博物(ロッシュ)
F/MOB Musee dユOrbigny-Bernon, La Rochelle
Orbigny-Bernon Museum, La Rochelle
オービニー・ベーノン博物館(ラ・ロシェル)
F/MR Musee Rodin
Rodin Museum
ロダン美術館(パリ)
F/PC Private Collections 個人蔵
GREAT BRITAIN, 英国
GB/AM Ashmolean Museum, Oxford
アッシュモレアン博物館(オックスフォード)
GB/BL British Library, London
大英図書館(ロンドン)
GB/BLL Brotherton Library, University of Leeds
リーズ大学付属ブラザートン図書館(リーズ)
GB/BM British Museum, London
大英博物館(ロンドン)
GB/BMA Blackburn Museum and Art Gallery
ブラックバーン市立博物館および美術館(ブラックバーン)
GB/BOD Bodleian Japanese Library, Oxford
ボドレアン図書館(オックスフォード)
GB/BRL Birmingham Reference Library
バーミンガム市立参考図書館(バーミンガム)
GB/CFM Fitzwilliam Museum, Cambridge
フィッツウイリアム博物館(ケンブリッジ)
GB/CSJ St Johnユs College, Cambridge
セント・ジョンズ・カレッジ(ケンブリッジ)
GB/CSS Sidney Sussex College, Cambridge
シドニー・サセックス・カレッジ(ケンブリッジ)
GB/CUL Cambridge University Library
ケンブリッジ大学付属図書館(ケンブリッジ)
GB/ECL Eton College Library
イートン・カレッジ付属図書館(ウインザー)
GB/GSA Glasgow School of Art
グラスゴー美術学校(グラスゴー)
GB/JRM John Rylands University Library of Manchester
マンチェスター大学付属ジョン・ライランズ図書館(マンチェスター)
GB/LSL Linnaean Society Library, London
リンネー会図書館(ロンドン)
GB/MLG The Mitchell Library, Glasgow
ミチェル図書館(グラスゴー)
GB/MMA Maidstone Museum and Art Gallery
メイドストーン市立博物館および美術館(メイドストーン)
GB/NLS National Library of Scotland
スコットランド国立図書館(エジンバラ)
GB/NRI Needham Research Institute, Cambridge
東洋科学史図書館(ケンブリッジ)
GB/OI Oriental Institute Library, Oxford
オックスフォード大学東洋研究所図書館(オックスフォード)
GB/OM The Oriental Museum, Durham
ダラム東洋博物館(ダラム)
GB/PC Private Collections 個人蔵
GB/RA Royal Armouries, Tower of London
ロンドン塔内王立兵器庫(ロンドン)
GB/RAS Royal Astronomical Society, London
王立天文学会(ロンドン)
GB/RBG Royal Botanic Gardens, Kew
王立植物園(ロンドン)
GB/RMS The Royal Museum of Scotland
スコットランド王立博物館(エジンバラ)
GB/RL The Royal Library
王室図書館(ウインザー)
GB/ROE The Royal Observatory, Edinburgh
エジンバラ王立天文所(エジンバラ)
GB/SOAS School of Oriental and African Studies, London
ロンドン大学東洋アフリカ校(ロンドン)
GB/UBL University of Bristol Library
ブリストル大学付属図書館(ブリストル)
GB/VA Victoria and Albert Museum, London
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(ロンドン)
GB/WAG Whitworth Art Gallery, Manchester
ウイットワース美術館(マンチェスター)
GB/WI Wellcome Institute for the History of Medicine, London
ウエルコム医学史研究所(ロンドン)
GREECE, ギリシャ
GR/SJM Sino-Japanese Museum, Kerkyra, Corfu
中国・日本博物館(コルフ)
HUNGARY, MAGYARORSZAG, ハンガリー
H/HF Hopp Ferenc Keletazsiai Muveszeti Muzeum, Budapest
The Hopp Ferenc Museum of Applied Arts
ホップ・フェレンク工芸美術館(ブダペスト)
ITALY, ITALIA, イタリア
I/BAL Biblioteca della Accademia Nazionale dei Lincei, Roma
Library of the National Academy of Lincei, Rome
国立リンチェイ学会図書館(ローマ)
I/BNR Biblioteca Nazionale Centrale Vittorio Emanuele II, Roma
Vittorio Emanuele II National Library, Rome
ヴィットリオ・エマヌエレ二世国立中央図書館(ローマ)
I/BNV Biblioteca Nazionale Marciana, Venezia previously I/BNM
Marciana National Library, Venice
マルチアナ国立図書館(ベネチア)
I/BNN Biblioteca Nazionale Vittorio Emanuele III, Napoli
Vittorio Emanuele III National Library, Naples
ヴィットリオ・エマヌエレ三世国立図書館(ナポリ)
I/BUF Biblioteca, Facolta di Lettere e Filosofia dellユUniversita degli Studi di Firenze
Library, Faculty of Letters and Philosophy, University of Florence
フィレンツェ大学文学・哲学部付属図書館(フィレンツェ)
I/CG Compagnia de Gesu
Society of Jesus
ヤソ会図書館(ローマ)
I/MAO Museo dユArte Orientale Edoardo Chiossone, Genova
Eduard Chiossone Museum of Oriental Art, Genoa
キヨッソーネ東洋美術館(ジェノヴァ)
I/PC Private Collection
I/SGI Societa Geografica Italiana
Italian Geographical Society
イタリア地理学会(ローマ)
IRELAND, EIRE, アイルランド
IRL/CBL Chester Beatty Library, Dublin
チェスター・ビーティー図書館(ダブリン)
IRL/TCL Trinity College Library, Dublin
トリニッチー・カレッジ付属図書館(ダブリン)
ISRAEL, イスラエル
IL/JNU The Jewish National and University Library
ユダイヤ国立および大学図書館(エルサレム)
NORWAY, NORGE, ノルウェー
N/UO Universitetsbiblioteket i Oslo
The University Library, Oslo
オスロー大学付属図書館(オスロー)
NETHERLANDS, NEDERLANDE, オランダ
NL/BRL Bibliotheek der Rijksuniversiteit te Leiden
University of Leiden Library
ライデン大学付属図書館(ライデン)
NL/GMS Groninger Museum voor Stad en Lande
Groningen Museum
グローニンゲン博物館(グローニンゲン)
NL/OBA Stichting Openbare Biblioteken Amsterdam
Public Library, Amsterdam
アムステルダム公立図書館(アムステルダム)
NL/RMA Rijksmuseum Amsterdam
National Museum, Amsterdam
国立博物館(アムステルダム)
NL/RVL Rijksmuseum voor Volkenkunde, Leiden
National Ethnographic Museum, Leiden
国立民族博物館(ライデン)
NL/SM Scheepvaart Museum
Maritime Museum, Amsterdam
海洋博物館(アムステルダム)
NL/UA Universiteitsbibliotheek van Amsterdam
University of Amsterdam Library
アムステルダム大学付属図書館(アムステルダム)
NL/VUA Vrije Universiteit Amsterdam, Bibliotheek
Amsterdam Free University Library
アムステルダム自由大学付属図書館(アムステルダム)
PORTUGAL, ポルトガル
P/MCG Museu Calouste Gulbenkian, Lisbon
Calouste Gulbenkian Museum, Lisbon
カルースト・グルベンキアン博物館(リスボン)
POLAND, POLSKA, ポーランド
PL/BJ Biblioteka Jagiellonska, Krakow
Jagiellonian Library, Krakow
ヤギエロン図書館(クラクーフ)
PL/KBC Biblioteka Czartoryskich, Krakow
The Czartoryski Library
チャルトリスキー家図書館(クラクーフ)
PL/KZC Zbiory Czartoryskich, Krakow
Czartoryski Collections, Krakow
チャルトリスキー・コレクション(クラクーフ)
PL/MN Muzeum Narodowe w Warszawie, Warsaw
National Museum, Warsaw
国立博物館(ワルシャワ)
PL/MNK Muzeum Narodowe w Krakowie
The National Museum, Krakow
クラクーフ国立博物館(クラクーフ)
PL/MNP Muzeum Narodowe w Poznaniu
The National Museum, Poznan
ポズナニ国立博物館(ポズナニ)
PL/UW Uniwersytet Warszawski
University of Warsaw
ワルシャワ大学日本学科図書室(ワルシャワ)
RUSSIA, ロシア
R/IV Institut Vostokovedenia
Institute of Oriental Studies
東洋研究所(サンクト・ペテルブルグ)
R/MOA Gosudarstvennyi muzei Vostoka
The State Museum of Oriental Art
国立東洋美術館(モスクワ)
R/NBR Natsionalnaya Biblioteka Rossii
National Library of Russia
ロシア国立図書館(サンクト・ペテルブルグ)
R/PM Gosudarstvennyi muzei izobrazitelユnych iskusstv imeni A. S. Pushkina
Pushkin State Museum of Fine Arts
プーシキン国立美術館(モスクワ)
R/RSL Rossiyskaya Gosudarstvennaya Biblioteka
Russian State Library
ロシア国立図書館(モスクワ)付属
R/SPU Sankt-Peterburgskii Universitet, Biblioteka
St Petersburg University Library
サンクト・ペテルブルグ大学付属図書館(サンクト・ペテルブルグ)
SWEDEN, SVERIGE, スェーデン
S/GUB Goteborgs Universitetsbiblioteket
Gothenburg University Library
エーテボリ大学付属図書館(エーテボリ)
S/OB Ostasiatiska Biblioteket, Stockholm
East Asian Library
東洋図書館(ストックホルム)
S/RKM Rohsska Konstslojdmuseet
The Rohssユ Museum of Arts and Crafts
ロース工芸美術館(エーテボリ)
S/UUB Universitetsbiblioteket, Uppsala
Uppsala University Library
ウップサラ大学付属図書館(ウップサラ)
VATICAN, Citt・del Vaticano, バチカン
V/BAV Biblioteca Apostolica Vaticana
バチカン図書館(バチカン)


