2014年10月04日

京都で「蜻蛉」を読んだ(第14回)後に流通前の古典籍を見る

 京都で『源氏物語』の古写本を読む会は、いつものワックジャパンで開催しました。

 今日の娘からの差し入れのお茶菓子は、奈良・菊屋の「御城乃口餅」でした。


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 これは、豊臣秀吉が名付けた「鶯餅」が、お城の入り口で売っていたことから通称が付いたものです。子守唄にも歌い継がれた、奈良の名物茶菓です。

 また、お店の名前はわかりませんが、月にウサギの和菓子もいただきました。


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 さて、今日はハーバード大学本「蜻蛉」巻に書かれている文字の字母が何回出てくるかを調べた結果から始まりました。次の資料をご覧ください。


漢字かな=26,114字
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・止=1,330
・之=1,281
・奈=1,058
・乃=837 可=813
・幾=792 毛=791 天=789 利=757 以=747 多=734
・八=693 己=664 留=653 尓=650
・良=546 久=502
・於=494 左=492 川=482 宇=461 加=444 部=435 礼=433
・比=373 万=370 三=356 給=345 无=341 也=330
・安=296 者=272 世=259 末=255 遠=252 曽=242 寸=238 人=234 計=230 知=226 与=224 女=219 不=219 个=212
・御=196 越=191 仁=189 心=181 保=169 衣=129 踊=129 奴=127 由=124 呂=120 本=117 春=113 阿=103
・武=90 思=81 里=81 美=75 侍=71 能=69 祢=66 和=66 太=60 波=55 二=54 王=50 事=47 須=44 免=43 宮=42 身=33 所=31 江=29 大=29 日=28 殿=28 志=28 母=27 中=26 満=26 古=26 登=25 恵=24 将=21 我=21 累=21 物=18 又=18 為=17 堂=15 飛=15 右=14 井=13 地=13 文=13 君=12 遣=12


 現在「か」として使っているものについては、その字母が「可」とするものは813例、「加」が444例です。今我々が「か」として使っている字母の「加」よりも、変体仮名とされている「可」が2倍も多く出現しています。
 「た」の場合は、「多」を字母とするものが743例、今平仮名の字母である「太」はたったの60例です。これは12倍もの差があり、「多」が圧倒的に多く使われていることがわかる例です。

 ハーバード大学本「蜻蛉」は、鎌倉時代中期に書写されたものだと考えられます。とすると、今の平仮名が明治33年に一つに決められた時の、統一化の基準が知りたくなります。

 また、「勢(せ)」、「寿(す)」、「起(き)」など、一例も出ない字母も確認できました。
 今後は、「須磨」についても調査をして、また報告しましょう。

 今日は、この平仮名の字母のことから、平仮名を覚え始める幼児の教育や、今後の平仮名や漢字の行方などを、自由に語りあいました。
 コンピュータやスマートフォンなどで文字を打つ時代となり、手書きからますます遠ざかっていきます。すると、縦書きが今後どうなるのかとか、さらには筆順はどう教えるのか、ということにまで話は発展しました。

 参加者の中に、障害児の教育に携わっておられる先生がいらっしゃるので、この件については具体的な実態も伺えました。
 20歳代から60歳代までの幅広い年齢層の者が、自分の受けた教育や今の周辺環境を含めて語るので、まさに異論百出です。そして、議論のための議論ではなくなっていきました。

 そんなこんなの知的興奮に包まれた時間があっという間に過ぎてしまい、結局は「蜻蛉」の物語の確認や、写本を読むことがまったくできませんでした。すべて次回に、ということになりました。

 次回は、11月8日(土)の午後1時から、場所はワックジャパンです。

 いつもなら、少し休憩を置いて『十帖源氏』を読むことになります。しかし、今日はみんなで学びの場を外に移し、古典籍を取り扱うところへ行き、源氏物語屏風絵や源氏絵巻詞書などを実際に見ることにしました。
 みなさん、屏風や軸物になった物語絵や古筆などを初めてご覧になったので、ことのほか印象深く記憶に刻み込まれたようです。生きた日本の古典文化に触れていただくことができました。

 みんなで出かけて行った場所や、今日見た古典籍については、ここに書くことができません。しかし、まさに室町時代から江戸時代にかけて再生された、日本の古典作品を自分の目で間近に見ることができたことは、参加者のみなさんの貴重な体験となったはずです。

 今回、みんなで見せていただいた作品が、しかるべき所に収まって展示された時に、実はあれをこの前見ることができたのです、と言えるのだろうと思います。今しばらくは、今日の参加者各自の記憶の中に留め、それがさらに大きく育っていくことを楽しみにしたいと思います。
posted by genjiito at 23:19| Comment(0) | ◎源氏物語