2014年06月06日

伊藤科研の第3回研究会でスペイン語訳『源氏物語』の共同討議

 大雨の中を13人の参加者が国文学研究資料館に集まりました。
 第3回となる研究会で、今日はスペイン語訳『源氏物語』の「桐壺」巻を扱いました。外国語訳を日本語に訳し戻して比較する、という手法は、本邦初の試みのはずです。


140607_meeting1




 対照資料は、淺川槙子さんの労作です。これを手元に置いて、資料の説明を受けながら翻訳の検討をしました。お一人の方にすべてのスペイン語訳『源氏物語』を日本語に訳し戻していただいたものなので、質の高い資料にしあがっています。


140607_meeting2




 とにかく、これまでに誰もやっていなかった、日本語への訳し戻しによる検討会です。日本語訳も、信頼できる完成度の高いものだけあって、訳の確認をしているうちに、さまざまな問題点や手掛かりが得られました。これは今後の、興味深い研究につながりそうです。

 今回は、6種類のスペイン語訳『源氏物語』の「桐壺」巻を、日本語に訳し戻したものを資料としています。
 スペイン語に翻訳された文章を対照するのに用いたのは、次の原文と翻訳本です。


*原文(池田本校訂本文・伊藤作成)
*底本の一つ(日本古典文学全集・原文)
*底本の一つ(日本古典文学全集・現代語訳)
○英訳の訳し戻し(アーサーウェイリー訳 → 佐復秀樹訳)
●スペイン語訳し戻し(1)・Gutierrez訳 アーサーウェイリー訳が底本
●スペイン語訳し戻し(2)・Roca-Ferrer訳 底本は不明
●スペイン語訳し戻し(3)・Jordi Fibla 訳 タイラー訳が底本
●スペイン語訳し(4)・下野&ピント訳、ペルー版
●スペイン語訳し戻し(5)(母語話者)・下野&ピント訳、ペルー版
●スペイン語訳し戻し(6)(アリエル訳・底本は陣野作成)


 それぞれを読み比べると、多くのおもしろいことがわかりました。そのいくつかを列記しておきます。

(1)人物(官職・位階・立場)に関する語は、あまり原文から離れる翻訳はない。
(2)「坊」などの建物を意味する語を、人を指し示す意味として認定していない。
(3)「雲居」を宮中ではなく雲としてとらえている場合などは文脈から判断すべき。
(4)「袿」をチュニックとするなど、衣服に関する訳はおもしろい。
(5)「虫の音」を、「羽ばたき」「やかましい音」「コロロギ」「甲高い声」等々多彩。
(6)時刻を表す「丑・申」がそのままになっているのは、東洋文化を尊重したエキゾティズムと関連する。

 いずれも、日本の文化がどのようにスペイン語に移し換えられているか、ということをうかがわせてくれるものです。自由に想像を羽ばたかせて意見を出しあいました。

 スペイン語訳『源氏物語』は、まだもう一つあります。これを訳し終えてから、あらためてみんなで検討したいと思います。

 次回は8月です。具体的には、決まり次第に報告します。
posted by genjiito at 23:58| Comment(0) | ◎源氏物語