2009年12月08日

谷崎全集読過(3)「幇間」「飇風」

■「幇間」

 です・ます調の文体に、アレッと思いました。

 罪のない道楽人の桜井さんは、好きなことをして、いつもみんなに可愛がられる質の男でした。幇間になっても、人が喜ぶことに快感を覚えるのです。
 好きなった芸者の梅吉の言いなりに、欺された振りをした後も、何食わぬ顔で戯けてみせます。まさに、プロです。
 自分を捨てて人のために何でもする心意気が、気持ちよい程に伝わって来ます。

 人間、徹することの素晴らしさが描かれています。
 テンポのいい軽快な語り口に、つい読まされました。
 最後に、Professional という英語が出てきます。【5】

初出誌︰明治44年9月号「スバル」


■「飇風」

 始まってすぐに、「○○的にも女は常に勝ち誇つて、」と伏字がでてきます。戸惑いました。谷崎潤一郎全集に収録されているのに、何だろうと。
 注があり、そこには「○○は初出雑誌に拠る」とあります。それ以上には、説明はありません。
 一番字数の多い伏字は、○が47個も並びます。ここまでくると、穴埋め問題や虫食いを推測する次元に引きずり込まれます。それでいて、話の内容はよくわかります。かえって、読者は緊張するのです。

 こうして、何だろうと思いながら読み進むのも、結構楽しめます。厳しい検閲による発売禁止という時代背景が想像されます。しかし、それよりも、本来作者が書きたかったであろう言葉を推測するのが、この作品をおもしろく読む秘訣です。

 また、この作品でも英語が随所に出てきます。
 erotic , abuse , voluptuous , desire , dead white , illusion , attractive , shock , trick と、多彩です。

 性的青年が禁欲を己に強いる東北旅行のくだりも、楽しく読めます。1人の女のために節制した男の物語は、意外な展開が待っています。
 ただし、いかにも作り話というのが見え透いているところが、少し気になりました。【3】


初出誌︰明治44年10月号「三田文学」
posted by genjiito at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | □谷崎読過