2010年10月26日

与謝野晶子の自筆原稿『新新訳源氏物語』と『蜻蛉日記』の撮影

 『源氏物語』の千年紀だった2008年9月に、鞍馬寺に保管されていた与謝野晶子自筆原稿の一部となる『新新訳源氏物語』の公開を果たしました。鞍馬寺のご理解とご高配には、その後の堺市に多大な影響を与えただけに、心より敬服するところです。

「与謝野晶子の自筆原稿画像の試験公開」(2008年9月17日)

 この鞍馬寺の晶子自筆原稿の公開を受けて、堺市ご所蔵の晶子自筆の『新新訳源氏物語』の草稿も公開できることになりました。
 本年2月に、無事に鞍馬寺と並ぶ形で、国文学研究資料館から公開しました。研究資料を画像データベース化して公開する私の仕事が、これで一段落しました。

「与謝野晶子の『新新訳源氏物語』自筆原稿画像データベース公開」(2010年2月20日)

 堺市には、さらにたくさんの与謝野晶子自筆原稿が保存されていました。
 そのことは、これまでにも本ブログで何度か紹介しました。
 その後、堺市からの連絡で、『蜻蛉日記』の現代語訳の草稿と、『新新訳源氏物語』の草稿の追加分が公開できることになりました。これで、晶子自筆の平安女流文学の現代語訳原稿の多くが、ネットを通して精細画像で確認できることになったのです。
 近代文学と古典文学が、ここに融合した研究資料として提供できることになるのです。

「与謝野晶子の源氏訳自筆原稿「夕顔」等を確認」(2010年7月16日)

 個人的なことを挟んで恐縮ですが、この2010年7月16日の調査に出かける直前に、私は東京の九段坂病院からの電話で、ガンの告知を受けました。私にとっては、忘れられない日となりました。

 さて、古典文学が敬して遠ざけられる今、その研究者も衰退の一途を辿っています。そんな折だけに、晶子の古典理解を通して近代と古典の文学に目を向けてもらうことは、新しい研究分野として大いに広めたいと思っています。
 その意味からも、国文学研究資料館から公開している画像データベースを、一人でも多くの方に見ていただければ幸いです。

 今日は、『蜻蛉日記』と『新新訳源氏物語』の晶子自筆原稿の撮影に立ち会うため、堺市立文化館・与謝野晶子文芸館に行きました。

 今日と明日の2日間で撮影するのは、『源氏物語』では「桐壺」「帚木」「夕顔」「若紫」「賢木」「花散里」「真木柱」「藤のうら葉」「朝顔」の約20数枚と、『蜻蛉日記』の120数枚です。ただし、原稿用紙の両面に書かれたものもあるので、撮影カット合計数は250枚ほどになります。

 前回7月16日の調査以降、足立さんの精力的な調査により、『新新訳源氏物語』の「朝顔」が1枚あることがわかりました。また、『蜻蛉日記』は原稿用紙が2枚欠落しているだけであることもわかりました。さらには、『蜻蛉日記』の梗概を記した原稿用紙も2枚見つかっています。これは、これまでその存在が知られていなかった貴重なものです。

 早朝よりしばらく、担当の足立匡敏さんと打ち合わせと確認をしました。
 足立さんは、来月の国文学研究資料館で開催される「国際日本文学研究集会」(11月27日(土)・28日(日))で、2日目28日の14時15分より、「与謝野晶子訳『蜻蛉日記』の成立−堺市蔵・自筆原稿の考察を中心に−」と題して研究発表をなさいます。今回撮影する自筆原稿をフルに活用した研究成果の発表であるだけに、当日が楽しみです。
 このときには、英国ケンブリッジ大学の小山司書の講演と、大学院生のレベッカさんの研究発表もあります。たくさんの方のご参加を願っています。

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 撮影の合間に、与謝野晶子文芸館の展示を、足立さんと学芸員の森下さんのお話を伺いながら拝見しました。今回は、晶子の愛用品とでもいうべきものが目玉の展示となっています。
 与謝野晶子文芸館(+アルフォンス・ミュシャ館)は、堺市駅に隣接するベルマージュ堺の中にあります。天王寺から快速で8分と、思いのほか近い立地にあります。大阪にお越しの節には、ぜひ立ち寄られることをお勧めします。

 展示ケースの上からの写真なら構わないとのことだったので、写真と共に展示品の中でも私が気になったものを紹介します。
 晶子愛用の文箱(写真右、鞍馬寺蔵)は、原稿用紙がスッポリと入りそうな大きさです。
 
 
 
