2008年10月25日

井上靖卒読(48)「玉腕記」「三ノ宮炎上」

■「玉腕記」
 歴史を扱った、読者に想像力を掻き立てる話となっています。
 緊張感のあるしっかりとした文章に、読んでいて確かな手応えがありました。
 考古学者である桑島が、生き生きと描かれています。作者には、具体的なイメージがあってのことのように思われます。
 ただし、登場人物がストーリーの中で生き生きとは出てこないので、映像化・劇化には失敗したのではないかと、今では思っています。【3】


初出誌︰文藝春秋
初出号数︰1951年8月号

新潮文庫︰ある偽作家の生涯
旺文社文庫︰猿狐・小盤梯 他八編
講談社文芸文庫︰異域の人・幽鬼
井上靖小説全集15︰天平の甍・敦煌
井上靖全集2︰短篇2



■「三ノ宮炎上」
 オミツを中心にして、終戦前の不良少女を描いています。三ノ宮という一つの街を描いた小説で、珍しいものだと思います。
 炎上する三ノ宮が印象的です。日常とは異なる状況で、街と人々が冷静に描かれています。社会が描かれた小説とも言えます。
 時代背景を負って、そこで生き抜く女の子たちが、社会を斜に見ながらも、前向きに生きていきます。前の見えない若者と、どうなっていくのかわからない三ノ宮という街が、対照的に静かに語られています。
 おもしろい小説というのではなくて、印象的な、読者のイマジネーションを刺激する小説です。【3】



初出誌︰小説新潮
初出号数︰1951年8月号

集英社文庫︰三ノ宮炎上
潮文庫︰桜門
井上靖小説全集4︰ある偽作家の生涯・暗い平原
井上靖全集2︰短篇2



〔参照書誌データ〕
 井上靖作品館
 http://www2.plala.or.jp/baribarikaniza/inoue/
posted by genjiito at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | □井上卒読