 この素案は、公開時には次のように改訂しました。中盤以降に、国文学研究資料館がデータの入力をお手伝いし、その担当者が私であることが追記されたものとなっています。
 今回のリニューアル版の末尾に「(2011年11月)」とあるのは、このデータベースが国文学研究資料館の内部で認知され、正式な公開データベースとなって公開されて以降のことを記したものだと思われます。

欧州所在日本古書総合目録について


 本プロジェクトは、1988年(昭和63年)にイギリス北部のダラム市で行われたヨーロッパ日本研究協会の会議の席上、林望とピーター・コーニツキーによって発足されました。それ以来、リーバーヒューム基金、故反町茂雄氏、ケンブリッジ大学などの援助を受けてきました。記して感謝の意を表します。
 欧州所在日本古書総合目録プロジェクトは、林・コーニツキーによって企画されました。助手として山口謡司が4年間、主にパリ、ベルギーの各コレクションを調査し、また、コーニツキーとともにストックホルム、ベルリン、ナポリ、ローマのそれぞれのコレクションも調査しました。大英図書館およびオックスフォード大学附属ボドリアン図書館のコレクションは、林が担当しました。その他のコレクションはコーニツキーが調査に当たりました。オランダ、ドイツの場合、ベルリンおよびハレのコレクション以外は、既に刊行されているケーレン氏およびクラフト氏が作成した目録を頼りにしました。入力は、2001年までは、コーニツキーが担当しました。その後のデータ入力は国文学研究資料館が引き継ぎ、伊藤鉄也が担当しました。2001年11月にweb公開を行い、検索システム等は大内英範が構築し、順次データの追加・更新を行なっている。
 末尾ながら、プラハの故リブセ・ボハチコヴァ氏、ロンドンの故ケネス・ガードナー氏、故反町茂雄氏、アレクサンドル・カバノフ氏、ヴァル・ハミルトン氏、ヒロコ・マックダーモット氏、小山謄氏をはじめ、数多くの司書の方々などに色々とお世話になりましたこと、心からお礼を申し上げる次第です。(2011年11月)


 また、2001年の公開時に、冒頭に掲げた「目録前文」は、以下のものでした。

本目録は、欧州各国の大学図書館・市立図書館・美術館・博物館等に所蔵されている、「日本の和装本」のすべてを掲載するものである。ここでの「日本の和装本」とは、〈写本・版本〉および〈国書・和刻本漢籍・和刻本韓籍〉を問わないこととする。

This catalogue aims to include all the books bound in Japanese style held in the university libraries,local libraries, museums and other institutions of all European countries.It covers both manuscripts and printed books and both Japanese books and Japanese editions of Chinese and Korean books.


 これが今は、「欧州所在日本古書総合目録へようこそ」として、次のようになっています。

本目録は、欧州各国の大学図書館・市立図書館・美術館・博物館等に所蔵されている、「日本の和装本」のすべてを掲載するものです。
詳細は About this catalogue をご覧下さい。

This catalogue aims to include all the books bound in Japanese style held in the university libraries,local libraries, museums and other institutions of all European countries.
For further details click on About this catalogue.


 その後のこのデータベースの紆余曲折については、引き続き記します。
 
[以下つづく]
 
 
 
posted by genjiito at 23:53| Comment(0) | ◎国際交流

2018年07月19日

キャリアアップ講座(その6)『源氏物語』のくずし字を読む(字母まで正確に書写)

 暑い中を、今日も熊取周辺地域の皆さまが、大阪観光大学に集まってくださいました。いつものように、まずは世間話から。

 祇園祭の前祭の写真を見ていただき、見物の位置どりや見どころなどをお話ししました。
 また、「コーニツキ版 欧州所在日本古書総合目録」がリニューアルしたことも。
 これは、ケンブリッジ大学のピーター・コーニツキ先生と、足掛け16年をかけて構築したデータベースです。また機会をあらためて詳細な記事として書きます。
 これに関連して、「国文学論文目録データベース」についても、紹介をしました。これについても、またあらためて。

 今日は、今回のテキストにしている『国立歴史民俗博物館蔵『源氏物語』「鈴虫」』が、書写にあたって元にした親本を、いかに正確に書き写そうとしているかを確認しました。

 次の2例は、最初に書いた「日」が、親本で「ひ」となっていたことに気付き、すぐに書き直したと思われるものです。

(1)「よそ日尓」と書いた後、「日」をミセケチにしてその右横に「ひ」と書いています。
 傍記の「志やうそく【也】」は注記です。(5丁裏6行目)

180719_nazo-hi1.jpg

(2)「むす日」と書いた後、「日」の上から「ひ」を重ね書きしています。(6丁表3行目)

180719_nazo-hi2.jpg

 共に、「日」と書いてしまい、親本が「日」ではなくて「ひ」だったことに気づいて、その字母を変更した補正です。この写本を書写している人は、字母にまで気を配って、親本を忠実に書き写していることがわかります。そして、この書写者は日常的には「ひ」ではなくて「日」という変体仮名をよく使っていたようです。そのため、つい「日」と書いてしまったと思われます。一種の変体仮名の書き癖とでも言うべきものです。

 また、糸罫がずれたままの状態で書写を続けていたため、6行目までがズレていることも確認しました(5丁裏)。
 このことは、京都での勉強会でも、ハーバード大学美術館蔵『源氏物語』「須磨」においても見られた現象です。
「[町家 de 源氏](第9回)(【画像変更】糸罫が動いた結果)」(2018年05月26日)

 こうして、細やかながらも、筆写されている情況を自由に想像しながら、写本が生まれる過程を確認して進んでいます。

 今回は、6丁表3行目の「むすひ」までを見ました。
 次回は、2週間後の8月2日(木)です。
 
 
 
posted by genjiito at 23:42| Comment(0) | ■講座学習

2018年07月18日

大阪駅でミャンマーからお越しの長田さんと面談

 今日の京都の最高気温は39度。
 5日続きの38度超えです。
 大阪は37度。
 これはもう、尋常の気温ではありません。
 熱中症のことばかりを考えて通勤しています。
 カバンの中には、お茶、栄養補給ゼリー飲料、チーズ、糖質ゼロのノド飴、お弁当などが入っています。
 エアコンが効いている電車の中にいるとはいえ、この御時世に長時間車中にいると、何があるかわかりません。
 猛暑の中を往復200キロの移動をするのです。
 不測の事態も考えて、とにかく体力温存です。
 目を酷使する読書やスマホは控えて、今日は落語を聞いていました。
 桂枝雀の『地獄八景亡者戯』(80分)をすべて聞くことができました。
 2人掛けのベンチシート型の電車だけを選んで乗っているので、廻りを気にしなくてもいいのです。
 [市バス→私鉄電車→JR電車→学バス]
 前期試験前ということもあり、日根野駅からの学バスは満員でした。
 道中3時間強の内、この学バスでの7分ほどが一番疲れます。

 午後の学科のミーティングが終わってから、8月上旬にペルーへ連れて行ってもらう先生の研究室で旅程の打ち合わせ。
 科研の作業室で、今週末にアルバイトのみんなと一緒に観に行く、障害者に関する映画の打ち合わせ。
 事務方と出張に関する確認をしてから、慌ただしく学バスでまた日根野駅へ出て大阪駅に直行です。

