2017年03月15日

[補訂]科研に関する印刷版の報告書が3冊できました

 今年が最終年度となる科研の報告書は、すでに電子版としてウェブ上に公開しています。しかし、図書館やインターネットの環境が整っていない方々から、印刷した本として利用できるようにしてほしい、という要望をかねてよりいただいていました。

 電子版で成果を公開することには、編集製作の迅速さ、内容の多彩さ豊富さ、資料の充実、そして世界各国の方々に届けられる、というさまざまな利点があります。ただし、前述の通り、利用環境によっては不便なこともあります。
 そうしたことを勘案して、最終年度となる今年度は印刷費を計上し、公開したデータを再編集して印刷し製本しました。

 次の写真は、出来たばかりの報告書です。
 左から、『合冊 海外平安文学研究ジャーナル Vol.1-3』『合冊 海外平安文学研究ジャーナル Vol.4-6』『日本古典文学翻訳事典2〈平安外語編〉』の3冊の書影です。共に、日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(A)(課題番号25244012︰平成25〜28年)で採択された、「海外における源氏物語を中心とした平安文学及び各国語翻訳に関する総合的調査研究」の成果物です。

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 この印刷体の報告書が、本日お昼にやっと、国文学研究資料館の研究室に搬入されました。
 いろいろな事情があり、印刷・納本が大幅に遅れたのです。さらに、『日本古典文学翻訳事典2〈平安外語編〉』においては、印刷と製本で不備がいろいろと見つかり、一冊ずつ目視で点検をすることになりました。そして、普通に渡せる本、少し難のある本、作り直すしかない本に仕分けをするという、何とも時間と労力の無駄としか言いようのないことを強いられました。12月22日には電子版としてネットに公開したデータを印刷製本するだけの、極めて単純な作業を依頼したつもりでした。それが、今ごろ納品となり、しかも製本は不備だらけという為体です。あまりにも酷いものは業者に持ち帰ってもらい、作り直しとなりました。実は、こうしたやり直しは、『日本古典文学翻訳事典1〈英語改訂編〉』の時にもありました。安かろう悪かろうを地で行く話には事欠きません。定年退職間際の最後の仕事がこんな杜撰なものとなり、失望しているところです。それはともかく、気を取り直して、気分一新で対処していくしかありません。

 さて、本研究では、約3年半にわたり、日本古典文学作品の翻訳の問題に取り組んできました。
 そして、この研究期間に6冊の研究誌としての『海外平安文学研究ジャーナル』を電子版として発行しました。今回、印刷本を作成するにあたり、第1号から第3号までを一冊の合本に、第4号から第6号までを一冊の合本という、2冊の書籍体にしました。
 それぞれの巻頭に、次のような目次を付けました。

『《合冊》海外平安文学研究ジャーナル』


《ジャーナル1〜3号・目次》


【海外平安文学研究ジャーナル1号】
○創刊の辞 伊藤 鉄也 p3
●研究論文
スペイン語版『源氏物語』の評価と享受 高木 香世子 p9
『源氏物語』の「京都」はどう英訳されたか? 創造された京都と、変貌する『源氏物語』 ? 須藤 圭 p37
●小論文
ベーネル訳『源氏物語』における和歌の翻訳 ?英訳・仏訳との比較から? 常田 槙子 p58
●翻訳レポート Traduttore traditore ?イタリアが恋に落ちた『源氏物語』? イザベラ ディオニシオ p69
○執筆者一覧 p77/科研活動報告 p78/編集後記 p82/研究組織 p83

【海外平安文学研究ジャーナル2号】
○あいさつ 伊藤 鉄也 p3
原稿執筆要項 p.4
●特集「国際研究交流集会」(2014カナダ)
カナダ国際研究交流集会特集 英訳された『枕草子』が作り出した大衆文化 ゲルガナ・イワノワ p11
カナダ国際研究交流集会特集 小説として読まれた英訳源氏物語 緑川 眞知子 p22
カナダ国際研究交流集会特集 1955 年のサイデンステッカー訳蜻蛉日記について 川内 有子 p37
カナダ国際研究交流集会レポート 海野圭介 p50
カナダ国際研究交流集会特集 新出資料『蜻蛉日記新釈』(上・下) 伊藤鉄也 淺川槙子 p54
●研究の最前線
『源氏物語』韓国語訳と李美淑注解『ゲンジモノガタリ1』 李美淑 p63
スペイン語に訳された『源氏物語』の書誌について 淺川槙子 p69
○執筆者一覧 p83/編集後記 p84/研究組織 p85

