2011年08月29日

在英国・源氏画帖の情報(続14)

 ケンブリッジ大学のコーツ教授がお持ちの源氏絵(粉本)の紹介を続けます。
 「竹河」巻に続く第45巻「橋姫」です。
 
 
<橋姫(本文)>
 
 
 
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■左端に「四十五」とあります。「橋姫」は第45巻にあたります。
■用紙が上から4分の1の所で継がれています。
■用紙の右端に継ぎ跡が残っています。そのすぐ横の継ぎ目すれすれの所に、綴じ穴の跡が2ヶ所認められます。
■詞章は、『新編日本古典文学全集』(小学館)第5巻の139頁に該当します。
■最近の説では、「橋姫」のこの場面で琵琶の前にいるのが中の君とされています。そのため、この詞書き全文は中の君のことを語るところとなります。
■ひらがなの表記で、字母である漢字が崩れる前の形で書かれている例が散見します。たとえば、1行目は次のような表記になっています。
「宇知なる人飛とり盤者しらに寿古し」
■「都(つ)」「難(な)」「東(と)」など、文字使いに古い雰囲気を出そうとしているようです。
■左端中央に墨汚れがあります。源氏絵制作現場で用いられていた痕跡と思われます。
 
 
   はし姫
うちなる人ひとりははしらにすこし
居かくれて琵琶を前にをきては
ちをてまさくりにしつゝ居たる
にくもかくれたりつる月のにはかに
いとあかくさしいてたれはあふきな
らてこれしてもつきは招きつへかり
けりとてさしのそきたるかほいみしく
らうたけににほひやかなるへし
(『源氏物語別本集成11巻』451929〜451957)
 
 
<橋姫(粉本)>
 
 
 
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■右上端に「はしひめ」と巻名が墨書きされています。
 前巻「竹河」でも指摘したことですが、コーツ源氏絵の粉本でこの位置に巻名が記されているのは次の6枚です。
 書かれている文字は、本文の手とは異なる人によるものです。
 〈43〉紅梅 〈44〉竹河 〈45〉はしひめ 〈47〉あけまき 〈48〉さわらひ 〈50〉あつまや
 なぜこれらの巻だけなのか、今は不明としておきます。
■巻名のすぐ下に、「四十五」とあります。「橋姫」は第45巻にあたります。
■用紙が下から5分の2の所で継がれています。
■左端に綴じ穴の跡が3カ所認められます。
■絵の場面は、宇治にある八の宮の山荘です。月光の下で薫が姫君たちを覗き見するところで、よく源氏絵に描かれています。
 姉妹と楽器の関係について、旧説では大君の前に琵琶が、中の君の前に箏としてきました。しかし、最近では、琵琶の前には中の君、箏の前には大君とされています。そのため、上掲の詞書きの部分は、中の君のことを語る場面の引用ということになります。
■この場面を絵画化した源氏絵は、この他にもたくさんあります。徳川美術館蔵の国宝源氏物語絵巻がもっとも有名です。動絵巻には詞書きもあります。
■なお、前回、コーツ先生ご所蔵の源氏画帖と宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の源氏屏風の近似性について、その可能性の高いことを指摘しました。しかし、本「橋姫」巻については、まったく異なる図様の絵です。江戸狩野の源氏絵といっても、いろいろとあったので、三の丸尚蔵館の屏風絵とすべてが一致するものではないことが、この例からわかります。
posted by genjiito at 22:59| Comment(0) | ◎源氏物語