 JR大阪駅中央口からすぐのホテルグランヴィア大阪のロビーラウンジには、定刻に着きました。
 今日はここで、「ココライズジャパン」の長田さんと面談です。
 長田さんは、ミャンマーのヤンゴンで翻訳ビジネスを展開しておられます。
 本年3月にミャンマーへ行った折に現地で見つけたビルマ語訳『源氏物語』を、日本語へ訳し戻しをしていただいたのです。
 この戻し訳は、9月中には公開する予定です。
 ただし、そのための肝心のホームページが、いまだ請け負った業者との問題がまったく解決していないために、泥沼の中に立たされているところです。

 ミャンマーでの長田さんとのことなどは、次の2本の記事に書いています。

「ビルマ語の翻訳本と異文化交流の現地調査と資料収集は続く」(2018年03月09日)

「ビルマ語訳『源氏物語』を訳し戻す相談をして帰国の途に」(2018年03月17日)

 昨日までの予定では、長田さんは日本に来たのを機会に、挨拶を兼ねて大阪観光大学にお出でになることになっていました。
 しかし、この熱暑なので遠路大変だと思い、急遽大阪駅で面談をすることにしたのです。

 今日は、過日納品されたビルマ語訳『源氏物語』の日本語への戻し訳に関して、いろいろと情報交換をしました。
 また、今後ともミャンマーにおける日本文化と日本文学の受容の研究に助力していただくことも、重ねてお願いしました。
 本年度中に、もう一度ミャンマーへ行く予定です。
 心強い仲間が、多言語翻訳の研究をバックアップしてくださいます。
 こうしたご縁を大切にして、次世代に情報と人とのつながりを伝えて行きたいと思います。
 
 
 
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | ◎国際交流

2018年07月17日

京洛逍遥(504)祇園祭の前祭山鉾巡行 -2018-

 先週の大雨で三条大橋の下流で、護岸が崩れました。今日も、その修復に余念がありません。

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 4日続きの39度になろうかという熱暑の中、祇園祭の前祭山鉾巡行が四条通、河原町通、御池通を舞台として繰り広げられました。
 昨年の後祭の山鉾巡行は、「京洛逍遥(452)祇園祭の後祭の山鉾巡行から解体まで」(2017年07月24日)に記しています。

 さて、今年の前祭の山鉾巡行は、ここ数日の極熱の京洛ということもあり、見物の人は大幅に減ったようです。京都府警の発表によると16万5千人とのことなので、昨年より5万5千人減ったようです。そのような中を、23基の山鉾が都大路を進みました。

180717_map1.jpg

 今年は、御池通の終点から逆に見ることにしました。
 なお、画像をクリックしていただくと、さらにクリアな写真が表示されます。

180717_oike-end.jpg

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 先頭は長刀鉾です。

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 次は、カマキリが御所車の上でコミカルな動きを魅せる蟷螂山。

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 霰天神山。

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 油天神山。

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 函谷鉾。今年のちまきをいただいた鉾です。
 この河原町御池の交差点で90度に曲がる「辻回し」が、とにかく一見の価値のあるものとなっています。
 もちろん、この前に河原町四条の交差点でも、この「辻回し」はあります。昨年の後祭の記事は、そこでのものです。

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 引き続き、孟宗山。

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 綾傘鉾

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 白楽天山。

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 鶏鉾の「辻回し」。

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 今日も38度を超えた炎天下です。23基中の9基まで見て、今年はここで次の仕事のために退散します。
 来週23日の後祭の山鉾巡行は、10基が予定されています。
 可能であれば、立ち寄って見たいと思っています。
 
 
 
posted by genjiito at 23:17| Comment(0) | ◎京洛逍遥

2018年07月16日

読書雑記(234)望月麻衣『京都寺町三条のホームズ 7』

 『京都寺町三条のホームズ 7 〜贋作師と声なき依頼〜』(望月麻衣、双葉文庫、2017年4月)を読みました。

180527_homuzu7.jpg

 作者は、ゴールデンウィーク明けから語り出しながら、なぜか5月の葵祭のことを失念して書き始めています。どうしたのでしょうか。
 物語は、若者たちの愛情を見守る気持ちで始まります。そして、本巻が高校生編のとじめとなるものです。
 
■「その心は」
 お茶会の話で、抹茶の泡だて方で表千家か裏千家がわかる、という話題は、ちょうどお茶のお稽古帰りに読んでいたこともあり、おもしろく読みました。
 また、着物に関する話題と描写も、よくわかります。
 お菓子の松風を口にした場面で「芳ばしさ」(108頁)という語が出てきます。「かぐわしい」が変化した「こうばしさ」という言葉で、平安時代から使われています。ふりがながほしいところだと思っていたら、次の頁ではふりがなが付いています。どうして最初の出現例につけなかったのでしょうか。
 お茶室を競う話では、利休の一輪の朝顔譚をなぞった茶室と、和泉式部の「ありとても」の歌を飾った手作りの茶室。そして、「気は遣うものやない。配るものや」という締めの言葉。初めてのお茶会に出た葵の、爽やかな話に仕上がっています。【5】
 
■「砂上の楼閣」
展開が不自然です。【1】
 
■「言霊という呪」
呪文という言葉が物語を陳腐なものにしています。【1】
 
■「望月のころ」
 相手の心の中を読み合う場面はいいと思います。ただし、話を作り過ぎです。言葉がストーリーの上を滑っています。もっと丁寧にホームズ、葵、円生を描いたら、語らせたら、心温まる話としてまとまったことでしょう。読者に想像を任せる部分が、早めに投げ出されたように思います。そして、情の世界に収めたことに物足りなさを感じました。【2】
 
 
 
posted by genjiito at 18:14| Comment(0) | ■読書雑記

2018年07月15日

熱暑の中をお茶のお稽古で大和平群に通う

 昨日今日と、39度に届こうという猛暑です。
 今日の大和平群でのお茶のお稽古は、いつもの午後からではなくて、先生のお気遣いで早朝にしてくださいました。
 それでも、9時ころにはすでに暑さは始まっていました。
 平群町内を流れる龍田川の水も、いつもの力強さはありません。

180715_tatuta.jpg

 山を登る途中の掲示板に、鑑真と長屋王に関する講演会の案内を見かけました。8月5日は、残念ながら行けません。またの機会を楽しみにしましょう。

180715_kouen.jpg

 朝ということもあり、坂道の中でもV字に登る急坂に日陰が多かったので助かりました。

180715_sakamiti.jpg

 濃茶のお稽古では、いつもと同じように背中が曲がっているとの注意を受けます。何とかしようと思いながらも、お点前の順番や手の動きに気を取られていると、つい背筋への注意が疎かになります。
 今日は特に、きれいに見えるようにと、手首の曲げ伸ばしや道具の扱いについて、細かな注意点やアドバイスをいただきました。
 昨春に東京を引き揚げてからは、月に2回のお稽古はほぼ守っています。なかなか上達しなくても、このペースで通い続けることで、自然とお作法が身に付いてくると信じてやっています。継続は裏切らない、と勝手に自分に言い聞かせているのです。

 それにしても、すぐに忘れます。指摘されて思い出すのはいいとして、そうだったかなあと初めてのことのように思う場面もしばしばです。すべてを加齢のせいにして、忘れることを畏れずに、思い出すことの楽しさを満喫するお稽古を心掛けるようにしています。そう割り切ってしまうと、意外と気持ちは楽になります。

 午後は、堺市周辺で用事ができました。いつものように単線の電車で生駒駅に向かうのではなく、王寺駅に下りました。久しぶりに来た王寺駅ということもあり、駅前に聖徳太子の愛犬「雪丸」のマスコットを見かけました。

180715_yukimaru.jpg

 この王寺駅の近くにある聖徳太子ゆかりのお寺から、我が家のお盆には読経に来ていただいていました。古代が日常に馴染んでいる生活をしていた十数年前を懐かしく思いながら、天王寺駅経由で移動を続けました。そう言えば、この経路で当時の大阪明浄女子短期大学に通勤していたのです。こんな時に、数十年の時差が一気に縮まります。
 電車の中は快適なので、日中の外気温は気になりません。しかし、油断しないようにと、自宅から持参のお茶を飲みながらの移動です。
 
 
 
posted by genjiito at 20:20| Comment(0) | *身辺雑記

2018年07月14日

京洛逍遥(503)祇園祭 -2018- 菊水鉾のお茶席

 菊水鉾のお茶席の券が手に入りました。

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 まずはお昼ご飯です。昨日から気になっていた錦小路通り室町西入るの「膳處漢(ぜぜかん)ぽっちり」で中華のお弁当をいただきました。このお店の入口前には、「しみだれ豚饅」を求める連日の長蛇の列が圧巻です。