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 これとは別に、鞍馬寺には四脚付きの唐櫃があり、それに晶子の原稿が入っていたそうです。
 私は、この文箱は晶子専用の「遙青書屋」の銘が刷り込まれた原稿用紙が入っていたのではないか、と勝手に想像しています。

 また、上掲写真左の朱肉(鞍馬寺蔵)は、添削用の朱を筆に付ける時に使ったものではないか、と森下さんの説明でした。鞍馬寺の曾根さんもそのようにお考えだとか。少し窪んでいるので、そうなのでしょう。

 晶子といえば、堺の駿河屋の和菓子を思い浮かべる方が多いでしょう。
 その駿河屋が、1888年にバルセロナで開催された万国博覧会で受賞したメダル(写真下)も、目を引きました。
 
 
 
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 スペインからこちらに調査にお出でになった研究者の情報によれば、バルセロナ万博で出品されたのは、飴、豆製菓子、ボーロだったようです。

 晶子は、幼いときに、店番をしながら書物を読んでいたとのことです。その駿河屋の様子がわかるのが、上掲写真の上の絵図です。
 この受賞した駿河屋のお菓子は、復元されているのでしょうか。堺でのお茶席で、利休と晶子のコラボレーションがあれば、ぜひ参加したいものです。

 なお、晶子の『みだれ髪』の第2版本が、まだ見つかっていないそうです。初版本(写真右端)と第3版本はあるのに、悩ましいことです。
 
 
 
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 もし第2版本をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ご一報をお願いします。明治35年か36年の刊行かと思われます。

 晶子について雑談しているときに、晶子の作品は海外ではどれくらい翻訳されているのか、気になり出しました。『源氏物語』の場合、調べてみると予想外に多くて驚いています。
 この晶子の作品についても、世界各国で翻訳されていることでしょう。これについても、海外の方々からの情報をお待ちしています。
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ■古典文学

西国三十三所(25)長谷寺

 長谷寺は、西国三十三所の第8番札所です。
 
 
 
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 仁王門から続く登廊の石段は、全部で399段あります。初廊は段差を無視して歩けます。
 登りつめると、どっしりとした本堂が迎えてくれます。
 
 
 

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 この広場から初瀬川を臨むところに、『源氏物語』に関する説明板がありました。
 最近出来たもののようです。
 
 
 
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 これまで長谷寺は、あまり『源氏物語』との結びつきを強調していなかったように思います。それ以外に、長谷寺は日本の文学作品にはたくさん登場するので、『源氏物語』という名前に頼る必要がなかったのでしょう。その意味では、この説明板は1つの変化ではないか、と思っています。
 境内でここ以外には、特に『源氏物語』を想起させるものはありません。これが、歴史の重みというものなのでしょうか。

 石の上に立つ十一面観音は、後背を含めると高さが12メートルもあります。私は、このお顔の髭が、いつも気になっています。なんとなくユーモラスな感じがするのです。親しみを感じます。

 長谷寺に来て本堂の舞台に立ち、登廊から参道や長谷川にかけての長谷の町並みを眺め、そして五重塔を見ると、いつも気持ちがスッキリします。
 
 
 

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 『源氏物語』で玉鬘たちがこの長谷寺に籠もった話が、あまり実感として湧かないのはどうしてなのでしょうか。当時の長谷寺の構造が、今と大きく違うのではないかと、勝手に想像しています。

 長谷寺は帰り道もいいですね。私が好きな石段です。緩やかな曲線が気に入っています。
 
 
 
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 長谷寺の御詠歌は、次の通りです。


いくたびも
まゐるこころは
はつせでら
やまもちかひも
ふかきたにがわ

 
 
 
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 長谷寺でも、お軸は丁寧に扱ってもらえませんでした。きれいに仕上げたいと思っているので、きちんと文鎮を使って書いてほしいものです。


 帰りの参道で、『源氏物語』に関するものを2つ見つけました。

 まずは、「長谷 紫 源氏」という日本酒です。
 
 
 
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 紫の上も光源氏も、この長谷寺には詣でていません。パンフレットによると、紫式部が2度の長谷詣でをしているとか。そうでしたっけ? 思い出せません。
 それはともかく、飲んでみることにしました。製造は初瀬とありますが、三輪の酒造所のものだそうです。

 もう一つは、輿喜天満神社の玉鬘にあやかった縁結びのおみくじです。
 玉鬘は、たくさんの男君たちに言い寄られます。また、子宝にも恵まれました。九州から上ってきて、この長谷寺で幸運の人生を引き寄せたのですから、このおみくじの着想はおもしろいと思います。
 これは、もっとおもしろくできそうです。今後に期待しましょう。
 
 
 
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posted by genjiito at 07:20| Comment(0) | ・ブラリと