2012年04月25日

古写本『源氏物語』に関する新聞報道

 浅岡先生から教えていただいた、昭和初期の「読売新聞」に掲載されていた貴重な情報の第3弾です。
 
(1)読売新聞(昭和6年(1931)5月6日、朝刊4面)

・「国宝級の古書を掘出す 寂恵本「古今集」と八千円の「源氏」」
・「藤原定家自筆本に最も近い古写本としては、現在前田侯爵家に秘蔵されてゐる青表紙本『源氏』二帖が知られてゐるだけである時は昨年秋大阪に開かれた関東西聯合の古本大市に、形は四寸平方の真四角な古写本『源氏』五十二帖(二帖欠本)が、誰の注目もひかずに、歴々の古本商五六十名の目の前に出陳されたのだが、その最高入札が十五円なにがしと云ふので、荷主は遂に売り離さなかつた。一誠堂はこの市にも勿論出席してゐたが、買はずに帰京したのである。それが、つい此程同店の手に入り相変らず冷遇されてゐたのを、偶然、現代唯一の『源氏』蒐集家帝大教授池田亀鑑氏が発見し─同教授は古写本『源氏』を七百種約一万冊を蒐集してゐる『源氏』通であるから─忽ち、それが前田侯爵家の青表紙秘蔵本と対置すべき、稀有の秘籍であると目星をつけ、冷遇されてゐたままの値で買い取つたさうであるが事実、侯爵家秘蔵本の残部五十二帖らしいので、それだと市価八千円の国宝級の稀書である。それが僅か二時間足らずしか一誠堂の店に鎮座ましまさず、とても安く売られて行つたので、この景気に八千円とり逃がし口惜しがること/\。」

 
(2)読売新聞(昭和7年(1932)11月19日、朝刊4面)

・「『源氏物語』大展覧会 今明両日帝大大講堂に開催」
・「現代の源氏研究は、先ず可能の限りに於て根本資料を博く蒐集し、これを精査し、分類し、系統立て、その厳密な批判の上に立つ新研究が樹立されなければならない。已に万葉集には、佐佐木信綱博士をはじめとする諸学者の努力によつて『校本万葉集』の大事業が完成し、万葉学の基礎が確立して。しかるに源氏物語に於ては、まだ諸本の性質や系統はおろか、研究書の種類や性質さへも十分に明かにされてゐない状態である。これはあらゆる意味に於て、犠牲的な努力と忍耐とで、押し進めて行かなければならない大事業であって、何人においそれと引き受けられないからである。
 東京帝国大学の国文学研究室では、校本源氏物語と諸註集成との大事業を企図し、文学士池田亀鑑氏にその忍耐託した。池田氏は七カ年の間、渾身の力をこの一事に集中し、ほとんど一身一家を犠牲として研究を進め、古書の博捜、探訪、書写、校合に努め、収集する所の資料は数千点に及んだ。これ等の中には天下の秘本と称せられて、今までわづか二三部しか知られなかった河内本(鎌倉時代に源光行、親行等の校訂した本)が、四十部近くも発見されて、書写し校合されてゐる。なほ青表紙本(藤原定家の書写した本)の系統の秘本も甚だ多く、学問上幾多の新事実が、これ等の新資料によつて明かにされる。
 本日東大大講堂で開かれる「源氏物語に関する展覧会」には、これ等の資料の一部が陳列される。第一部諸本、第二部諸註、第三部一般研究書、第四部源氏物語の影響に関する資料の四部に分れ、七百点一万冊に及び源氏研究として必要な資料はほとんど網羅されてゐる。恐らくこれほど組織的な巻尾した展観は今後困難であらうと思はれる。殊に今回の展覧会は骨董趣味を主とせず、学問上の体系を主としたもので、学者の参考となるものが少くないと思はれる。」
・【写真】珍本河内本源氏物語 古写本「須磨の巻」
 (伊藤注・手元の資料と照合すると、これは平瀬本です)

 
 
 

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(3)読売新聞(昭和8年(1933)4月15日、朝刊7面)

・「源氏物語 最古の写本発見 五十四帖揃ふ河内本の珍書」
・「昨年暮豊島区目白町四丁目の徳川善親侯邸内に創立された黎明会ではそきごろ来数万冊に上る蔵書の整理中最近図らずも源氏物語五十四帖の写本を発見したので早速池田亀鑑氏など源氏物語研究家の鑑定を仰いだところ間違ひのない本物であることが判つた、善親侯は大喜びでこの写本を文庫に所蔵し自身鍵を保管してゐるといふほどの大切さ、こんどこれを印刷して一般に頒布することになり十五日午後二時から三時まで写本の一部を同邸内で公開することになつた
 源氏物語には昔から青表紙本、河内本などゝ非常に内容のちがつた写本が伝はつてをり現在一般的になつてゐるものは青表紙本であるが、こんど徳川家から発見されたものは河内本で河内守光行、親行の親子が書写したものを鎌倉時代に北条実時が写して金沢文庫に収め更にそれが足利時代に徳川家の所蔵となつたものらしい河内本の写本は大阪の平瀬家及び東山御文庫などにも所蔵されてゐるが徳川家のものはこれよりも古く六百七十年前のもので源氏の写本中一番古く形は大きく大和綴になつてゐる、この写本を閲覧した佐佐木信綱博士は激賞して語る
『五十四帖全部揃つてゐるものとしてはたしかに一番古いものでせう。非常に貴重なものです侯爵がこんどこれを印刷してコツピーを作るといふことは学会のために大変喜ばしいことです』」

 
(4)読売新聞(昭和13年(1938)10月20日、夕刊2面)

・「”源氏物語”の大レコード化」
・「山田五十鈴を起用して 空前・五十四枚盤に」
・「嘗てその劇化が坂東簑助により計画されて果さなかつたが、こんどのこの台本は、内務当局の諒解を得て、舟橋聖一氏が健全なものにアレンヂした、台本はすべて現代語に書き替へ、原文にある歌は、そのまゝ生かして歌謡曲風に作曲され」
・「谷崎潤一郎氏の現代訳千四百枚の『源氏物語』の出版と相呼応して五十四枚の連続レコードは、レコード界空前の壮挙となりさうである」
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ◎源氏物語