2014年11月07日

放送大学で4コマ連続の講義をする

 今日は、茗荷谷にある放送大学の東京文京学習センターで、85分の面接授業を4コマ連続でやりました。


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 日頃から授業をする習慣がないので、果たして身体が持つのか不安でした。しかし、大過なく、楽しくお話ができました。また、生徒のみなさんが積極的に意見や質問を投げかけてこられたので、楽しい交流もできました。活発にご自分の意見をおっしゃる方が多かったので、活気が部屋中に感じられていい授業だったと思います。これは、私よりも学生さんたちのやる気から生まれたものです。

 今日は、次の4つの内容を用意しました。


第1回 アメリカにある『源氏物語』−ハーバード大学本と米国議会図書館本−
第2回 『源氏物語』の本文のこと−異本異文といわれる物語本文の確認−
第3回 ハーバード本「須磨」を読む(1)−使われている字母のおもしろさ
第4回 ハーバード本「須磨」を読む(2)−どちらにでも読めるかな文字−


 プロジェクターを使って、ハーバード大学や議会図書館本の様子を見ていただきました。受講者のみんさんも、一緒に調査に行ったかのような気分になっていただくためです。

 次は、日本最古の平仮名が書かれた、藤原良相邸で出土した土器に記された平仮名です。9世紀後半に、今に通じる平仮名が書かれていた土器が、2年前に京都の地下から出てきたのです。

 また、平仮名について一般的には、楷書を崩したものが行書や草書になった、と説明されています。しかし、最近は次のような考え方が示されています。


中国においては、木簡に書くための書体=隷書体がまずあり、それが紙に書くための書体=楷書体に移行した。ここには時間の経過がある。そして隷書体が成立した時点で、さほど丁寧に書かない場合に用いる「草書体」が発生していた。日本には「正隷書体」と「草隷書体=草書体」とがまず伝わり、あまり時間を置かずに、「楷書体」が伝わった。それが藤原宮木簡と平城宮木簡との書体の違いとなって現われている。この「草書体」の延長線上にうまれたのが平仮名であると考えればよいのではないだろうか。」(『かなづかいの歴史』今野真二、中公新書、13頁、2014年2月)


 つまり、楷書体が成立する以前から、草書体があった、という指摘です。この考え方に関して、私は何も賛否に組する資料を持ち合わせてはいません。しかし、単純に、楷書体⇨行書体⇨草書体と、字体の推移を確認して終わり、ではないようです。

 このことを断ってから、今の字体に固定された明治33年を軸にして、明治6年には今の「え」は「江」であったり、明治19年には「路」や「者」が平仮名として使われていた事実を、当時の文部省が発行していた資料で確認しました。
 同時に、今私が一番感心のある点字についても、平仮名の統一化とともに説明しました。

 さらには、筆順や縦書きと横書きについても、詳しくお話ししました。

 午前中の後半は、天理大学にある国冬本「鈴虫」巻に書かれている539文字にも及ぶ長大な異文の存在とその意味を、私説を交えながら話しました。特に、二千円札に印刷された、国宝『源氏物語絵巻』「鈴虫」巻の絵巻詞書に関することに力点を置きました。このことは、拙著『源氏物語の異本を読む』(臨川書店、平成13年)の当該部分の印刷を配布して流し読みし、そのあとは本書をご覧ください、としました。

 また、『古典籍研究ガイダンス』(国文学研究資料館編、笠間書院、平成24年6月)に執筆した拙文「書写により変異する本文」を印刷したものも配布して、活字の校訂本ではなくて写本を読みませんか、という問いかけをしました。

 午前中は、ハーバード本「須磨」巻の巻頭部分は2行だけ読みました。字母を確認しながら、丁寧に見ていきました。

 お昼を挟んで、午後は「須磨」巻の本文を読むことに専念しました。もちろん、寄り道をしながらですが。

 午前中に丁寧に字母のことをお話したので、皆さんの目は平仮名の背後に字母が浮かんでいたことでしょう。そうであったことを望みます。
 平仮名を通して字母の漢字が見え出したら、もう病みつきです、と何度も言ったので、視線が真剣でした。

 写本に書かれている文字の問題点をいくつか提示したこともあり、さまざまな意見が聴講者から出たのが、おもしろい講義となった原因のように思います。特に、1行目行末に「波新堂奈幾」とあり、3行目行末にも「八志多那支」とあることには、6人もの方から自由な意見が出ました。これは、今後とも真剣に考えてみる価値のある課題となりました。

 帰りに事務所で今日の報告をした後、茗荷谷駅から地下鉄丸の内線で東京駅に出て、ホームに停まっていた新幹線に飛び乗りました。

 帰洛の新幹線の中では、心地よい疲労感に身を委ねながら、この文をiPhone に入力しました。
 iPhone6Plusにしてからは、画面が大きくなったこともあり、楽に文字が入力できるようになりました。ただし、日本語に変換する精度とスピードは、これまでの iPhone 5の方がよかったように思います。

 明日の朝食を、いつものように京都駅前のヨドバシカメラの地下にあるスーパーマーケットで買いました。ここのクジラの「オバイケ」は、毎週末の楽しみです。小さい頃から、母がよく買ってきてくれたものです。
 子どもたちに大和平群にいた頃によく飲ませた「よつ葉の牛乳」も、帰洛時に買う定番です。

 バスを待つ間に、京都タワーの横に出ていた満月と、七色の水芸ショーをカメラに収めました。


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 そして、最近バス停の表示が見やすくなったので、それもついでに。
 ちょうど、帰りのバスが来たところでした。


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 観光客を迎える京都の対策も、次第によくなってきています。呼び込まなくても来てもらえる街から、心地よく移動できる街へと、確実に変化しています。新しいことを貪欲に取り込む、進取の気性に富むが傾向が鮮明な街なので、これからもどんどん変わって行くことでしょう。京都の街の時間は、常に動いています。街の作りは同じでも、お店がよく変わります。不思議な街です。

 明日は午後から、所を変えて京都御所の南にあるワックジャパンで、ハーバード大学本『源氏物語』「蜻蛉」巻を読む勉強会があります。これは、『源氏物語』にゆかりの和菓子をいただきながら勉強する会で、楽しい時間となっています。

 一日中立ちっぱなしだったせいか、首筋と後頭部が強張って来出しました。
 早めに休みます。
posted by genjiito at 23:58| Comment(0) | ◎源氏物語