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 北京料理屋さんにもかかわらず、日本風の中庭がうまくコラボレーションした不思議な空間と雰囲気を作っています。

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 食後は、お茶をいただくために、昨日行った菊水さんにもう一度足を運びました。

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 菊水鉾は、謡曲「菊慈童」から着想された鉾です。千利休の師である武野紹鴎の大黒庵があり、その邸内にあった菊水井にちなんで「菊水」と名付けられたのだそうです。このお茶席は、菊の露を飲んで不老長寿となったという、700年生き続けている少年である枕慈童に取材したことに因むものだとあります。表千家、裏千家、遠州流が交代でお茶会をつとめています。今日は、裏千家の番でした。

 壇上でのお点前は、男性が浴衣姿でなさいました。浴衣を着てのお茶は初めて見ました。

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 お茶菓子は黒糖入の琥珀羹で、亀廣永の羊羹です。多くのお客様を相手になさることもあり、裏千家の社中の方々が丁寧にお茶を運んでおられました。菊水鉾会所の2階の広い部屋は、白布をかけたテーブルにパイプイスが並んでいます。

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 霰天神山にお参りしました。舞妓さんがちまきを売っておられました。昨日、函谷鉾でいただいたので、ここでは失礼しました。

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 昨日は紹介しなかった、菊水鉾から北へ真っ直ぐに上がったところの山伏山の写真をあげます。

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 もう一つ、四条烏丸を少し上がったところで組み立てが進んでいた孟宗山の写真も。

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 布地屋さんの屏風を拝見しました。せっかく写真を撮らせてくださったのに、お店のお名前を失念しました。すみません。ありがとうございました。
 この時期は、さまざまな屏風絵を観ることができる、贅沢な空間に身を置くことになります。

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2018年07月13日

京洛逍遥(502)祇園祭 -2018- 四条通散策

 今日は高校の授業がいつもの50分ではなくて40分授業だということで、早めに家を出ました。片道2時間弱です。
 すると、今日の授業は2コマの内1コマだけでいいとのことです。
 今日は、1学期の成績を提出する締切日でもあります。伝票やコンピュータへの点数入力が、余裕を持ってできました。こんな予定変更は大歓迎です。

 今日の最高気温は35度。風がなかったので暑さはことのほか厳しく感じました。教室もエアコンがあるとはいえ、生徒たちはぐったりです。
 1時間早く学校を出られたので、帰りに祇園祭をブラリと見ることにしました。文の里→東梅田→梅田→四条烏丸と乗り継いで、四条通と1本北の錦小路通に建つ山鉾を、気ままにブラブラと見て廻りました。
 次の地図の赤色で囲った山鉾を見ました。

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 まずは、四条烏丸の交差点東に建つ長刀鉾から。

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 そこから西に向かい、四条通の北側の函谷鉾で、今年の「ちまき」をいただきました。

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 その向かい側、室町通を下ったところの鶏鉾。

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 四条通を挟んだ北側の菊水鉾。

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 逆に四条通を挟んだ西南の月鉾。

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 新町通を上がった放下鉾。

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 すぐ西で作業中の郭巨山。

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 この郭巨山から四条通を東向きに、八坂神社の方角を見ると、その右奥に月鉾が、左奥に函谷鉾が見えます。

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 山鉾の西端にあたる西洞院通では、蟷螂山が準備中でした。

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 四条通から1本北側の錦小路通を錦市場の方の東に向かって歩きます。しばらく行くと、霰天神山が見えます。

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 錦市場に向かって烏丸通の手前に占出山があります。

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 錦小路通をそのまま東に真っ直ぐに行き、烏丸通を渡ると錦市場に入ります。
 最近、この錦市場はゴミが目立つようになりました。店先にテーブルを出して、立ち食いやつまみ食いができるようになったからです。旅行者は美化意識など持ち合わせておられないのでしょう。あたりにゴミが散らかり放題で、非常に不衛生です。また、狭い通りで歩き食いする人々と擦れ違う時、ソースなどが服や身体に付くので困っています。
 お店としては、小銭稼ぎなのでしょう。しかし、これは錦の存在を貶めることとなり、首を絞める行為になりかねないと思っています。

 錦天神の南、四条通角にある染殿院は、現在工事中です。

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2018年07月12日

読書雑記(233)望月麻衣『京都寺町三条のホームズ・6 新緑のサスペンス』

 『京都寺町三条のホームズ・6 新緑のサスペンス』(望月麻衣、双葉文庫、2016年12月18日)を読みました。

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 ホームズこと家頭清貴と晴れて交際することになった真城葵は、アルバイト先の骨董品店『蔵』でホームズから鑑定の指南を受けます。その中で、こんなシーンがありました。

「掛け軸や他の古美術品の鑑定には、基本的に手袋を着用しますが、茶碗などの『焼き物』の鑑定をする時には、手袋を外すものなんです」
「−え、でも、今まで手袋をしてましたよね?」
「ええ、触感を用いてまでじっくりと鑑定する必要がないものは、手袋をはめたままにしてきました。というのも、お客様の中には直に触れることを嫌がられる方も多いんですよ。『焼き物の鑑定の際には手袋を外す必要がある』ということを知らない方も多いようで、『どうして手袋をしない!』と怒鳴られたことが何度もあります。時に人から預かった物などを扱う時も手袋をするよう指示されることがありまして、そうしたことから、気分を害されないように基本的につけたままにしてきました」
 その言葉には、少し納得した。
 大切な茶碗の鑑定をお願いしようと持ち込んで、素手で触れられたら、『手袋しないの?』と思ってしまうのかもしれない。
「焼き物の鑑定に手袋を外す理由の一つとして、『手袋は滑りやすいから危険』というのがありまして、それで僕は滑り止め付きの手袋をしているわけです。(後略)」(10〜11頁)


 陶器は経験がないとして、写本など和紙に書かれた物を見る時に、私は手袋をしません。手袋が紙を痛めるし、捲りにくいからです。

 また、こんなことも。これはどうでしょうか。

「彼が史郎さんのことを話すとき、一瞬目線が右上を向き、その後に瞬きが多くなりました。人が過去を思い出す時の目は、左上を向きがちで、事実ではない架空の出来事を思い浮かべる時は右上を向きがちです。そして、動揺を隠せない時は瞬きが多くなる。おそらく、厄介な息子がいるのでしょうね」とホームズさんは、腕を組む。(123頁)


 とにかくこの作品は、私が日々行動している範囲が舞台なので、非常に具体的に場面が迫って来ます。出町などは、日常的に行き来している所なので、我が事のように物語の中に入り込めました。

 木屋町での二人の初々しい会話や行動は、微笑ましいくらいに若者の心を掴んだ表現です。作者が理想とする恋する二人を活写することに成功しています。それは、巻末でも見られました。

 本作は、作者にとって初めての長編です。恋愛を軸にして、鑑定、推理、アクション、観光と、欲張った内容です。そして、それらが成功しています。作者の構成力に感心しながら読みました。【5】
 
 
 
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2018年07月11日

読書雑記(232)本多健一『京都の神社と祭り』

 『京都の神社と祭り 千年都市における歴史と空間』(本多健一、中公新書 2345、2015年10月)を、コンチキチンの祇園囃子が流れる中で読み了えました。

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 今まさに、京都は祇園祭に沸いています。その意味からも、早速本書を読んでみようと思われた方は、第8章の祇園祭の山鉾巡行の話から読まれるといいでしょう。説明が非常に具体的で、何がわからないのかを明確にして語られています。私も、今年は本書から得た知識を携えて、祇園祭の雑踏の中に身を置こうと思っています。

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 さて、本書は、数多い京都の神社の歴史と地理について、わかりやすく概観した本です。現在佇んでいる神社と祭りの姿の背景にある、さまざまな謂れが紡ぎ出されていきます。詳細な実地踏査を行なっての語り口なので、安心して読み進められました。

 平安京造営以前と以後にわけての説明も、長い歴史が堆積する京都のことなので、スッキリと理解できます。また、京の町衆からの視点が生かされていることも、特筆すべきことでしょう。為政者側からの歴史語りだけではないのです。

 読み進んでいって、一番楽しみにしていたのは、第5章の葵祭についてです。しかし、正直なところ期待ハズレでした。他の章と比べても、切り込みが浅いと感じました。私が知りたいと思っていたことと、著者の興味と関心が完全にズレたようです。
 そのことは、葵祭に関して民俗学的な視点で長年調査してこられた小山利彦先生の研究成果が、内容にも注記にも皆無であることからも言えます。

