2010年11月06日

天理図書館にある古写本の目録が完成

 開館80周年を迎えた天理図書館には、貴重な古典籍がたくさんあります。そして、そのほとんどが閲覧できます。
 一般の方でも、手続きをすれば見られるのです。
 高校の教員をしていたとき、もう30年以上も前のことですが、貴重書となっていた『源氏物語』の写本を見せていただきました。以来、何度も通っては古写本を拝見し、メモを取り、複写などのサービスを受けてきました。

 そして、所蔵されている本の素性を知る時に参考になるのが、蔵書目録(『稀書目録』)です。

 このたび、天理図書館に所蔵されていて目録に掲載されていない本が10年もの長い時間をかけて整理され、日本の古典籍の中でも写本1277点を中心とした貴重書目録が完成したのです。『天理図書館 稀書目録 和漢書之部 第五』(天理大学附属天理図書館編、天理大学出版部、平成22年10月18日発行)がそれです。
 
 
 
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 大学図書館や主要な図書館のレファレンスコーナーに配架されています。ぜひ、手にしてみてください。こんなにたくさんの写本を、日本人は写し伝えてきたのです。日本の文化の重みと言えるものです。
 哲学、歴史、社会科学、芸術、文学など、幅広い分野の書籍が整理されています。私は、文学の項目しか見ることがありません。それも、日本文学の平安時代物語に限定されます。
 今回の『稀書目録 第五』で『源氏物語』に関しては、「源氏物語竹河巻」「河海抄」「源語秘訣」「山下水」「源氏小鏡」「源氏無外題」「源氏之系図」が取り上げられています。

 『天理図書館 稀書目録 和漢書之部』は、開館10年目の昭和15年に〈第1〉が、21年目の昭和15年に〈第2〉が、30年目の昭和35年に〈第3〉が、68年目の平成元年に〈第4〉(ただし「版本之部」)が、そして今回の80年目に〈第5〉(「写本之部」)が刊行されたのです。
 天理図書館には、まだまだ貴重な古典籍があるようです。その発掘・紹介は今後の楽しみとして、私の興味と関心のある『源氏物語』に関しては、これでひとまず落ちつくことになります。もっとも、未整理の本の中に、意外な本があるのかもしれませんが……。『源氏物語』も。それも、今後の楽しみです。

 根気の要る仕事だったと思います。気の遠くなるような校正が続いていたと仄聞しています。
 作業を担当されたみなさま、特に岡嶌偉久子さん、山根陸宏さんには、ここに紹介することで労いのささやかな気持ちの一部にでもなれば、と思っています。お疲れさまでした。

 これから、日本の古典文学を調査し、研究しようと思っている若い方々には、ぜひともこうした古典籍を直接見て、触ってほしいと思います。本の紙を捲れば、当然のことながら本は傷みます。しかし、本は見られるために存在しているのです。
 慎重な保存や保護が必要な本は、写真版などになっています。当然、閲覧は制限されるでしょう。しかし、とにかく見たい本があれば、図書館に問い合わせてみればいいのです。

 活字だけで古典文学作品などを読んで終わりにするのは、大変もったいないことです。日本には、このように長い年月をかけて守り伝えられてきた本が、今でも自分の目で確認できるのです。もちろん、歴史的な資料もそうです。
 ぜひ、写本を手にして、見て、そこでそれまで読んでいた活字の校訂本文が何であったのかを、改めて考えてみませんか。研究という視点から文学を直視する上では、古写本を見ることは大変意義のあることです。

 そんなときに、所蔵機関の蔵書目録が役立ちます。
 図書館の方々も、本に関する質問を待っておられると思います。
 最低限の礼儀を弁えるのはもちろんのことですが、怯まずに思い切って所蔵先に連絡をして、古典籍を目の前に置いて、紙を捲ってみてください。
 楽しい自問自答という時間の流れの中に、しばし我が身を置くことができます。愉悦の刻を独り占めにできます。
posted by genjiito at 08:39| Comment(0) | ■古典文学