2015年05月19日

京洛逍遥(356)一条通りの「とねりこ落語会」

 京都御所に面した和菓子のとらやさんの南筋、一条通りを西進した新町通り西入ル北側で、ささやかな落語会がありました。

 この一条通りは、平安時代には葵祭の行列が賀茂川に向かって進んだところです。『源氏物語』の「葵」巻では、斎院御禊に参加する光源氏を一目見ようとする人々の中に、六条御息所と葵の上がいました。桟敷や物見車が立ち並び、有名な車争いの場面となったのがこの一条通りとされています。道幅は30メートルほどあったそうです。しかし、今は車一台が通れる程度の狭い道です。
 次の写真は東向きに見たもので、正面の木々が今の京都御所です。


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 ちょうどこの日は、寺町通り六角下ルの誓願寺で、楽笑会の新緑落語会が同じ時間帯にありました。どちらに行くかを思案した末に、行ったことのない小さな落語会の方にしました。

 そこは、「第9回 とねりこ落語会」(とねりこの家)と言って、地元の方々がお笑いを楽しんでおられる場所でした。


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 小さな会場にもかかわらず、40人ほどでぎっしりと埋まりました。九割方が高齢者です。みなさん、お仲間のようです。


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 落語二席の内の最初は、笑福亭飛梅さんでした。
 名前にちなんだ枕で、菅原道真の歌を「あるじなきとて」とおっしゃっていました。ここは、「あるじなしとて」のほうが一般的でしょう。
 なお、この歌の最後は「春な忘れそ」「春を忘るな」「春ぞ忘るな」という異伝もあるようです。
 この日の飛梅さんが、この最後の句をどう言われたのか、今は思い出せません。
 細かなことで、どうでもいいことですが……

 第4回池田亀鑑賞の受賞作品が滝川幸司氏の『菅原道真論』で、来月27日に日南町で開催される授賞式でお目にかかります。この有名な「東風吹かば」の歌について、いろいろと教えてもらうことにします。

 飛梅さんは、若いのによく稽古をしておられるようです。滑らかで、聞きやすい噺でした。
 この日のお題は、告知されていませんでした。飛梅さんの話は、その内容から「道具屋」です。桂枝雀の落語で何度も聴いた噺です。

 続いて、笑福亭晃瓶さんです。
 客席の方々を巻き込んだ、地元に関係する長い枕の後、この日のお題は「桃太郎」でした。
 子供の理屈っぽい物言いが、ことば巧みに語られました。会場は爆笑続きです。楽しく聞きました。
 晃瓶さんは、この落語会の初回から参加しておられるとのことで、これで9回目になるそうです。継続することによって、この地域や人々の信頼を勝ち得ておられます。

 師弟関係はよくわかりません。お二人とも、鶴瓶さんの流れのお弟子さん筋のようです。
 現在、噺家といわれる人は、大阪に250人、東京では500人ほどおられるそうです。テレビなどで見かけるのは、ほんの一部なのです。

 落語の後は、晃瓶さんからの差し入れの和菓子が配られました。私は、きなこ餅を選びました。お茶と一緒に、入口で手渡されたクッキーの詰め合わせも口にして、おいしくいただきました。

 この寄席は、地域に密着したコミュニケーションの場となっています。
 通り掛かりでは入り難いし、馴染めない居心地の悪さがあるかもしれません。
 関西特有の馴れ馴れしさに、違和感を抱かれる方もいらっしゃることでしょう。
 しかし、そこがおもしろいし、主客一体となった自由気儘な掛け合いは必見です。

 関西のおばちゃんのノリの良さは絶品です。それはよく知られているとしても、今日わかったことは、おじさんたちも気心知れた雰囲気の中では、おもしろおかしく反応しておられたのは意外でした。
 即興即応の妙が、まさに目の前で展開するのですから、こんなおもしろい場に身を置く楽しみを逃す手はありません。

 盆踊りの例でいえば、私は音頭取りの歌に合わせる踊り子ではなくて、その盆踊りをまわりから観て楽しむ気持ちで参加しました。
 地域参加型のイベントの場合は、こうした車間距離の保ち方が必要です。
 当分は、こうした場所にも、気ままに脚を向けたいと思います。

 主催なさっているみなさんと落語家さんの、ますますの活躍が楽しみです。
 機会があれば、また行きたいと思っています。
posted by genjiito at 23:26| Comment(0) | ◎京洛逍遥