小山先生は、下鴨神社や上賀茂神社での祭儀に長年にわたって立ち会い、祭りの本義を神官や地域住民のみならず、民間伝承と文献資料の考察に加えて、その成果を文学作品の解釈に援用しておられます。文学を理解するための賀茂祭の調査研究が背景に核としてあるだけに、さらにはそれがライフワークともなっているだけに、その研究成果が本書には一つも盛られていないことが気になりました。

 小山先生の調査には、私も後輩としてご一緒させていただきました。神職の皆様との長いお付き合いから得られた生きた情報は、文献資料や口頭伝承を補完するものも多いことを学びました。本書にそのことが取り込まれたら、さらに興味深い内容が展開したことでしょう。

 下鴨神社で禰宜をなさっていた嵯峨井健氏は、神仏習合をテーマとする儀礼空間の研究で学位を取得されました。私は嵯峨井氏の後輩でもあることから、葵祭の祭儀に随伴させていただいたことがあります。

「京洛逍遙(141)葵祭の社頭の儀」(2010年05月15日)

「京洛逍遥(232)葵祭で神仏習合を考える」(2012年05月16日)

「京洛逍遥(276)下鴨神社の葵祭-2013」(2013年05月15日)

 直接下げられたばかりの神饌の前で、懇切丁寧な教えを受けました。秘儀と思われることも、研究者の視点で読み解いてくださいました。そんなこともあったので、本書の第5章は楽しみだったのです。このくだりは、自分の興味と関心に引きつけ過ぎた、あくまでも読書雑記としてのコメントであることをお許しください。

 本書を通して、さらに欲を言わせてもらえれば、周辺図と境内図がもっとあると、地理的な状況が伝わったと思います。記事のそばに図版が置かれているので、前後に目が移動することはないような配慮は伝わって来ました。その点はいいとしても、もっと点数があれば、ということです。京都に住む私でさえ、地理的な位置を別の資料で確認しながら読み進めたので、そのような感想を持ちました。

 さらには、コラムとしてのこぼれ話もほしいところです。幅広い視野で見通した説明が多いので、各社寺にまつわるおもしろおかしい話があると、旅人として本書を紐解く人は、読後の印象が違ってくるはずです。京都が立体的に見えてくることでしょう。
 もちろん、こうしたわがままな要求に応えていると、ページが嵩みます。こうしたことは、続編に期待することかもしれません。妄言多謝。

 そんな勝手な注文はともかく、わからないことはわからないと明記する姿勢が顕著なので、安心して読み通せます。京都の新たな魅力を知るための一書として、一読をお薦めします。【3】
 
 
 
posted by genjiito at 20:50| Comment(0) | ■読書雑記

2018年07月10日

京洛逍遥(501)今月は当番でお地蔵さんのお世話中

 京都では、お地蔵さんが大切にされています。街中を歩くと、辻々に小さな祠があります。その多さにはびっくりします。
 昨年開催された「丸善での講演会「京都の伝統文化 地蔵盆の歴史を知る」に行って」(2017年08月12日)で、関西のこの風習について書きました。

 近所の公園で催される地蔵祭については、「京洛逍遥(456)地元の地蔵盆に初めて参加」(2017年08月19日)で紹介しました。

 下鴨中通の地蔵堂で、町内の子供たちが楽しく演芸会をしていたことは、「京洛逍遥(337)下鴨神社の盆踊りと地域の地蔵盆」(2014年08月23日)に書いた通りです。

 私が住む町内会では、当番がお地蔵さんのお世話を月替わりでしています。

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 今月は我が家が当番なので、毎朝6時に、公園の中にお祀りしている地蔵尊のお花、お茶、お水を取り換え、お掃除をしています。夕方は、仕事帰りで遅くなる時には省略で失礼を……
 みなさん、無理をしないでお守りしておられます。そのせいもあってか、このようにお地蔵さんが親しまれ、お祭りも長く続いているようです。

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 颱風のような大雨も上がり、賀茂川は元のような景色に戻りました。

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 尋常ではない水嵩だったことがわかるように、橋脚には木くずがへばり付いています。昨日まではどこにいたのか、鴨も出てきてはしゃいでいます。

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 橋の下は、水位が下がったことでくぐり抜けられるようになりました。

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 トントンと呼んでいる飛び石は、まだ水量が多いために水を被っています。もうしばらくは、この飛び石を渡ることはできません。

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 いつもは川の中で水を浴びながら魚を待つ鷺も、水量が多くて水圧が強いことがわかるのか、飛沫を浴びながら思案顔です。

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 梅雨も明け、これから夏に突き進むようです。
 とにかく熱中症に気をつけて、この夏も元気にやり過ごしたいと思います。
 
 
 
posted by genjiito at 20:07| Comment(0) | ◎京洛逍遥

2018年07月09日

このところ定着した週1回のスポーツクラブ通い

 今年は、まじめに週1回の運動をしています。
 新年早々に、「初泳ぎで健康に気遣った生活を始めました」(2018年01月05日)と書いたように、その後もマイペースでスポーツクラブに通っています。

 水泳ばかりだったので、先月6月からはジムのマシンも使い出しました。筋肉がますます細くなり、自分の姿がみすぼらしくなって来たことへの自衛策です。お医者さんからは、体重50キロ超えを目標にするのではなくて、48キロを切らないようにしたらいいと言われ、その対策が筋肉を付けることになったのです。地下鉄の階段で吹き上がる風に飛ばされない身体にしたいのです。

 このところ、土・日・月のいずれかの夜に行くことが定着しました。プールとジムを交互に使いわけています。一汗かいた後のサウナやジャグジーは、気分を爽快にしてくれます。日々溜まりに溜まるストレス発散にも最適です。

 今日などは、体重が50キロを超えていたのです。目標にしなくなったはずなのに、やはり内心は気にしているのでしょう。うれしくて、つい今日のブログのネタにしてしまいました。

 スタジオで有酸素運動をするのは、この秋からにしようと思っています。
 あの振り付けが覚えられなくなった数年前から、しだいにスタジオでのフィットネスから遠ざかっていました。
 結構激しいクラスでも踊っていた自分の姿を記憶から消し去り、初心者クラスから始めようと思っています。

 これまでにスポーツクラブで汗を流した記録は、「銀座で泳いでいた日々を思い出して」(2017年08月06日)にまとめていました。よろしければご笑覧を。

 あまりの忙しさに、そのベースとなるはずの身体作りのことを二の次にしていました。それを大いに反省しているのは、日々の気持ちに少し余裕ができたからかもしれません。思い当たることがあるだけに、この気持ちのままに身体作りもこれからの優先課題とします。
 
 
 
posted by genjiito at 21:08| Comment(0) | *健康雑記

2018年07月08日

古都散策(65)奈良での茶道文化講演会で筒井先生のお話を伺う

 「第52回 茶道文化講演会」が、奈良東大寺の近くにある「春日野国際フォーラム 甍〜I・RA・KA〜」の能楽ホールで開催されました。

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 茶道裏千家淡交会奈良支部の会員である私は、昨年の「奈良公園で開催された第51回 茶道文化講演会に行く」(2017年07月09日)に続いての参加となります。
 今回は、茶道資料館顧問の筒井紘一先生の講演で、演題は「利休の茶」です。
 筒井先生のことは何度か書きました。これまでのやりとりは「茶道資料館で筒井先生に武居さんの学位取得を報告」(2017年03月07日)に譲ります。

 講演の前の呈茶は、香芝のお茶菓子で「せせらぎ」でした。見た目にも涼やかなお菓子です。

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 筒井先生のご講演は、鷺絵の話から展開し、軸装で一文字を抜いた意味やそれを古田織部が理解したことなど、博識の先生ならではの話題が満載の、非常に楽しいお話を堪能しました。。
 室町時代には村田珠光とは言わず、「村田」はつけずに「珠光」だけでよい、江戸時代から「村田」をつける、として、利休は珠光を目指していたと断定なさいました。
 利休の逸話は430もあるとのことで、さまざまな例を語ってくださいました。
 小堀遠州や古田織部を例にあげての美意識の話を、私は一番興味深く伺いました。
 さらには、『花伝書』や『宗旦伝授聞書』を引きながら、板書をしての熱演です。利休は自分が最初の人にになりたかったのだとか。納得です。
 水は午前5時までに汲むものなので、冬と春は朝茶を、夏は夜咄としてのお茶を、とおっしゃっていました。お茶人ならではのお話が、いたるところで花開いていました。
 会場を笑いで沸かしながらの、持ち時間を大きくオーバーしての名講演でした。

