2011年08月30日

在英国・源氏画帖(続15)「椎本」

 ケンブリッジ大学のコーツ教授がお持ちの源氏絵(粉本)の解説を続けます。
 昨日の「橋姫」巻に続く第46巻「椎本」です。
 
 
<椎本(本文)>
 
 
 
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■左端に「四十六」とあります。「椎本」は第46巻にあたります。
■用紙が下から5分の2の所で継がれています。
■用紙の右端に継ぎ跡が残っています。
■詞章は、『新編日本古典文学全集』(小学館)第5巻の204頁に該当します。
■下部3箇所の虫食い跡を調べると、現状の台紙に貼られる以前の、冊子形態のときと巻子形態のときのありようがわかるはずです。このことは、原本を確認したときに報告しましょう。今は、冊子と巻子の両方の状態で伝えられてきたものであることの確認に留めておきます。
 
 
   しゐかもと
此ころの事とて薪このみひろひてまいる
山人ともありあさりのむろよりすみなと
やうのものたてまつるとてとし比にならひ
侍にける宮つかへのいまとてたえ侍らんか心
ほそさになんときこえたりかならす
冬こもる山風ふせきつへきわたきぬなとつかはし
しをおほしいてゝやり給
(『源氏物語別本集成12巻』463063〜463093)
 
 
<橋姫(粉本)>
 
 
 
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■他の巻にあった巻名及び巻順のメモが、この「椎本」にはありません。
■用紙が上から3分の1の所で継がれています。
■左端に綴じ穴の跡が4カ所認められます。
■絵に描かれている場面は、八の宮亡き後の山荘にいる姫君たちの元に、阿闍梨から例年のこととして炭が届けられたところです。これに対するお礼として、例年の通り綿入れの着物を、女房が使いの者に手渡しています。炭などを届けた使いの者と山人の風貌に、狩野派らしい漢画の影響が顕著に伺えます。屋内には、大君と中の君がいます。
■この場面を絵画化した源氏絵は、この他にも多くあります。
■本図は、宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の源氏屏風とほぼ同じ図様となっています。
 源氏屏風の当該巻の一部分を引きます(『皇室の至宝2 御物 絵画U』協力︰宮内庁、監修︰徳川義寛・井上靖、毎日新聞社、平成3年5月、図版2左隻5扇2段目)。

 
 
 
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 参考までに、姫君2人と女房の部分を拡大してみましょう。
 最初にコーツ源氏絵を、次に三の丸尚蔵館の源氏屏風です。
 
 
 
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 人物の位置と表情に留まらず景物の描かれ方に至るまで、非常によく似ていることが確認できると思います。
 コーツ源氏絵の方が、いくぶん女性の顔がふっくらとしており、豊かな線で描かれているといえるでしょうか。
posted by genjiito at 23:44| Comment(0) | ◎源氏物語