2012年07月11日

井上靖卒読(137)「海浜の女王」「美也と六人の恋人」「断崖」

■「海浜の女王」
 鎌倉の海岸で見つけた一人の女性。それは、意外な面を持っていました。『井上靖全集』で一頁ほどの掌編ながら、ほんの一瞬を巧みに切り取った作品となっています。【2】
 
 
初出:不明
初出年:1952年9月(?)
 
井上靖全集3:短篇3
 
 
 
■「美也と六人の恋人」
 小津は思案の末、かつての恋人である真門美也の夫の還暦祝いの晩餐会に出席するため、京都の東山にある邸宅に行きます。そこで、秘密の駆け引きが展開するのです。主人公は下鴨に住んでいたとか。美也をめぐる男たちの話がさまざまに拡がります。しかし、話にはまとりまを感じませんでした。【1】
 
 
初出誌:別冊文藝春秋
初出号数:1952年10月30号
 
中公文庫:暗い平原
井上靖小説全集10:伊那の白梅・大洗の月
井上靖全集3:短篇3



■「断崖」
 死者へ語り掛ける井上靖の手法でできています。読んではもらえない手紙です。しかし、茨木紅子は淡々と綴ります。数日にわたって記された手紙は、出すあてのないものです。しかし、それ故に、読む者に伝わってくるものがあります。
 紅子は19歳の時に、北陸のミッションスクールで先生に告白します。卒業後、出征する先生に逢うため、能登の実家から見送りに出かけます。愛する人に対して、静かな中から大胆な行動に出ます。数回にわたってつづられる亡き人への語り口には、愛情が溢れています。一緒に断崖から死ねなかったことを心にずっと秘めていればこその、真摯な想いが流れる手紙です。
 紅子をめぐる4人の男たちは、それぞれに紅子を彩る存在です。男たちの思いやりが、心地よく伝わってきます。わがままな女を通して、男の優しさが描かれています。人の心の温もりと時間が、ゆったりと流れています。【5】
 
 
初出誌:サンデー毎日
初出号数:1952年10月中秋特別号
 
文春文庫:断崖
井上靖小説全集10:伊那の白梅・大洗の月
井上靖全集3:短篇3
 
 
 
〔参照書誌データ〕
 井上靖作品館
 http://www2.plala.or.jp/baribarikaniza/inoue/
posted by genjiito at 22:28| Comment(0) | □井上卒読