 あらかじめ筒井先生とは面談のお約束をしていたので、ご講演が終わってから控室で少しお話をしました。かねてよりのあつかましいお願いも、こころよく聞き届けていただくことが叶いました。ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 帰りには、奈良ホテルに立ち寄り、アイスカフェオレをいただきました。いつ来ても落ち着いた、ゆったりとできる場所です。

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 中は素晴らしい美術館で、時間の流れが止まったかのような錯覚に陥ります。

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 一角に、変体仮名の冊子があることに目が留まりました。
 『諸変軆可那書法 全』(文永館・書道奨励会・吉川弘文館、大正4年参月三十日発行)
 今後は、こうした本も集めていきたいと思います。

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 帰りは奈良駅までブラブラと散策。夕陽に照らされた水面に、しばし佇んで魅入ってしまいました。
 右に興福寺の五重の塔、その左に西国三十三所の札所巡りで何度も来た南円堂。

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 帰りの近鉄電車で、車窓から外を見ていると、平城京跡の朱雀門が光のオブジェとして流れていきました。

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 かつて奈良の平群に住んでいた頃には、こうした風景を見るために、昼となく夜となく子供たちを連れて車で出かけて来ていました。十数年前までは、このあたりは我が家の散策コースだったのです。今こうして、住人ではなく旅人として夕景を見ると、また格別の思いに浸れます。見る立場が異なると、同じ風景も違って見えることを、あらためて知らされました。
 
 
 
posted by genjiito at 23:54| Comment(0) | ・古都散策

2018年07月07日

日比谷で橋本本「若紫」を読む(2018年度-その3、付箋跡の確認)

 毎月最初の土曜日は、日比谷図書文化館で「若紫」を読む日です。

 大雨の警報が出ている中を、早朝より東京に向かって出かけました。雨が小降りで、新幹線は山陽が午後まで運休、東海道は動いていたからです。
 賀茂川は、昨日よりも水嵩が少し低くなっていました。ただし、水量が減ったからといって、安心してはいけません。護岸や土手が崩れて、水が染み出している可能性があるからです。地盤が崩れつつあるため、明日までは十分に注意を、とのことでした。それにしても、と言うべきか、地元の方は洪水が心配で、つい川を見にこられるようです。

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 雨を気にしながら、薄氷を踏む思いで、新幹線を使った上京です。
 京都駅では、みどりの窓口が長蛇の列でした。新大阪から西へは行けないので、みなさん予定を変更なさるのでしょう。
 2時間半待ちだという行列も、自動券売機ではすぐに切符が手に入ります。ところが、発券された「のぞみ」が時間になっても来ません。かといって、遅れているわけではなさそうです。掲示がありません。駅員さんに聞くと、券面に印字された私が乗ることになっている列車は運休とのことです。後続の「のぞみ号」の自由席に乗って、車内で指定席に変更を、とのことでした。それなら発券しなければいいのに、と言ってもしょうがありません。このあたりに、コンピュータをまだ駆使できていないことが露呈しています。

 早めに出かけたので、日比谷で待ち合わせの面談には十分に間に合います。それでも、自由席は一杯だったために、2本見送ってなんとか座って行けました。
 東京は曇り空。雨はまったく心配ありません。

 思ったよりも早く着いたので、出光美術館で開催中の「歌仙と古筆」を観ました。

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 国宝の古筆手鑑『見努世友』をはじめとして、重要文化財の『佐竹本三十六歌仙絵』、平安時代の書写になる伝西行筆『中務集』、『継色紙』『高野切』『石山切』などなど、贅沢なものを満腹するほど見ることができました。

 日比谷見附から入ると、いつものお江戸の鷺がいました。喧騒の一角もいいけど、自然の中もいいよ、と言って賀茂川に連れて行きたくなります。

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 日比谷図書文化館の地下で、お二人の方と面談をしました。サイデンステッカーの英訳『蜻蛉日記』に関する架蔵の資料を渡したので、これを活用してどのような成果が生まれるのか、今からワクワクします。若い方の感性で、この資料を料理してもらえることは、有り難くもあり楽しみでもあります。

 講座では、先ほど見たばかりの出光美術館の展覧会のことをお話しました。この日比谷公園のすぐ近くなので、何人もの方がすでにご覧になったようです。そこで、受講者の机に常置している『源氏物語 千年のかがやき 立川移転記念 特別展示図録』(国文学研究資料館編、2008年10月、思文閣出版)を基にして、出光美術館蔵伝土佐光元筆『源氏物語画帖』と国文学研究資料館蔵『源氏物語団扇画帖』の図様がよく似ていることを説明しました。

 その後、ビルマ語訳『源氏物語』(第6巻、ケィン・キン・インジィン)とハンガリー語訳『更級日記』(フィットレル・アーロン)を回覧しました。共に、日本ではまだ出回っていない貴重な本です。日本の古典文化が海外に広がっていく現状を確認して、我々がこうした日本の文化を語れるようになることの意義を強調しました。これが、国際的なおもてなしにそのまま結びつくのです。英語を喋ることよりも、こうした日本文化の理解を、と言うことはこの講座では蛇足です。

 テキストは、33丁オモテの8行目、「うちなけきて」までを確認しました。話が広がったために、1頁分しか見られませんでした。
 ここで得られた新しいことは、行頭に付箋跡がある理由です。その行には、橋本本だけが伝える独自な異文がある目印である、ということに関係するものなのです。

 今日は、全盲の尾崎さんにとっては退屈だったかもしれません。目で見て確認する、ということが中心だったからです。それでも、いつも優しく横で囁いてくださる土屋さんが、うまくサボートしてくださっていたので安心して進められました。土屋さん、いつもありがとうございます。
 次回は、8月4日(土)です。

 終了後は、来月初旬に国立歴史民俗博物館に「鈴虫」を熟覧しにいくことで打ち合わせをしました。
 また、来訪者と書類のやりとりに加えて、国文学研究資料館で論文目録データベースの仕事を一緒にやっていた仲間と、場所を帝国ホテルに移して、今後の相談などをしました。
 講座の前後に5人の方々と、さまざまな打ち合わせということで、慌ただしい上京となりました。
 東京駅へ向かう有楽町駅前で、ビルの間に佇む神社を見つけました。有楽稲荷神社です。

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 京都では、祇園町に有楽稲荷大明神(別名、織田稲荷とも)があります。利休十哲の一人とされる織田有楽斎ゆかりの地。東京の有楽町という地とは、何かと縁があるのでしょう。また、調べてみます。
 銀座の路地裏にいくつも小さな神社があったように、このあたりにはこうした場所が残っているようです。また、おりおりに探索してみたいと思います。

 帰洛の道中は雨の心配はありません。京都駅に降り立つと、雨が止んだ後のようです。家に着く頃には、また降り出しました。
 私が名古屋を通過する頃に、千葉では地震があったようです。追い立てられるような気持ちになります。

 明日は奈良の「春日野国際フォーラム 甍〜I・RA・KA〜」で開催される、茶道文化講演会に参加します。
 そして、ご講演後の筒井紘一先生と面談をする約束となっています。
 昨年は、帰りに大雨に見舞われました。明日はどうでしょうか。
 
 
 
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2018年07月06日

京洛逍遥(500)心象風景のような賀茂の異様な川霧

 先日、のどかな賀茂川を散策しました。

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 その川が、今日はまったく違う姿を見せています。
 北大路橋から下流の出雲路橋に向かって流れる濁流が、何かに腹を立てていることは確かです。

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 上の写真の左に、大文字の如意ケ嶽が見えます。
 来月中頃には、この山肌に送り火の「大」の字が浮かび上がるのです。

 上流の北山方面は、もっと凄い景色です。橋の下は通れません。
 怒りをたぎらせているのか、初めて見る異様な川霧です。
 右に如意ヶ岳、左端が比叡です。

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 今年度に入ってから私は、科研のホームページの補修を依頼したK社があまりにも対応がでたらめで、プロ意識の欠片もないとんでもない実態を見せつけられています。
 おだやかに千年の時の流れに身を任せながらも、時にはこのように豹変する賀茂川を見つめて、自分の心の中を映し出しているような光景に親近感を覚え、シャッターを切り続けました。
 北大路橋から北山を見ると、靄がかかったように川霧が押し寄せてきます。
 私も、あのK社に怒鳴りつけたい気持ちを押し殺しながら、誤魔化したり強がった揚げ句に弁護士を盾に逃げ回るしかない方々に、もうしばらくは見逃してやるかと思うことで激昂しそうな気持ちを抑えました。まさに、心象風景との出会いです。


