2011年08月05日

在英国・源氏画帖の情報(続13)

 ケンブリッジ大学のコーツ教授がお持ちの源氏絵(粉本)の紹介を続けます。
 過日の「紅梅」巻に続く第44巻「竹河」です。
 
 
<竹河(本文)>
 
 
 
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■左端に「四十四」とあります。「竹河」は第44巻にあたります。
■用紙が下から3分の1の所で継がれています。
■用紙の右端に継ぎ跡が残っています。そのすぐ横に綴じ穴の跡が4ヶ所認められます。
■詞章は、『新編日本古典文学全集』(小学館)第5巻の80頁に該当します。
■巻名が右上に小さくひらがなで書かれています。本文と同筆と思われます。
 このように、行頭に付けるようにして巻名を小さく書く例は、この画帖の中ではこの1枚だけです。
 丁寧には書かれていないので、後に急いで書き足した箇所のようです。
■6行目に「枝」の代わりに「朶」という漢字を用いています。また、後ろから2行目の中ほどで、「ち」の字母が「遅」という変体仮名を選んでいます。この詞章の筆者が、文字表記に特別の思いを込めていることがわかります。
■ここに引かれた物語本文は、240字もの長いものです。しかし、諸本と較べて特に特徴的な本文ではないので、この詞章を作成するにあたって用いられた写本を特定することはできません。江戸時代に流布した、ごく一般的な本文ということです。
 
 

たけかは
 さくらゆへかせに心のさはくかなおもひ
くまなき花とみる/\おほむかたのさいしや
うのきみ
 さくとみてかつはちりぬるはなゝれはまくるを
ふかきうらみともせすときこえたすくれは右の姫君
 風にちる事はよのつね朶なからうつろふ花を
たゝにしもみしこの御かたのたいふのきみ
 心ありていけのみきはにおつるはなあはと成ても
わかゝたによれかちかたのわらはへおりて花のしたに
ありきてちりたるをいとおほくひろひてもて
まいれり
 おほそらの風にちれとんさくらはな
   をのかものとそかきつめてみる

 
 


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■右上端に「竹川(河?)」と巻名が墨書きされています。
 粉本のこの位地に巻名が記されているのは次の6枚です。
 〈43〉紅梅 〈44〉竹河 〈45〉はしひめ 〈47〉あけまき 〈48〉さわらひ 〈50〉あつまや
 なぜこれらの巻だけなのか、今は不明としておきます。
■巻名のすぐ下に、「四十四」とあります。「竹河」は第44巻にあたります。
■用紙の上から5分の2の所で継がれています。
■左端に綴じ穴の跡が4カ所認められます。
■絵は、蔵人少将が、大君と中の君の囲碁を覗き見した場面です。やがて、宰相の中将と大輔の君も加わって、歌の掛け合いとなります。その後、勝った中の君側の女童が、庭に下りて散る桜の花びらを集め、歌を詠みます。桜が盛りと咲く玉鬘邸における、春の時間の流れを1枚の絵にまとめています。
■この場面を絵画化した源氏絵は、この他にもたくさんあります。徳川美術館蔵の国宝源氏物語絵巻がもっとも有名です。部屋に置かれた碁盤と、庭の桜がポイントとなる絵です。
posted by genjiito at 22:25| Comment(0) | ◎源氏物語