2015年10月09日

名工大で触読への想いが実現する予感

 名古屋工業大学へ行くために、東京駅で京葉線から新幹線に乗り換える途中のことです。
 エスカレータの手すりが、とにかく酷く汚れているのに出くわしました。


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 「つ」の所で白く光っているのは、撮影時の光線の具合ではなくて、白い紙かサロンパスのようなものがへばり付いていました。透明の幅広の粘着テープで補修されている箇所もあります。
 とにかく、こんな汚い手すりを摑む人などはいません。無神経な駅の施設管理です。

 駅では百年イベントを展開しています。しかし、もっと足元の不衛生で不潔な環境と、駅員の心構えの浄化が先決問題です。海外からお越しの旅人に対して、恥ずかしい思いをしています。

 品川を出て、しばらくしてからでした。

「ただいま、右手に富士山が見えています。雪をいただかない富士山は、われわれ新幹線に乗務する者もめったに見られません。しばし、車窓からお楽しみください。」

という、新幹線の車内放送が耳に届きました。

 早速、ポケットからカメラを取り出して、窓越しに収めました。


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 ちょうど40年前の今ごろ、私の結婚を祝して父が
「錦繍の車窓いっぱい富士の山」
という川柳をよんでくれました。
 今、このお山も、その錦を着る準備をしているのでしょう。

 毎週のように乗る新幹線です。そんな中で、事務的なお知らせとは違う、こんな車内アナウンスもいいものです。
 車掌さんのお人柄でしょうか。

 旧国鉄のままに、サービス精神の欠片もないJRです。こんな頻繁に利用しているのに、ポイントを貯めるとグリーン車に座れるだけという、人を喰った話が唯一のサービスです。未だに親方日の丸の鉄道会社です。
 電車がひっくり返らないのが最大最高のサービスだと、無理やり思うことにして、我慢して新幹線に乗っています。

 愚にもつかない駄弁はこれくらいにしておきましょう。

 名古屋駅から中央線に乗り換えて2つ目の、鶴舞駅のすぐそばに大学はありました。


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 校門で、今日の面談者である、大学院生の森川慧一さんの出迎えを受けました。福島県立盲学校の渡邊さんが仲立ちをしてくださり、何度か来ようと思いながら、なかなか日程が合いませんでした。やっと実現です。


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 写真中央の森川さんは、名古屋工業大学大学院工学研究科社会工学専攻マネジメント分野橋本研究室に所属の学生さんです。今日は、指導教授の橋本芳宏先生はご多忙のご様子で、名刺が託されていました。異分野の先生とはいえ、次の機会を楽しみにしています。

 森川さんの仲間である、写真左の情報解析技術課技術専門職員の石丸宏一さんと、写真右の学部3年生の肌野喜一さんが同席です。私の不躾な質問にも、丁寧に答えていただきました。気楽に話ができて、稔り多い時間となりました。
 この3人は、これからの活躍が楽しみです。

 森川さんが開発された障害者用の機器を見せてもらいました。
 上掲写真の下半分に写っているのがそれです。

 そして、まずは基本的な説明を聞きました。
 「タッチパネルとパソコンを使用した音声触図学習システム」です。
 上掲の写真にあるように、地図を使っての触図学習です。

 ネット等で大凡は理解していたので、単刀直入に私の問題意識との接点を探りました。
 そして、目の前にあるパネルが、すぐに私が探し求めていたものであることがわかりました。

 後は、持参した古写本『源氏物語』の立体コピーを開発中の機器に乗せて、具体的な可能性について話し合いました。


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 今回開発されたシステムは、タッチパネル上に置いたA4判の立体コピーをタップすることで、あらかじめそのポイントに仕組まれた音声が聞こえる、という仕掛けに転用できる可能性が高いものです。

