2018年02月23日

高校の最終授業日は版木などを回覧

 昨年9月から担当することになった明浄高校の授業も、今日が最終回。
 休んで自習にしたのは1回だけだったので、過密スケジュールの日々の中にもかかわらず、毎週よく通ったと言えるでしょう。楽しかったので、あまり疲れは感じませんでした。

 今日は、午前中の現代文の時間に、今回芥川賞を受賞した石井遊佳さんの『百年泥』をとりあげました。丁寧に作成したプリントをもとにして、その特質を説明したのです。
 その中で、「熟れすぎ」という言葉が出て来ます(393頁上段)。これは「うれすぎ」と読みます。しかし、そのすぐ後に「熟みわれたパパイヤ」とあります(393頁下段)。この言葉に関して、私は恥ずかしながら読むことができず詰まってしまい、午後の授業までに調べて来ます、と答えました。しかし、電子辞書を持っていた生徒が、「熟み柿」を「うみがき」と読むと書いてあるので「うみ」とよむのではないですか、と言うのです。ごもっとも。まじめな生徒たちは、こうして私を助けてくれるのです。良い子たちです。

 午後の文学史の時間では、今回の回覧図書として、まずは架蔵の版木を回しました。これは、『古訓 古事記』の木版刷りのための版木です。表面と裏面の両面に文字が彫ってあります。叩くと、カンカンと、乾いたいい音がします。生徒たちは、江戸時代の印刷本の舞台裏を知り、初めて見て触るものに興味深そうでした。ペタペタ触り、匂いを嗅ぎ、叩いてみたり、文字をなぞったりしていました。

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 次に、お札に描かれた人のシリーズということで、まずは福沢諭吉の『学問のすゝめ』を回しました。
 薄っぺらい、12枚の紙を綴じた冊子です。有名な割には貧相なぺらぺらのパンフレットみたいなもので、意外だったようです。

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 続いて、樋口一葉の『たけくらべ』。一葉の自筆原稿を印刷したものです。文字はまったく読めないと。でも、若草色の装丁は気に入ったようです。

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 夏目漱石の『こゝろ』も回しました。

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 ちょうど、私と対となる別の現代文の時間に、この『こゝろ』を勉強しているところだそうです。来週からの学年末試験では、その『こゝろ』が試験範囲だったのです。教科書にも、上の角度からの写真が挿し絵として印刷されているとのこと。一人の生徒が、今勉強している教科書の挿し絵を見せてくれました。この写真を見ていたので、その教科書に載っているのとそっくりそのままの本が回ってきて、びっくりしたようです。タイムリーな本の回覧でした。

 いずれも複製本ながらも、よくできた参考資料といえるものです。とにかく触って感覚で覚えよう、と言って、毎回代表的な作品の複製本や原本まがいのものを持参して、回覧してきました。印刷された文学史の教科書だけでは、本というものの実態が見えません。本屋さんの文庫本コーナーのように、書名の羅列と思ってしまうと、作品が生まれた時代のことや読者の存在が見えません。少しでも実物に近いものを直に手で触ることで、作品の存在価値や歴史が実感できると思います。これは、今後とも続けていきたいことです。

 昨秋より、それまでの若い先生の後に突然こんなひ弱な老体が現われ、生徒たちはどう思っていたのでしょうか。それでも、今日は放課後に教室で掃除をしているところを見ながら、いろいろと世間話をしました。お爺ちゃんと思ってか、よくしゃべってくれます。
 この半年間、教材研究に四苦八苦しながらも、高校生を相手に稔りある日々となりました。来週は学年末試験です。私の教え方はともかく、精一杯テストと格闘してほしいと願っています。

 帰り際に、「インド、気ーつけてな」と声をかけてくれました。来週の26日(月)に、私はもうインドにいます。この生徒たちとも今日でお別れであることを、あらためて後追いで実感しました。
 
 
 
posted by genjiito at 21:03| Comment(0) | *身辺雑記