【海外平安文学研究ジャーナル3号】
○あいさつ 伊藤 鉄也 p3
 原稿執筆要項 p.4
●研究会拾遺 
モンゴル語訳『源氏物語』について 伊藤鉄也 p11
(参考資料:各国語訳『源氏物語』翻訳時に省略された場面の一覧)
『源氏物語』末松英訳初版表紙のバリエーションについて ラリー・ウォーカー p42
《コラム》 日本でも出版された末松謙澄訳『源氏物語』 淺川槙子 p46
 各国語訳『源氏物語』「桐壺」について 淺川槙子 p48
 各国語訳「桐壺」翻訳データについてのディスカッション報告 p77
●翻訳の現場から 
『十帖源氏』の英訳の感想  ジョン・C・カーン p87
 『十帖源氏』英訳所感 緑川眞知子  p89
 『十帖源氏』スペイン語翻訳における文化的レファレンスの取り扱い 猪瀬博子  p91
『十帖源氏』「桐壺」巻のウルドゥー語訳によせて  村上明香  p99
●研究の最前線  
スペインにおける平安文学事情 清水憲男  p105
新刊紹介:朴光華著『源氏物語?韓国語訳注?』(桐壺巻) 厳教欽  p109
○付録 p118/執筆者一覧 p187/編集後記 p188/研究組織 p189

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『《合冊》海外平安文学研究ジャーナル』


《ジャーナル4〜6号・目次》


【海外平安文学研究ジャーナル4号】
○あいさつ 伊藤 鉄也 p3
原稿執筆要項 p4
●研究論文 
ロシア語訳『源氏物語』とウォッシュバーンによる 新英訳の比較研究~<語り>・和歌・「もののあはれ」の観点から 土田久美子 p11
スペイン語版『伊勢物語』について 雨野弥生 p37
●研究会
ウルドゥー語訳『源氏物語』の完本発見 伊藤鉄也 p51
●翻訳の現場から 
「十帖源氏」ヒンディー語訳の問題点 菊池智子 p61
ウルドゥー語版『源氏物語』の色の世界 村上明香 p65
『十帖源氏』の多言語翻訳と系図について~「母の堅子」と「祖父の惟正」はどこから来てどこへ行ったのか 淺川槙子 p76
○付録 p99/執筆者一覧 p167/編集後記 p168/研究組織 p169

【海外平安文学研究ジャーナル5号】
○あいさつ 伊藤 鉄也 p3
原稿執筆要項 p4
●研究論文 「中譯本《源氏物語》試論?以光源氏的風流形象為例」 朱秋而(翻訳:庄?淳) p11
翻訳にあたって 庄?淳 p33
「忠こそ物語」と継子いじめ譚 趙俊槐 p34
●研究会拾遺 
ウォッシュバーン訳『源氏物語』の問題点 緑川眞知子 p61
スペイン語版・英語版・フランス語版『伊勢物語』7 種における官職名の訳語対照表 雨野弥生 p76
○付録p85/執筆者一覧 p105/編集後記 p106/研究組織 p107

【海外平安文学研究ジャーナル6号】
○あいさつ 伊藤 鉄也 p3
原稿執筆要項 p4
●研究論文 
『十帖源氏』の本文と各種版本ー和歌の異文と解釈の問題ー 清水婦久子 p11
母語話者・非母語話者によるロシア語訳『十帖源氏』桐壺巻比較考ー母語話者による翻訳に見る日本文化の受容ー 土田久美子 p29
「交じらふ」女主人公ージェンダーコードの視点から読む『とりかへばや物語』 庄?淳 p39
●研究の最前線
「訳し戻し」という翻訳 藤井由紀子 p61
英訳『今昔物語集』兵と戦いの世界 淺川槙子 p65
●科研活動報告
科研活動報告vol.2  加々良惠子 p93
○付録/執筆者一覧/編集後記/研究組織


 この『海外平安文学研究ジャーナル』の性格がわかるように、以下に第6号に寄せた研究代表者としての私の挨拶文を引きます。

 2013年にスタートした本科研の課題も、2017年3月をもって無事に終えることとなりました。
 この間にご協力いただきましたみなさまに、心よりお礼申し上げます。
 その成果物としてのオンライン版『海外平安文学研究ジャーナル』(ISSN:2188ー8035)は、今回の6冊目で最終号となります。2014年秋に創刊して以来、みなさまの変わらぬご理解とご支援をいただき、順調に号を重ねることができました。関係者のみなさまに、あらためてお礼を申し上げます。

 さて、今号では、『十帖源氏』の多言語翻訳に取り組んでいる中で、原本に関する論考やロシア語訳の問題点などを掲載しました。『とりかへばや物語』の考察も興味深いものです。国際的、学際的な視点でお読みいただけると幸いです。
 付録には、『源氏物語』の中国語訳として「桐壺」を収載しました。ことばによる翻訳を通して文化の変容を考える際には、貴重な資料となるはずです。幅広く活用していただけると幸いです。