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 明日の午後は、日比谷図書文化館で『源氏物語』の講座があります。
 また、その前後に4人の方々との面談があります。
 新幹線の運行状況で、上京するかどうかを決めます。
 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎京洛逍遥

2018年07月05日

キャリアアップ講座(その5)『源氏物語』のくずし字を読む(書き手の交代)

 大雨の中、通勤の長い道中で、スマートフォンは8回も避難警告が鳴り響きました。画面に「緊急速報 避難勧告 発令」「緊急速報 避難準備 高齢者等避難開始発令」「緊急速報 避難勧告 土砂災害」などが表示されるのを横目に、ただただ大阪市内を南下して和歌山方面に向かいました。大学では、意外と雨風は強くなかったのでホッとしました。
 この記事を書いている今も、京都市左京区では「避難勧告」のけたたましい警報が少しの間を置いて鳴り響いています。指定緊急避難場所は「京都工芸繊維大学」と表示されているので、私の住んでいる地域からはもっと北の、京都五山の送り火で言うと、「妙」「法」の文字が焚かれる地域のようです。今また「避難指示(緊急)」がスマホの画面に表示されました。今夜は、この警報とお付き合いとなりそうです。賀茂川が氾濫しないか心配です。

 さて、大学でのキャリアアップ講座は順調に回を重ねています。

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 今日も、さまざまな資料を配りました。

◆池田本「桐壺」巻頭部分
 これは、重要文化財になったばかりの、鎌倉時代に書写された写本です。現在読んでいる鎌倉時代の歴博本「鈴虫」の巻頭部分とその雰囲気が似ていないか等々、見比べました。

◆変体仮名「て」の墨跡一覧
 現在一般的に使っている「て」の字母は「天」です。しかし、「く」の長いものをどうするかで、「弖」だけではなくて「氐」があることを、多くの例をあげて考えました。

◆山下智子さんの女房語りのチラシ
 内容を見ながら、ご一緒にコラボレーションする機会がなかなかないことや、美しい京都弁のことなどを話しました。

◆御茶の水女子大学が2020年から「女性自認」の男性を受け入れる新聞記事
 「LGBT」に「Xジェンダー」が加わる時代となりました。男らしさや女らしさについてフリーディスカッションで盛り上がりました。この講座は、年齢が50台から60台を中心とした集まりで、その中に4人の20歳の学生がいるという構成なので、この話はヒートアップします。ここぞとばかりに、男性4人の意見がポンポンと出る場面となります。これが、社会人講座の最大のおもしろさだと言えます。物語や文学作品を読む時に、男と女という枠を取り払って読むと、人と人との関係を男女に決めつけない、また別の読み方ができるのではないか、という提言をしました。


 今日は、テキストである写本は、4丁表から4丁裏の最終行までを確認しました。
 特に、写し手が途中で変わっているのではないか、ということを話題にしました。流れるような筆遣いから、途端につっかえつっかえ、それも頻繁に墨継ぎをして書写間違いが頻出するとなると、これはどうしても書き手が交代したと考えるのが普通です。巻頭部の1丁表裏を見て、そして2丁表に進むと、明らかな筆遣いが違うことが素人目にもわかります。
 一文字一文字を見ていくと共に、視野に入る紙面全体を見ることも忘れていません。この講座では、好き勝手に写本を見て読んでいく楽しさを満喫しています。

 次回は、再来週の7月19日(木)午後3時からです。
 場所は、今日と同じ、1号館4階のセミナールーム1です。
 
 
 
posted by genjiito at 21:03| Comment(0) | ■講座学習

2018年07月04日

読書雑記(231)山本兼一『修羅走る 関ヶ原』

 『修羅走る 関ヶ原』(山本兼一、2014年7月30日、集英社)を読みました。

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 慶長5年(1600)9月15日の話です。
 石田三成に始まり、一人10頁くらいの話を順番に読みます。時々、巻頭の「関ヶ原合戦布陣図」を見ては、各武将の陣地とお互いの勢力図を確認しました。
 一人一人の武将を、その人柄と考え方に至るまでを見通した、的確な描写で描き出します。それらの集積が、関ヶ原の合戦という大きな戦闘の実際と、その背景にある人々の思いを浮かび上がらせていきます。読みながら、うまい、と思いました。
 東西両軍の武将一人一人の性格が浮き彫りにされています。戦いのありようが、各武将の視点で語られるので、複眼的な戦闘場面が立ち現れているのです。驚くべき筆力です。そして、迫力のある戦闘場面が活写されています。
 人は、対立した時にどちらに付くのかを、読みながら思いました。自分が納得のいく場所を探し求める者と、計算尽くで立ち位置を決める者、そして様子見をしながら右顧左眄する者など、さまざまな生き様があることが、この物語に盛り込まれています。
 登場する男たちはみな、自分なりに筋を通しながら生きる道を決め、自分の意思で死んでいくのです。女性が出てこないのもみごとです。【4】

初出誌:『小説すばる』二〇一一年一月号〜二〇一二年十一月号

巻末付記:
「著者が逝去された為、本書は連載時のまま、手を加えておりません。ルビや明らかな間違いについては、著作権継承者と相談し、編集部にて修正しました。」(473頁)
 
 
 
posted by genjiito at 23:00| Comment(0) | ■読書雑記

2018年07月03日

清張全集復読(18)「廃物」「青のある断層」「奉公人組」

 昨日(7月2日)は、松本清張の原作にかかるドラマが2本もテレビで放映されました。季節の変わり目になると、番組編成の隙間を縫うようにして清張物が流れます。清張は、今も日本の文化の一翼を担っているようです。
 一昨日は、鳥取県の日南町に建つ松本清張記念碑の前に立っていました。そして、清張にとって忘れられない矢戸の村落を見つめて来ました。
 『白い系譜』を再読して、時間を見つけて清張の出自について再考しようと思うようになりました。

「清張全集復読(1)松本清張の家系の謎『白い系譜』(1)」(2014年08月08日)

「清張全集復読(2)松本清張の家系の謎『白い系譜』(2)」(2014年08月09日)

「清張全集復読(3)松本清張の家系の謎『白い系譜』(3)」(2014年08月10日)

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■「廃物」
 80歳の大久保彦左衛門忠教が、今まさに息を引き取ろうとしている枕元での人々の会話が、忠教の耳に届いていたという設定で語られます。機知に富んだ、というよりも、世の中を斜に見た愚痴っぽい語り方に、清張自身の姿が投影している、おもしろい話に仕上がっています。【4】


初出誌:『小説新潮』(昭和55年10月)
   原題「三河物語」
 
※『松本清張全集 35』(文藝春秋社、1972.7.20)の巻末に収載されている著者自身による「あとがき」によると、「大久保彦左衛門の例の『三河物語』から取った(「の例の」はママ、527頁)。」と言っています。
 
 
■「青のある断層」
 画商奥野は、銀座に画廊を構えています。そこへやって来た畠中良夫が話題を引っ張ります。さらにここに姉川という画家がからみ、心理の読み合いが展開するのです。話は、意外な展開を予想したにもかかわらず、期待は裏切られました。この後に、おもしろくなることを匂わせて、フェードアウトして終わります。余韻が残されたのは、作者が意図したところだったのでしょう。しかし、私には清張らしくない構成だと思いました。【1】


初出誌:『オール讀物』(昭和55年11月)
 
  
■「奉公人組」
 時は慶長の時代。人間の扱いを受けない、冷酷な境遇に生きる奉公人の姿が活写されます。そして、その弱い立場の者の味方をした一兵衛は、拷問を受けます。おもしろい話ながら、清張らしさのない捻りのない作品です。【1】


初出誌:『別冊 文藝春秋 49号』(昭和55年12月)
 
※『松本清張全集 35』(文藝春秋社、1972.7.20)の巻末に収載されている著者自身による「あとがき」には、何も言及がありません(257頁)。
 
 
 
 
posted by genjiito at 20:00| Comment(0) | □清張復読

2018年07月02日

生意気にも文学散歩と称して日南町を案内する

 宿泊した「ふるさと日南邑」から見る中国山地の山々は、いつものどんよりとした風景ではなく久しぶりに澄み切っていました。

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 池田亀鑑文学碑を守る会のみなさまはご多忙ということもあり、今回は私が遠来のお客人をタクシーを使って町内散策にお連れしました。
 まずは、どうしても欠かせない、「池田亀鑑誕生地」と刻まれた石柱から。
 後藤孝重さんが、ご自宅の庭に建立なさったものです。

