2015年11月12日

日比谷でハーバード本「蜻蛉」巻を読む(その23)

 今日は変体仮名に関してお話することが多すぎて、写本の翻字を確認するのはわずかでした。
 20オモテ3行目から最終行である10行目までを、終わる直前に何とか確認するに留まりました。
 ちょうど今は変体仮名に関するニュースが多い時期だったから、ということでお許しください。

 まずは、国文学研究資料館が開催する国際連携研究「日本文学フォルム」という第3回国際シンポジウムの宣伝からです。
 これは、私が代表者となっているイベントであり、12月12日(土)に開催されるものです。今年度のテーマは「時間を翻訳する」となっています。開催が近づきましたら、またここで紹介します。

 次は、新聞記事をもとにして、現在話題となっている、変体仮名をスマホで学ぶアプリの新聞記事(讀売新聞、2015年11月3日(水))を紹介しながら、変体仮名が今やブームになっていることをお知らせしました。
 これは、早稲田大学と大阪大学で取り組みが進んでいるものです。


(1)「変体仮名あぷり」 早稲田大学とUCLAが開発
  変体仮名の読解能力をゲーム感覚で身につけられるスマートフォンアプリ
    Android版とiOS版をリリース。
     http://www.waseda.jp/top/news/34162

(2)大阪大学の飯倉洋一先生のプロジェクト 科研(挑戦的萌芽研究)
  「日本語の歴史的典籍に関する国際的教育プログラムの開発」
    くずし字をスマホで学習するアプリの開発中
    「KuLA(Kuzushi-zi Leaning Application))」
     http://bokyakusanjin.seesaa.net/article/428414317.html
   「くずし字教育プロジェクト」
     https://plus.google.com/104467959383842469455/posts
(3)国立国語研究所が「学術情報交換用変体仮名」データベース試験公開
     文字画像のPNG/JPGファイルをCCライセンスで提供
     http://kana.ninjal.ac.jp/


 この話をしたら、早速ダウンロードしておられる方がいらっしゃいました。
 変体仮名の受け入れ環境は、着実に形成されていることを実感します。大歓迎です。

 前回の講座のブログ記事(「は」のこと)と、過日実施した放送大学での講座のブログ記事(「お」のこと)も、プリントを参照しながら問題点を確認しました。

 最近私の手元に届いた、ハーバード本「須磨」の冒頭部分を全盲の方が筆写されたものは、少し時間をかけて説明しました。指で立体コピーを触りながら、それを鉛筆で書写していかれたものです。
 5行分です。しかし、この書写された文字は、いろいろなことを考えさせてもらえます。貴重な資料です。
 これについては、後日あらためて紹介しようと思っています。

 今日は、谷崎潤一郎の『春琴抄』の初版本(昭和8年12月刊行、創元社)の装幀と表記についても、時間をかけてお話しました。


151112_syunkin1




 まずは、次の冒頭部分をみなさんと一緒に、手持ちの録音素材を流しながら確認しました。


151112_syunkin2




 この冒頭1頁だけでも、ここに出てくる変体仮名は、次のものが確認できます。


本 連 里 春 古 能 阿 志


 この本は昭和8年(1933年)刊行なので、今から82年前になります。その本の文章が、読み出して3文字目の「本んたう」から、もう読めない方が大多数でしょう。

 日本のひらがなのありようは、明治33年に1つに制限されてから、しだいに読めなくなりました。
 今では、変体仮名とされるものは、ほとんどの日本人が読めなくなってしまっているのです。
 この谷崎潤一郎の『春琴抄』などは、そのいい例といえるでしょう。

 こうした中で、ユニコードに変体仮名が認められる流れが生まれたり、スマホのアプリに変体仮名をゲーム感覚で覚えるものが登場しているのです。

 これからの若者たちが、変体仮名を自由に読める環境が整いつつあります。
 『源氏物語』の古写本を変体仮名に注目しながら読むことは、これからますます求められる学習の1つとなることでしょう。

 さらに今日は、名古屋工業大学で開発が進んでいる古写本の音読システム「音で読む機器の開発」の紹介も、YouTubeを映写しながら説明しました。


 そんなこんなで、さまざまなことを話しているうちに、あっという間に時間が経ってしまったのです。
 参加のみなさま、どうもお疲れさまでした。
posted by genjiito at 22:09| Comment(0) | ◎NPO活動