2008年06月21日

源氏の本文はおもしろい

 今日は、國學院大學の豊島秀範先生の所で、「源氏物語の本文資料に関する合同研究会」という集りがありました。

 毎度のことですが、この分野は研究が非常に遅れているために、刺激的な発表や意見交換がなされています。今日も、実りの多い会でした。
 一人でも多くの若い人たちが、この立ち後れている『源氏物語』の本文の調査や研究に係わってほしいものです。

 今日の発表内容で、私が特にいい勉強をさせてもらったのは、次の2つでした。

「大島本『源氏物語』の形容詞」 中村一夫

「『源氏物語』の官職呼称」   田坂憲二

 これは、これからの『源氏物語』の本文研究に、重要な問題提起をしていました。

 中村氏の発表では、本文を緻密に凝視しての成果が示されました。
 語彙という分野に留まらない、ことばを読解する上でのヒントが、たくさん鏤められていました。近く活字となって刊行されるようなので、是非読まれることをお勧めします。

 田坂氏の発表は、「左衛門督」という語句の異同を通して、巻をまたがっての考察に加えて、登場人物の年齢推定という興味深い問題にまで展開しました。
 語句の異同から、このように物語られる中身にまで切り込めるのですから、是非ともこれからの若手に取り組んでほしいものです。

 それにしても、まだまだ〈青表紙本〉とか〈大島本〉に対する姿勢が厳密でないことを痛感しました。〈青表紙本〉ということばで説明したことにする姿勢は、今後とも総括すべき問題です。
 この研究会のメンバーは、そうした問題点を十分に認識しているにも係わらず、つい〈青表紙本〉ということばで誤魔化してしまいます。気をつけたいことです。

 今回も感じました。こんな内容で発表ができる時代が来たのです。こんな質疑応答ができるようになったのです。私にとっては、夢のような環境に身を置くことができるようになったのです。
 30年前に『源氏物語』の本文の整理に着手し、このような討論ができる日が来るのを待ち望んでいた一人として、「意外に早く来た」という印象を持っています。
 予想外に早く『源氏物語』の本文に感心が集まるようになったのですから、後は若手がこうした問題に興味を持ち、育ってくれることを熱望しています。

 そのような場として豊島秀範先生の研究会が機能することを願い、今後とも背後からではありますが、お手伝いをしていきたいという思いを強くしました。



posted by genjiito at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | ◎源氏物語