 なお、科研費による研究成果としての『海外平安文学研究ジャーナル』は、ここでひとまず終刊となります。しかし、オンラインジャーナルとしては、これまで通りのサイトから引き続き発行いたします。第7号からの発行母体は変わっても、その基本的な方針はそのままに、さらにバージョンアップして続刊していくつもりです。
 本課題では、国際的な視野で日本文学および日本文化を見つめることを意識して、さまざまな問題に取り組んでいきます。今後とも、多角的な視点で平安文学を論じた、みなさまからの意欲的な投稿を歓迎します。


 次は、上掲写真右端の『日本古典文学翻訳事典2〈平安外語編〉』です。
 初年度の報告書は『日本古典文学翻訳事典1〈英語改訂編〉』でした。当時も今も、いまだ類書がないので、それにひき続き、平安時代の文学作品を世界各国の言語で翻訳された書物の情報を整理しました。特にこの2冊目は、英語以外の各国語に翻訳された平安文学作品を対象としています。
 本事典の巻頭に、次の挨拶文を置きました。本書のなりたちがよくわかるので、これもそのまま引用します。

はじめに

−試行版としての事典であること−


 本書は、『日本古典文学翻訳事典〈1・英語改訂編〉』(平成26年3月)を受けて、平安時代の文学作品に限定して世界各国語に翻訳された書籍情報を事典としてまとめたものです。前著に続き、あくまでも暫定的なものであり、試行版として編集した中間報告であることを、まずはお断りしておきます。

 この翻訳事典は前著同様に、2006年4月23日にお亡くなりになった、国文学研究資料館名誉教授福田秀一先生から託されていたメモを最大限に活用しました。
 ただし、多言語にわたる書籍を対象とする関係で、各項目のまとめ方も含めて、まだまだ不備の多いものであること承知しています。また、最新情報にまでは、十分に手が及んでいないことも承知しています。
そのことを知りつつも、類書がないこともあり、ここで私の手元にある情報をとりあえず一まとめにしておくことにしました。これを次の世代に引き渡して補訂してもらい、さらに追加していくことで、よりよい事典に育てていく始発点にしたいと思っています。

 本書作成にあたっては、実に多くの方々が原稿作成のお手伝いをしてくださいました。基本的な情報が整理されていないのであれば、とにかくたたき台でも提示して、それに手を加えながら形を成していく方針で臨みました。項目の執筆者は、必ずしも各言語や各作品の専門家ではありません。しかし、何もない平地に道をつけることを一大方針として取り組んだものということで、至らないところはご寛恕のほどを、お願いいたしたす。ご批判は、そのまま改訂版に活かします。

 そのような経緯もあり、日本古典文学に関する翻訳事典としては、各項目の立項はもとより、内容もいまだ未整理の状態にあります。今回、その見出し項目と表記上の体裁及び、内容に関する記述の統一を試みました。それでも、いろいろな機会に、多くの方々に執筆していただいた原稿の集積であることから、不統一の感は免れません。各所に編者の判断で多くの手を入れました。あくまでも暫定的な処置に留まるものです。

 そのことを承知で、この時点で公開することにしたのは、これを叩き台とし、より良い情報の提供とご教示を受ける中で、さらに充実した事典に育てたいとの思いからです。まさに本冊子は、試行錯誤の中でまとめた暫定版として利用に供する事典です。

 また、盛り込まれた情報は、編者伊藤が運用する科研のホームページ「海外源氏情報」にも公開しています。
http://genjiito.org
 このホームページを通して、情報の更新を行います。折々に最新情報を確認していただき、翻訳情報を活用していただければ幸いです。

 今回も、この科研を支えているプロジェクト研究員の淺川槙子、技術補佐員の加々良恵子の頼もしい2人が奮闘して、膨大な情報を整理して組み立ててくれました。ただし、『源氏物語』については単独で1冊にするため、本書には収録していません。

 みなさまからの情報提供により、各項目の精度を高めたいと思います。
 今後とも、ご理解とご協力を、よろしくお願いいたします。


 いろいろのことがあったにせよ、この3冊の印刷体の報告書は、プロジェクト研究員の淺川槙子さんと技術補佐員の加々良惠子さんの献身的な支援なくしては成し得なかったものです。すばらしい仲間に恵まれたことに感謝しています。
 完成したばかりの印刷版はもとより、ウェブに公開している電子版共々、本研究のさらなる展開のためにも、今後ともご教示のほどをよろしくお願いいたします。
 
 
 

posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | 古典文学