2010年10月29日

緑川真知子著『『源氏物語』英訳についての研究』の重み

 心待ちにしていた緑川真知子さんの著書が刊行されました。
 『『源氏物語』英訳についての研究』(武蔵野書院、2010年9月)

 まずは、その姿形から。
 
 
 
101029_midorikawag
 
 
 

 本書の本体部分は443頁です。しかし、巻末に貴重な資料と英文論文が89頁分あるため、総頁数は532頁の大著となっています。

 カバーに小さく「翻訳された『源氏物語』の捉え方についての細密なる検証」とあります。これが示すように、まさに翻訳された英文を丹念に読み解いての、詳細な研究成果の集積です。
 内容は、2005年までの研究成果がベースになっています。
 それ以降、特に2008年が源氏千年紀だったこともあり、『源氏物語』の英訳に関する情報などが一気に吹き出した年でもありました。それらについては、今後の緑川さんのさらなる研究成果に期待しましょう。

 今は、目の前にある、ズッシリと重いこの研究成果を、これからジックリと読ませていただきます。いくつかは既に読んでいるので、さて、どの章のどれらか読み出そうかと、心弾む思いでいます。
 もちろん、読み出したら、私にはとても読み解けない英訳『源氏物語』を扱うものなので、ひたすら「そうなのか」と教えられるばかりでしょう。一言も反論できない世界というものは、これまた禁欲的な思いを強いられるだけに魅力的です。

 私は、『源氏物語』の中身がよくわからないままに、写本に記された物語本文の総整理をしています。
 また、海外で翻訳された『源氏物語』について、さまざまな言語の翻訳本を集めては整理しています。これも、自分にはわからない外国語で書かれた本を対象にしています。
 結局、自分にはわからないものを、資料として整理しているだけなので、その中身については先達にひたすら教えていただく姿勢なのです。今は、とにかく緑川さんに教えていただく、それがまた、楽しい勉強といえるものです。

 緑川さんのこの大著は、今なにかを言えるものではありません。
 巻末の資料は、私にも少し活用できるかな、とか、もっと詳細な索引を別冊で作ってほしいな、とか、そんな些末なことしかありません。
 よけいなことですが、研究発表や研究論文の執筆をお願いするなど、頼み事ばかりのお付き合いです。その研究内容について、本書をいい機会として、少しでもお話ができるようにしたいと思います。

 『源氏物語』は、さまざまなアプローチが可能です。
 緑川さんは、こうして英訳に関して大きな成果を提示してくださいました。
 私の手元には、海外の27種類の言語で翻訳された『源氏物語』の本たちが横たわっています。
 これらは、これからの若者が何とかすべき本群だと思っています。
 私は、あくまでも整理屋なので、意欲的な若手の出現を心待ちにしています。
 その時に、この緑川さんのようなアプローチの仕方が、大いに参考になることでしょう。

 本書の「第一章 文学研究における受容の研究と「受容理論」の概観」の「一 「享受」と「受容」」という節で、私の最初の研究書である『源氏物語受容論序説』(桜楓社、平成2年)における基本姿勢である、「受容」についての私見を引いてくださっています。
 これから研究をなさる方は、日本文学とその翻訳に関する問題を考える際には、この「享受」と「受容」については、ぜひとも押さえてからスタートしてもらいたいと思います。その意味でも、本書ではきちんとこのことを説明しておられるので、安心してその後が読み進められます。

 さて、「第二部 ウェイリー訳『源氏物語』の諸相」は、本書の中心となる部分だけに、しばらくは読解に時間がかかります。
 今日のところはここまでとします。
 読み進めながら、追々コメントが付けられれば、紹介しようと思います。

 とにかく、私が待ち望んでいた、大変な本が本当に刊行されました。
 頁を繰って読み進むのが、楽しくなってきます。
 緑川さんが、このような形でこれまでの成果をまとめられたことを、慶びたいと思います。

 最後に、目次をあげます(入力ミスがあればお許しを)。



第一部 『源氏物語』翻訳研究の位置付けと方法
 序
 第一章 文学研究における受容の研究と「受容理論」の概観
 第二章 翻訳研究の方法
 第三章 現代日本語訳と英訳
 結
第二部 ウェイリー訳『源氏物語』の諸相
 序 −ウェイリー翻訳研究の意義−
 第一章 ウェイリーの翻訳観と当時の評価
 第二章 ウェイリー書き入れ本『源氏物語』について
 第三章 ウェイリー訳『源氏物語』における省略について
 第四章 『源氏物語』以外のウェイリー訳における省略についての考察
 第五章 「若菜」の巻におけるウェイリーの操作について
 結
第三部 『源氏物語』翻訳の諸相
 序
 第一章 巻名と呼称の英訳
 第二章 和歌の英訳の変遷と『源氏物語』の和歌英訳について
 第三章 『源氏物語』における散文部分の翻訳の諸相
 結
結語

(巻末資料)
主要語彙・人名・書名索引
主要参考文献一覧
『源氏物語』54帖巻名英訳一覧表
ウェイリー訳「若菜」上下の省略部分一覧表
ウェイリー全書き入れ一覧表
付節 英文論文
posted by genjiito at 22:29| Comment(2) | ◎源氏物語

西国三十三所(28)播州清水寺

 西国三十三所の札所は、3分の1が山頂、3分の1が谷間、そして残る3分の1が街中や里にあるということです。
 西国25番札所の播州清水寺は、標高550メートルの山の上にあります。京都の有名な観光寺院である清水寺と区別する意味から、「播州」を頭に付けています。

 相野駅からバスで山門まで35分。バスは1日に2便しかありません。山登りをしなくていい分、このバスの時間に合わせるのが大変です。

 ちょうど丹波立杭焼きの陶器祭のため、陶器の里には、たくさんの人が訪れていました。
 
 
 
101028_kiyomizu0
 
 
 

 清水寺は、大正2年に全山が消失しました。ほとんどの堂宇が大正・昭和の再建ということもあり、きれいな境内です。
 鮮やかな朱の仁王門は、昭和55年の再建です。
 
 
 
101028_kiyomizu1
 
 
 
 この寺は、1800年前の景行天皇のときに、インド渡来の法道上人に始まります。中国、朝鮮を経て遙々と来られたのです。
 
 
 
101028_kiyomizu2
 
 
 

 この前に行った一乗寺も、法道上人さんでした。
 すでに紹介した花山院も法道上人と縁があったので、この人についてはさらに調べることにします。

 播州清水寺の御詠歌は、次の通りです。



あはれみや
あまねきかどの
しなじなに
なにをかなみの
ここにきよみづ

 
 
 
101028_kiyomizu3
posted by genjiito at 06:15| Comment(0) | ・ブラリと