2012年07月18日

井上靖卒読(139)「山の少女」「爆竹」「再会」

■「山の少女」
 野性の少年と少女に興味を抱く作者は、そのことを詩の題材になる対象と見ています。井上靖の関心のありかがわかるところです。
 山に住む野性の少女が小説を書きました。信じがたいことです。しかし、直接本人に会っていると、それが嘘ではなさそうに思われるのです。なすことすべてが半信半疑のうちに、この話は終わります。
 何となく珍しい話を書いた、という中途半端な作品に留まっています。少女が住む世界に興味を持たされました。ただし、特にドラマ性も事件もないままなので、まとまりがありません。【2】
 
 
初出誌:改造
初出号数:1952年11月号
 
集英社文庫:三ノ宮炎上
井上靖小説全集13:氷壁
井上靖全集3:短篇3
 
 
 
■「爆竹」
 青春時代にあった一つの恋愛事件と言えるものが語られます。3ヶ月ほど同棲した女が病気で亡くなりました。和歌山県の潮の岬で一緒に死のうと言った、その日のことでした。その潮の岬へ行ってみることにしました。現地へ行ってみると、抱いていた暗いイメージが払拭されます。明るい岩場で、気象観測所のお祝いの爆竹を聞きながら、明るい気持ちで女のことを思い出します。
 学生時代の思い出から、人間の愛情の温もりを紡ぎ出した作品となっています。【3】
 
 
初出誌:労働文化
初出号数:1952年10月号
 
井上靖小説全集10:伊那の白梅・大洗の月
井上靖全集3:短篇3
 
 
 
■「再会」
 前作「爆竹」と同じく、学生時代に3ヶ月ほど同棲した女との話です。ただし、設定は大きく異なります。
 主人公は、女の勘違いから出世したと思われています。女も、幸せそうです。しかし、実はお互いがそうではないということが明かされます。舞台は京都の三千院です。
 この種の話は、井上靖が好きなパターンとなっています。小品ながら印象に残る作品です。【3】
 
 
初出:未詳
初出年:1952年11月(推定)
 
井上靖小説全集1:猟銃・闘牛
井上靖全集3:短篇3
 
 
 
〔参照書誌データ〕
 井上靖作品館
 http://www2.plala.or.jp/baribarikaniza/inoue/
posted by genjiito at 23:05| Comment(0) | □井上卒読