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 この碑の背景についてさらに詳しくは、「日南町の池田亀鑑(4)生誕の家と2人の「とら」さん」(2011年03月19日)を参照願います。
 次に、「野分の館」という井上靖記念館です。ここは、いつもきれいに整備されています。伊田さんを始めとする、井上靖を敬愛なさっているみなさまがたの、日々の心遣いが訪れるたびに感じられます。

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 そこから近いところにある、井上靖の家族が疎開していた曽根の家の跡地へ。
 井上靖の小説『通夜の客』に出てくる「糀屋」さんの裏にあたります。

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 ここに掲示されている「曽根の家」の間取図が正確ではないことは、「標識が設置された井上靖ゆかりの曽根の家」(2015年06月28日)で指摘した通りです。

 「印賀屋」さんの前に立つと、『通夜の客』の舞台に思いが及びます。

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 そこから北に車で15分ほど走ると、松本清張の文学碑があります。この碑は、父祖の家があった所を向いています。清張と矢戸については、「読書雑記(102)足羽隆著『松本清張と日南町』の奨め」(2014年07月10日)を参照していただけると、清張にまつわる詳細な裏面史がわかります。

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 生山駅から帰ろうとした時、向こう側のホームに、前日新見駅で乗り損なった一輛だけの各駅停車の電車を見つけました。微笑ましい思いで見送りました。

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 来年の、第8回池田亀鑑賞の授賞式の日程はまだ決まっていません。
 また新たな出会いと発見の旅になることでしょう。
 
 
 
posted by genjiito at 21:00| Comment(0) | □池田亀鑑

2018年07月01日

第7回池田亀鑑賞授賞式-2018

 第7回池田亀鑑賞の授賞式は、日南町総合文化センターの多目的ホールにおいて定刻に始まりました。

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 池田亀鑑文学碑を守る会の会長である加藤輝和氏のご挨拶で始まります。

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 続いて、今回の授賞者である松本大さんに、加藤会長から賞状と賞金が手渡されました。

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 池田亀鑑賞選考委員会の会長である伊井春樹先生が所用でご欠席なので、選考委員長を務めている私が挨拶と選考経過の報告と受賞作の講評をしました。

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 あらかじめ用意していた内容は以下のものです。これを基にして、会場のみなさまに語りかけるようにしてお話をしました。

  挨 拶



 池田亀鑑賞の選考委員長をしている伊藤鉄也です。
 松本大さん、受賞おめでとうございます。
 本日は、池田亀鑑賞選考委員会の会長である伊井春樹先生が所用でお越しいただけません。そこで、私が挨拶を兼ねて、受賞作の紹介と選定理由についてお話いたします。

 この池田亀鑑賞も、回を重ねて第7回となりました。
 第1回池田亀鑑賞の授賞式は平成23年(2011年)5月2日に挙行されました。そして今回が第7回です。これまでを振り返っても、感慨深いものがあります。

 今回も、すばらしい成果を池田亀鑑賞の受賞作として選定することができました。
 受賞者の松本さんは、お手元の資料にあるとおり、コツコツと研鑽を積み重ね、今回のご著書のような成果をまとめられました。これからが大いに楽しみな、若手の研究者です。
 この受賞を契機として、ますます活躍されることでしょう。

 さて、今回の〈受賞作の紹介と選定理由〉について報告します。

 池田亀鑑賞の選考方法については、これまでと同じです。

・選考対象は、『源氏物語』をはじめとする平安文学に関する研究論文や資料整理及び資料紹介
・平成30年3月31日までに応募のあった著作と書類
・今後の平安文学研究の励みとなるような研究及び成果物
・評価対象は、応募にあたって提出された著作と応募文書
・評価点を付けるにあたっては、設定された次の4項目につき5点満点で評価する
  (A)地道な努力の成果
  (B)研究の基礎を構築
  (C)研究の発展に寄与
  (D)成果が顕著な功績


  選 評



 今回の松本さんの受賞作である『源氏物語古注釈書の研究』(2018.2、和泉書院)は、『河海抄』を中心に『源氏物語』の古注釈の様相を文献学的に探究した、地道で実証的な研究です。
 重要な古注釈でありながら諸本研究が遅れている『河海抄』は、翻字は提供されるものの、その文献学的処理は不十分でした。その意味からも、今回の受賞作は、『河海抄』を中心に、古注釈書の諸伝本を地道に丹念に調査研究した労作です。徹底して現存諸本と向き合おうとする姿勢は高く評価されます。
 松本さんは、これまでの研究を批判的に継承する中で、基礎的な研究にさまざまな成果を見せています。各種文献を手広く調査した報告を踏まえた考察も、研究手法の手堅さを感じさせるものです。今後の『河海抄』の研究、古注釈研究において必ず参照されるべき研究書となることでしょう。
 もっとも、選考委員の中には、松本さんの論証や結論に満足なさらない方もいらっしゃいます。各種文献の資料としての吟味は、さらに加えてもらいたいと思います。
 そうした点はあっても、今後のますますのご活躍を期待して、第7回池田亀鑑賞を贈るになりました。
 松本さん、池田亀鑑賞の受賞、おめでとうございました。


 続いて、選考委員の紹介です。

池田亀鑑のご子息である池田研二先生

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岐阜大学の小川陽子先生。

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広島大学の妹尾好信先生。

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ノートルダム清心女子大学の原豊二先生

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 引き続き、来賓としてお越しの、日南町町長増原聡氏、日南町町議会議長村上正広氏、鳥取県議会議員内田博長氏、日南町教育長丸山悟氏の紹介がありました。

 祝電の披露では、受賞作の出版元である和泉書院からのものが、司会進行役の浅田幸栄さんから読み上げられました。

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 来賓を代表して、増原町長の挨拶がありました。

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 池田亀鑑の言葉である「至誠」から、まっとうに生きるということについて考えていると切り出され、学んで開ける町、向学心を養っていける町にしたいと、力強い決意が語られました。

 その後、第1部に入り、今回のメインとなる、松本さんの講演となりました。

 『源氏物語』の魅力や、おもしろさを話したいということで、町民の方々にわかりやすい言葉で語りかける講演でした。

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 授賞式としてのセレモニーの後は、少し休憩時間を挟みます。会場の後ろでは、私が編集した本も並べられていました。

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 第2部は、筑紫女学園大学の須藤圭氏です。今年3月に重要文化財に指定された池田本『源氏物語』の位置付けについての話です。

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 参会者全員に袋に入れて配布した、八木書店から送っていただいた池田本のパンフレットや、須藤氏と私が編集した『池田本 源氏物語 校訂本文「桐壺」(第一版)』(NPO法人〈源氏物語電子資料館〉伊藤・須藤編、2017年1月、44頁)の紹介もありました。

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 第3部では、須藤氏の講演を受けて、私が池田本の首巻「桐壺」の巻頭部分を確認します。変体仮名に注意しながら、写本に書かれている文字を、参加なさっているみなさんと一緒に辿りました。池田亀鑑が取り組んでいた、古写本を読むという営為をみんなで追体験しよう、という主旨のもとでの勉強会です。
 この、鎌倉時代の古写本を変体仮名に注目して読むイベントは、これまでに池田亀鑑賞の授賞式のエキシビションとして好評のうちに4回おこなっています。

2014.6.29_亀鑑体験1「蜻蛉」(ハーバード大学蔵)
2014.9.09_亀鑑体験2「須磨」(ハーバード大学蔵)
2015.6.27_亀鑑体験3「鈴虫」(歴史民俗博物館蔵)
2017.6.23_亀鑑体験4「若紫」(国文学研究資料館蔵)


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 最後は、石見まちづくり協議会会長の吉澤晴美氏による閉会の挨拶です。

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 会場の片付けが終わってから、このイベントを盛り上げてくださったみなさんと一緒に、恒例の記念撮影です。今年も無事に一仕事を終えての満足感に満ちた「ハイ チーズ」です。

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会場を後にしてからは、これもいつものように受賞者と一緒に、池田亀鑑の文学碑の前で記念撮影です。

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 お疲れさん会を兼ねた懇親会は、これもいつもの「ふるさと日南邑」で開催です。みんなで大いに奮闘を讃え合い、今後の運営の話などで盛り上がりました。第8回でまた会いましょうと声をかけながら散会。そしてすぐに別室に移り、深夜まで語り合いました。
 地域のみなさまと日本文学の研究者との、いわば異文化交流会は、こうして2010年以来毎年、和やかに楽しく夢を語り合いながら展開しています。
さて来年は、どのような作品が選ばれ、どのような授賞式になるのか、今から楽しみです。
 
 
 
posted by genjiito at 23:18| Comment(0) | □池田亀鑑