2009年06月07日

井上靖卒読(74)『昨日と明日の間』

 白戸魁太郎と彩田萄子と弾正れい子、『戦国無頼』と同じように、3人の男女の設定でスタートします。
 彩田周平は、井上の小説ではめずらしく、いやな男として登場します。特に後半は、卑しい男として描かれています。

 航空会社を作り上げる白戸は、戦後の新しいビジネスを起こす男です。
 これは、『闘牛』の男と同じ、新しい仕事に生き甲斐を見いだした男の物語にもなっています。プランニングをやりがいとする男です。

 その中で、女は背景でストーリーを動かす要素に過ぎない存在なのが、物足りなく思われます。
 弾正れい子は、活発で行動的です。萄子と対照的な存在として、無理に作られた印象が否めません。

 最後は、みんながサーッと去っていく感じで、何か無責任な気がしました。
 女たちは、置いてきぼりです。

 それでも、おもしろくて一気に読み終えました。大きなドラマは何もないのに……。

 読まされてしまった、というべき井上流の小説です。【2】




初出誌︰週刊朝日
連載期間︰1953年5月24日号〜1954年1月17日号
連載回数︰35回


角川文庫︰昨日と明日の間
井上靖小説全集2︰黒い潮・白い牙
井上靖全集9︰長篇2


映画化情報
映画の題名︰昨日と明日の間
制作︰松竹
監督︰川島雄三
封切年月︰1954年6月
主演俳優︰鶴田浩二、淡島干景


〔参照書誌データ〕
 井上靖作品館
 http://www2.plala.or.jp/baribarikaniza/inoue/
posted by genjiito at 22:07| Comment(0) | TrackBack(0) | □井上卒読