 このシステムを、地図で実演してもらいました。これは、そのまま私が考えている古写本の触読を支援する道具となります。

 上掲の写真で言えば、「須磨」巻の巻頭部の「よの中」の「よ」を指で押すと、
「〈よ〉は現在一般に使われている平仮名で書かれています。与えるという漢字〈与〉が崩れた草書体の文字です。」
と音声で教えてくれたらいいのです。

 次の文字である「の」を触ると、
「〈の〉は、現在一般に使われている平仮名であり、元の漢字の姿を留めた、あまり崩れていない字です。」

 さらに3文字目を触ると、
「〈中〉は漢字なので、読みとばしましょう!!」
としましょうか。

 漢字の触読はパスすることにしています。現在のところでは、漢字の触読は困難だと判断しています。あくまでも、ひらがなの触読を習得するプロセスを調査研究しているところなのです。

 これなら、目の前の森川さんが作り上げたシステムに少し手直しをすれば、いますぐにでも私が求めている古写本の触読システムは実現するはずです。

 地図を元にしたデモを拝見した後に、私から提案したことは以下の通りです。

(1)パネルとパソコンは切り離してほしい。
 目が見えない人にとって、パソコンが付随していると、キーやマウスの操作にじゃまをされて、本来の写本を読む目的に集中できません。また、視覚障害者にキーがたくさん並んだパソコンの操作を求めてはいけない、という基本的なスタンスも守りたいのです。

(2)パネルのUSBケーブルはなくしてほしい。
 これは、じゃまな付属物です。できるだけシンプルな道具がいいと思います。

(3)パネルに切り替えスイッチを付けてほしい。
 このスイッチのオン/オフによって、一文字の説明や一語の説明に切り替えられるのになればいいですね。

(4)パソコンの代わりにiPhoneやiPad などの携帯情報端末を利用する。
 iPhoneやiPad などの携帯端末には、スピーカーやマイクが付いています。これを活用すると、音声による機器のコントロールがしやすくなることでしょう。

(5)パネルからブルートゥースでiPhone と通信することで、容易にネットワークに接続した環境の中で触読ができるようになる。
 常にネットにつながった環境だと、疑問点の解消や、さらなる解説で触読を支援できます。

(6)情報のやりとりのために、携帯端末用のアプリを開発する。
 このアプリの更新により、ハードウェアへの負担を軽減できます。

(7)音読や解説に関するデータはクラウドに置く。
 触読のためのデータをクラウドに置くことで、情報の更新や追加が随時できるようになります。また、利用者のレベルに合わせた情報の提供にもつながります。

(8)液晶のタッチパネルは、今の1点だけを感知するものではなくて、複数の点を感知するものにしてほしい。
 それにより、ダブルタップやトリプルタップのみならず、2本指や3本指での触読が可能となるのです。ドラッグによって、文字を範囲指定して触読することもできるでしょう。
 もっとも、そうするとパネルの価格が2、3倍にもなるそうです。しかし、ここは譲れない所です。

(9)Macintoshでも稼働するシステムにすること。
 Windowsに頼っていては、創造的なものは生まれません。その前に、私が試用できないのです。そうでなければ、Macintoshで作り上げたものを、Windowsに移植すればいいのです。『CD-ROM 角川古典大観 源氏物語』(伊井春樹編、1999年)の構成と検索システムがそうであったように。

 この、私が提案したことが実現すれば、目が見えない人が今から700年も前に筆で書かれた写本を、容易に読むことができる環境が提示できるようになります。また、レベルアップを目指した学習システムも、スムーズに構築できることでしょう。

 この取り組みからの成果は、近日中に姿を見せるはずです。
 次の面談は、1ヶ月後に設定しましたので、ここであらためて森川さんにプレッシャーをかけておきましょう。
 
 とにかく、昨日のブログに書いたように、いろいろなことがおもしろい展開となっています。
 そして私は、人と人との楽しい縁を満喫しています。
 すばらしい若者たちとの出会いに恵まれています。続きを読む
posted by genjiito at 23:44| Comment(0) | ◎源氏物語