2017年11月01日

広島大学で開催されたタチアナ先生による古典の日公開講演会

 広島大学で開催された、11月1日・古典の日を記念する公開講演会に行ってきました。古典の日も、今日でちょうど10年。ロシアからお越しのタチアナ・ソコロワ・デリューシナ先生とお会いするのも10年ぶりです。お元気で何よりです、と握手をする手にも力が籠ります。

 大阪観光大学で私の科研のアルバイトをしている学生9人も同行です。本年4月から取り組んでいる科研のテーマは「海外における平安文学」。現在、ロシアで刊行された日本文学の翻訳本の整理などもしているところです。タイムリーな企画であり、いい勉強になるので、みんなを連れて出かけて来ました。

 大学は山の中にあります。紅葉が見事でした。

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 開会の前に、タチアナ先生とご一緒にお食事をしました。逸翁美術館の伊井春樹館長とは、ここで合流です。食事をしながら、多くの興味深い話を伺うことができました。最近モスクワでは、寿司とピザはデリバリーで取り寄せられる、とのことです。自宅で居ながらにして食べられるので便利になった、とのことでした。
 この時間帯に、広島大学の妹尾好信先生ゼミの3、4年生の学生さんが、私が引率してきた大阪観光大学1年生9人を大学のキャンパス案内に連れて行ってくださったのです。そしてラウンジで食事をしながら、先輩としてのいろいろな話もしてもらえたようです。理想的な学生の交流会となりました。私の方の学生には、ミャンマー、ベトナム、韓国、中国からの留学生がいました。異文化交流ともなったようで、得がたい体験をさせていただいたことになります。

 さて、会場の前には、タチアナ先生の翻訳書等が並んでいます。

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 タチアナ先生のご講演は、「翻訳家の目で見た日本古典文学の特徴」と題するものです。

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 優しい口調で、学生たちや留学生にもわかりやすく語ってくださいました。日本文学の上代から現代までを、ヨーロッパと日本の文学の特質やその違いに視点を定めてのお話です。
 具体的には、『万葉集』『古今集』『後撰集』『新古今集』から9首を引きながら、言葉を忠実に吟味した上で、先生独自の解釈をすることで、一首ごとの読みを展開なさいました。
 詩人でもあるタチアナ先生の本領が発揮された講演会でした。

 その後はフリートーキングです。タチアナ先生、伊井春樹先生、そして私の3人が登壇。私が進行役となりました。

 まずは、大阪観光大学で実施している翻訳本の展示を、スクリーンを使って紹介しました。世界各国、多くの言語で日本文学が翻訳されていることをここで確認します。
 引き続き、伊井先生と行ったモスクワでの写真を映写しました。
 このフリートーキングは、2006年8月に伊井先生と私がロシアへ調査に行ったことが契機となっているものです。モスクワで、タチアナ先生と伊井先生とが対談をなさったことを踏まえての企画なのです。11年前の対談の内容は、『世界が読み解く日本』(伊井春樹編、2008年、學燈社)に収録されています。その時私は、録音・記録・写真撮影を担当しました。
 次の2枚の写真は、11年前のものです。

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 そんなことがあったので、せっかく3人が今日は揃ったこともあり、その思い出話に始まり、日本文学がロシアでどう読まれているか、とか、海外で日本文学が翻訳されている事情などに関連づけて、会場にお越しのみなさまのために優しく語りかけることになったのです。主催者である広島大学の妹尾好信先生の発案です。

 その準備のために、昨夜は11年前のモスクワでの写真をスクリーに映写するための写真選びをしながら、伊井先生と電話やメールでの打ち合わせに没頭していました。

 来場者はロシアのイメージをまったくお持ちではないと思われます。そこでスライドによって、まずは街中や大学の様子を見ていただきました。

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 17枚のスライドを見てもらいながら、タチアナ先生と伊井先生のお話を引き出すように心掛けました。

 最初に、伊井先生が古典の日の意義や、本日のタチアナ先生の講演のまとめをしてくださいました。

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 フリートークでは、本日の講演で語られなかったことなどを、タチアナ先生に自由に語っていただきました。講演では触れられなかった、『源氏物語』の翻訳の背景に始まり、ロシアにおける日本文学研究の現況などが浮き彫りになりました。

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タチアナ先生のお話は、おおよそ以下のようなことでした。

・『源氏物語』は長編であっても、断片的な短編から成り立っている。
・ロシア語訳の出版に至るまでの手続きや、翻訳するにあたっての問題点。
・和歌や敬語の訳はできないし、登場人物に名前がないことには工夫がいる。


 会場から質問もありました。
 『源氏物語』の翻訳を始めた巻は? との問いかけには、「桐壺」から順番にとのお答えでした。
 ロシアの古典文学の読者はどういう人か、とも。これについては、本屋の店頭にはあまり出ていないので、インターネットで買われているためによくはわからないそうです。
 また、誰が読んでいるのかは、これもよくわからないようです。
 旧ソ連時代は現代文学が翻訳できなかったので、古典文学が翻訳されていたことなどなど、さまざまな話題が提示されました。

 急ごしらえのフリートークだったので、来場者や学生さんたちに、お2人の先生のお考えがうまく伝わったのか気になっていました。しかし、閉会後、好意的な反応が多く聞こえてきたので、無事に役目は果たせたようで安堵しています。

 最後に、みんなで記念撮影をしました。若者が多く集まった講演会でした。

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 主催者である妹尾先生には、昨夜から今日のためのスライド写真を添付ファイルで送るなど、いろいろと面倒なことでお世話になりました。
 また、溝渕先生は、講演会の運営にあたっての、さまざまな気遣いをなさっていました。
 そして何よりも、昨日成田と羽田経由で来日されて時差ボケもものともせず、多くの示唆に富むお話をしていただいたタチアナ先生に感謝します。本当にありがとうございました。意義深い公開講演会でした。そして、みなさま、お疲れさまでした。当初の溝渕先生のご予定では、小さな会だったそうです。それが妹尾先生のアイデアで膨れあがり、伊井先生や私などにも出番がまわってきて、こんなに盛大な公開講演会として結実し、大成功となったのです。

 大阪から参加した9人の学生たちも、1年生という右も左もわからないながらも、貴重な勉強と異文化体験をしたようです。ここで得たものを今後に活かして、稔り多い学生生活を送ってほしいと願っています。
 
 
 
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎国際交流