2008年10月22日

藤田宜永通読(5)『喜の行列 悲の行列』

福袋を求めて並ぶ人たちの、年末から年始にかけての2日間の人間ドラマです。

並んでいるうちに、人間関係ができ、連帯感が生まれます。その諸相が、さまざまな角度から描かれていきます。そして、同時進行で、別のドラマが … 。
オムニバスです。
ますますエンターティンメントになった藤田宜永を見ました。

この小説は、群衆を描くことに成功しています。
福袋を求めて並ぶ人々の一人一人をクローズアップしながらも、その一人一人とつながる人間関係を追います。
たくさんの人の連環が、Aデパートを中心にして展開するのです。

終盤で作者は、絡みあった糸をほぐすように、一見バラバラのように見えながらも実はつながっている人間関係を、読者のために整理してくれます。サービスです。

偶然と必然が、綯い交ぜになって展開する物語です。小説というよりも、物語です。

最後は、藤田宜永の初期作品を思わせる、ハードボイルドタッチの描写が見られます。このところ、フニャフニャとしていた藤田宜永ですが、私はこの破天荒な活劇風の描写が好きです。
1日も早く、文学を気取らない藤田宜永にもどってほしいて思っています。

とにかく、いろいろな味が楽しめる作品です。

俺たちには分からない必然性があったと思うけどな(431頁)

というのが、この物語に通底する考え方です。

年末年始の40時間に起こった、一人の男を取り巻く人生の悲喜劇は、何でもなかったかのように幕が下ろされます。【4】
posted by genjiito at 23:39| Comment(1) | TrackBack(0) | □藤田通読