2008年01月30日

読書雑記(6)清水義範『読み違え源氏物語』

 清水義範著『読み違え源氏物語』の帯には、


「源氏物語」を彩る各段を大胆かつ斬新に解釈

夕顔は実は生きていた−その驚くべき正体とは?




とあります。
 どんな話になっているのか、興味深く読みました。

 短編が8つ収められています。以下、順次、感じたことを認めましょう。

(1)夕顔殺人事件

 玉鬘は空蝉の子供、ということになります。仕掛け人の頭中将は、空蝉との間に玉鬘を儲けたことになるのです。後の話とうまくつながりません。ここをミステリーで解く必要が生じてきます。語り手の話をどこまで信じるか、という問題が前提になってきます。


(2)かの御方の日記

 何を意図したものかが不明です。葵上の独白を読まされただけのことです。日々書く日記のスタイルです。「後日の書きそえ」という文句で、少し工夫があるかと思いました。しかし、特に何もなく終わります。筋をなぞっただけの雑文に終わっています。何の捻りもないのが残念です。


(3)プライド

 『源氏物語』をなぞって、現代版に作り直したものです。『源氏物語』を下敷きにするところが見えすぎて、その必然性がわかりません。小説としても不出来です。無理やり作ったお話です。筋だけで、描写がない上に、心理劇になり切れない失敗作といえます。


(4)愛の魔窟

 登場人物に『源氏物語』の人名をダブらせています。それだけ、話は現代に置き換え切れず、単に『源氏物語』をなぞるだけの駄文です。読んでガッカリしました。なぜ清水氏は、何の工夫もしなかったのでしょうか。人に読ませるものには至っていません。この草稿を、もっと高めるような手を入れないといけません。


(5)ローズバッド

 1950年代のアメリカの男女という設定です。思い切った試みに期待させられます。しかし、『源氏物語』をなぞるだけ。人の肉体的なことをバカにする描写が多いので、読んでいて不愉快になりました。何のための文章なのでしょうか。捻りがないので、いやな気分のまま引きずられます。後半で、シカゴに出たジョンの話からおもしろくなりそうでした。しかし、それも尻すぼみです。素材を生かしきれない作文に留まっています。


(6)うぬぼれ老女

 老女の一人語りという設定です。内容は、『源氏物語』のエピソードをなぞるだけです。何か工夫がないと、あらすじの確認に終わるだけです。『源氏物語』から抜け出せない作者の歯ぎしりが聞こえてきます。


(7)最も愚かで幸せな后の話

 登場人物のネーミングに工夫の跡があります。ただし、ピカリッペは下品です。キリツボーシャも、フジツボーシャも、人をバカにしていないでしょうか。アラビア語の原典を持ち出すのはおもしろいと思います。もっとも、アイデア倒れで、活かされてはいませんが。アホな、思考力をもたない、フジツボーシャの設定は、『源氏物語』を軽く見過ぎた結果のようです。読解不足から発した作り話です。


(8)ムラサキ

 女性を植物にたとえて、通ってやる大切さ、世話をする大切さを比喩として語っています。しかし、それがあまりにも『源氏物語』から遠いところでの語りとなっていて、読んでいる側が疲れます。工夫が報われない出来になってしまっています。作者としては、言い訳をしたい作品のように思われます。


 以上、あまりいい評価が書けませんでした。
 この続きを、また書いてもらいたいものです。


posted by genjiito at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | ■読書雑記