2018年02月07日

読書雑記(222)神田夏生『お点前頂戴いたします』

 『お点前頂戴いたします 泡沫亭あやかし茶の湯』(神田夏生、KADOKAWA、2017,11)を読みました。これまで読んでこなかった本などを、興味のおもむくままに手に取っては乱読中です。

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 高校生になった三軒和音は茶道部に入ります。校舎の裏手にある「泡沫亭」がその舞台です。そこは、化け物というよりも、あやかしとでも言うべき怪しげな者たちがお茶を飲む、摩訶不思議な場所になっていたのです。部長の湯季千里が笑顔であやかしたちにお点前をする、奇想天外な話が展開します。何気ない会話の連続ながら、一風変わった味のする物語です。ただし、私には軽すぎて、拍子抜けしました。
 次の「副音声」という表現上の工夫は、なかなかいいと思いました。立体的に楽しめるからです。ライトノベルにはよくあることかもしれません。あまり馴染んでいない私には、新鮮な語り口に思えました。

「モテモテですね、湯季先輩」
「あはは。羨ましいなら代わろうか、三軒。君にもこの幸せを味わってほしいからね」
副音声。他人ごとだからって面白がってんじゃねえぞ、代われ。
「やだなあ何言ってるんですか。鬼更が好きなのは湯季先輩なんですよ。しっかりその愛を受け止めてあげてくださいね。俺、心から祝福してますんで」
副音声。絶対代わりたくない。人に押し付けようとしないで、どうぞそのまま鬼更につきまとわれ続けてください。そうすれば俺は安全。
「そうだぞ湯季、私が婿にするのはおまえだけだ。同じ人間とはいえ、三軒みたいな軟弱者では話にならん」(172〜173頁)


 話は意外性を孕みながら、好き勝手に展開して行きます。その中に、お茶の心得がさりげなく語られます。例えば、山上宗二の茶書などが。

 学校を卒業すると、あやかしたちの姿は見えなくなります。卒業した葉真が好きだった狐珀のことが忘れられず、学校のお茶室「泡沫亭」で狐珀にお茶を点てます。「第三話 狐と、さよならの一服」では、見えない狐珀に語りかけながら展開します。虚空を相手に語りお茶を点てる場面は、情感の籠った場面となっています。それまでは、遊びの要素が多い物語でした。それが、ここでは一転して静寂の中に相手を想う語りに変身します。ここは読ませます。想像力を掻き立てます。
 この作者の作品は、機会があり、テーマさえ興味が合えば、また読んでみたいと思いました。【3】


書誌情報:文庫本のための書き下ろし
 
 
 
posted by genjiito at 21:36| Comment(0) | ■読書雑記