2015年10月06日

藤田宜永通読(24)藤田宜永『探偵・竹花 潜入調査』

 藤田宜永『探偵・竹花 潜入調査』(光文社、2013.10)を読みました。


151006_sennyu




 短編4本を収録しています。前半の2編の評価はともかく、最後の「潜入調査」はいいと思いました。

■「ピンク色の霊安室」
 テンポよく、読者を引き付けながら話が展開します。ニューハーフをめぐる、おもしろい話です。
 ただし、犯人が明かされる場面が、それまでの流れのように勢いがありません。また、最後のまとめかたも、いつものように平凡すぎて話が流れてしまっています。この作者の課題です。【2】
 
初出誌:『宝石 ザ ミステリー』(2011年)
 
 
■「タワーは語る」
 盗聴器が話題になる話なので、その展開を興味を持って期待しました。しかし、後半が肩透かしです。失速して着地に失敗したのが残念です。【1】
 
初出誌:『小説宝石 十月号』(2012年)
 
 
■「あの人は誰?」
 人間が持つ過去に拘る中で、さまざまなつながりが解されていきます。軽快な語り口で、久しぶりに軽めの藤田ワールドを味わえました。人の心に踏み込まない、人間関係と人の温かさが、いい雰囲気を醸し出しています。【4】
 
初出誌:『宝石 ザ ミステリー』(2012年)
 
 
■「潜入調査」
 物語の背景に、昭和という時代を回顧するイメージが明滅します。作者が私と同じ歳なので、話題が共有できて2倍楽しめました。
 探偵という職業がうまく描かれています。主人公である竹花は、人の心に潜入するのがうまい探偵です。回想が巧みにちりばめられた、完成度の高い作品に仕上がりました。【4】
 
初出誌:『小説宝石 九月号』(2013年)
posted by genjiito at 22:22| Comment(0) | □藤田通読