2010年12月02日

読書雑記(23)高田郁『想い雲 みをつくし料理帖』

 本作は、「時代小説文庫」として角川春樹事務所から2010年3月に刊行された、『みをつくし料理帖』シリーズの書き下ろし第3作品です。

 筆致はますます快調です。
 
 
 
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■「豊年星―『う』尽くし」
 人を信じるということが問われています。
 ドラマチックな展開を見せる後半を、瞬きもせずに読みました。
 どうやら、信じ続けることが、まだ意味を持っているような書きぶりです。人間の情をうまく捉まえた話になっています。【4】

 

■「想い雲―ふっくら鱧の葛叩き」
 小気味よく、リズミカルに話が展開します。食べ物を介して、楽しく読み進められます。ますます、文章に季節感が出てきました。眼を風物に転ずるタイミングも絶妙です。
 鱧の話は、大変参考になりました。鱧が大好きな私は、東京で見かけることがないので、今夏も京都でよく食べました。
 幼馴染みの野江と出会う場面は、まさに映像美というものをコトバで見せてくれます。読者に、希望を与える話で終わります。【4】
 

■「花一輪―ふわり菊花雪」
 噂と濡れ衣で語られるこの章は、読んでいてあまり楽しくありませんでした。手法としてはいいと思います。しかし、これまでの明るさを楽しんでいたので、出来ることなら避けてほしい話題でした。話に、意外性を求めるようになっているのは、シリーズ化のための変化として認めざるをえないと思いますが……
 月をうまく使っています。季節感が伝わってきます。その半面、作者お得意の人の情が伝わりにくくなったようにも感じました。【2】

 
■「初雁―こんがり焼き柿」
 弟の健坊を探し求めるふきが活写されています。そして、それを取り巻く澪たちも、情け深い動きをします。人の気持ちがよく表現されています。
 人が生きる厳しさも、健坊を通して語られます。情に流されてはいけないことを。この健坊をもとの家に戻したことは、この話の一番できているところでしょう。
 作者は、人間をよく見ています。確かな眼が、背景にあることを感じます。【4】
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | ■読書雑記