2010年03月08日

鎌倉期の源氏の写本を読む

鎌倉時代の末期に写されたと思われる源氏物語の古写本を調査しています。
 鎌倉の源氏の写本は少ないので、書かれた本文をひたすら翻字しています。

 今、目の前にある本は、残念ながら、第34巻「若菜上」の一巻だけの残巻です。
 表紙は、天理図書館にある池田本とソックリのうち曇りです。ただし、改装されています。
 見返しも後補です。
 
 
 
100308genji3
 
 
 
 表紙の中央上部には、剥がし跡の残った上に「わかな 上」と銀地に書かれた後補の題簽が貼られています。

 本文は、前半と末尾がありません。
 『源氏物語別本集成』の文節番号で言うと、11975文節ある内の、5256から10948までが残っています。
 折で言うと、6折あったはずの内、第1、2、6折がない状態で、ここにあります。
 
 
 
100308genji4
 
 
 
 さらに詳しく書いておくと、「若菜上」は、約49000字ほどあります。その内、23000字が、ここに残っていることになります。
 鎌倉時代の源氏の写本なので、これだけでも貴重な資料となります。

 本書の巻頭部は、こうなっています。
 
 
 
 100308genji1
 
 
 
 巻尾は、こんな感じです。
 
 
 
100308genji2
 
 
 
  この巻末の最終紙に「月明荘」の印があるので、弘文荘の反町氏の元にあったことがわかります。この印は、晩年に扱ったものと思われます。

 列帖装の糸は、新しいものです。

 書いてある内容について、少しだけ記しておきます。

 本文は、大島本、保坂本、尾州家本、国冬本と一致します。このことは、後日、詳しく報告します。

 具体例を少しだけあげます。
阿里莫本、中京大本が「藤の花の」とあり、それ以外の本が「藤の」とするところを、この本は「花の」となっています。これまでになかった文です。
 これは、私が提唱している、異文は傍記が本行に混入して発生する、と言う考えを補強してくれる例となるものです。
 阿里莫本、中京大本が「藤の花の」とあるのは、この本の親本に傍記として「藤の」か「花の」があり、それが前後に混入したと考えられるからです。
 もし、傍記されていた「藤の」が「花の」の前に入り込んだとすると、それは、私の二分別試案で言うところの<乙類>です。そうではなくて、傍記されていた「花の」が「藤の」の後ろに入り込んだとすると、それは、<甲類>と言うことになります。

 今回調べている写本に書かれている本文は、いろいろな問題を解決する上で、有効な資料となります。

 いい本と出会えたことを、喜んでいます。

 とにかく、詳細は後日ということにします。
posted by genjiito at 23:58| Comment(0) | ◎源氏物語